プロフェッショナルツールに匹敵する編集環境を ローコストで実現
【2008年3月号掲載】
「iLife08」に含まれる「iMovie08」は、今までまったくビデオ編集を行ったことがないユーザにとっては、非常に簡単にビデオ編集を体験できる優れたツールである。しかしiMovieでは、複数の映像を合成することができない、エフェクトをかけることができないなど、機能的に不足があるのも事実。そこで、iMovieでは物足りず、Final Cut Studioでは高価すぎるというユーザに提案したいのがこの「Final Cut Express 4」だ。エントリー向けと思いきや、編集機能はFinal Cut Proにほとんど引けを取らない、極めてコストパフォーマンスの高いソフトなのだ。
スペック
[発売元] アップルジャパン [価格] 2万3,800円 [OS] Mac OS X 10.4.10以降 [メモリ] 1GB以上の実装メモリ [備考] PowerPC G4 1.25GHz以上、PowerPC G5、Intel CoreDuo/Intel Core2Duo/Intel Xeonプロセッサを搭載したMac(AVCHDの使用はIntel Macのみ)。クォーツエクストリーム対応のAGPまたはPCIエクスプレスグラフィックスカードもしくはIntel GMAグラフィックスプロセッサ。QuickTime 7.2以上 [掲載号] 「Mac Fan」2008年3月号
OVERVIEW
「Final Cut Express 4」は、プロフェッショナル向けビデオ編集ソフトの「Final Cut Pro」からプロ向けの機能を削除したビデオ編集ツールである。取り込みや書き出しができるビデオフォーマットもコンシューマー向けのフォーマットのみに限定されるが、編集機能の面では決してFinal Cut Proにひけを取らない。
(1) わかりやすく生産性の高いインターフェイス |
取り込みに関しては、従来のDVテープを使用したSDやHDVの取り込みはもちろん、新たにハードディスクやSDカードなどに記録するAVCHDフォーマットの取り込みにも対応。ソニー、松下、キヤノンなどのAVCHDビデオカメラで撮影したハイビジョン映像を変換して使用できるようになった。
また、取り込んだ素材はHD、SD、NTSC、PALといった規格の違いを気にすることなく、タイムラインに配置できるオープンフォーマット・タイムラインが搭載され、効率的で柔軟な編集を行うことが可能となった。
(3) 規格の違いも心配ご無用 |
FOCUS ON
本製品の魅力は、なんといってもそのコストパフォーマンスの高さにある。プロ向けのビデオ編集環境である「Final Cut Studio 2」もプロ向けの製品としては画期的に安いのだが、そこに含まれるビデオ編集ツールの「Final Cut Pro 6」からプロフェッショナル向けの機能を外しただけで基本性能は変わらない。そんな製品を、わずか2万3,800円で販売してしまうのだから太っ腹としかいいようがない。
(4) 多彩な表現が可能なエフェクト |
ビデオクリップのイン点とアウト点を指定してタイムライン上に配置する3ポイント編集を使用しての編集作業は、快適そのもの。トランジションやエフェクトを加えてもリアルタイムでプレビューできる。また、ビデオトラックとオーディオトラックは1プロジェクトで99本までサポートし、さらに1つのプロジェクトを他のプロジェクトのクリップとして使用できるので理論上は無制限にビデオトラックを使用できる。200種類を超える多彩なトランジションやエフェクトを装備し、さらに音質、音量、特殊効果を可能にする30を超えるオーディオエフェクトを標準で搭載している。
また、視覚的にわかりやすいキーフレームエディタによって、モーショングラフィックスを制作したり、時間軸に従ってエフェクトを変化させるなど多彩な表現が可能である。まさにプロレベルの映像制作を志すユーザに必要な機能をすべて搭載したツールといえるだろう。
(5) 時間経過とともにパラメータをコントロール |
AFTER REVIEW
PowerPC G4 1.25GHz以上で使用できるとされているものの、実際に 1.25GHzのPowerBook G4で使用してみると快適とはいえない速度だった。合成やエフェクトを多用する場合はIntel Macが欲しくなってくる。CPUがIntelでさえあれば通常の作業に関してはそれほどスペックの高くないマシンでも十分だが、AVCHDの読み込みから変換に時間がかかってしまうのは致し方ないところか。