気軽に試せる価格と操作性で、誰でもFlashクリエーター
【2007年9月号掲載】


「自分のWEBサイトに動きのあるコンテンツを」と考えた時、Macでそれを実現するためのツールが極めて少ないことに気づくはずだ。最初に思いつくのは「Adobe Flash Professional」だが、趣味で公開しているWebサイトやブログのために数万円も投資できないし、プロ向けの機能やスクリプトを今から覚えるのが面倒だという人も多いだろう。では、Macユーザは黙って諦めるしかないのか? その答えの1つがこの製品だ。「かんたん=低機能」かどうかは、是非本記事を読み進めてご判断いただきたい。


スペック

[発売元] サイバーフロント  [価格] 5,040円 [メモリ] 512MB以上
[HD] 100MB以上 [OS] Mac OS X 10.3.9以上 [備考] 1024x768ピクセル以上のディスプレイ、「Adobe Flash Player 9」が必要 [掲載号] 「Mac Fan」2007年9月号

OVERVIEW

マウスのクリックとドラッグだけで、基本的なFlashアニメーションが簡単に作成できる。それがこの「かんたんWebアニメーション」である。実にストレートな名称だが、実際に使ってみると、操作性も機能もネーミング同様ストレートで直感的だ。

したがって操作は極めてシンプル。起動して→作るサイズを決めて→動かすオブジェクトを配置し→動きを適用し→動きを確認したら書き出し、という段取りで完成する。

(1) 理解しやすいインターフェイス
インターフェイスはすべての情報がひと目でわかりやすい。各操作パネルは分離できないが、不要なパネルは折りたたんで編集画面をフルに使えるよう、画面切り換えボタンが装備されている

動かすオブジェクトは、左側のウインドウにあらかじめ用意されているし、テキストを入力したり、他のソフトで描いた画像を読み込ませることもできる。それらの「動き」すなわちアニメーションはボタン1つで簡単に設定できる。アニメーションはかなり多くのパターンが用意されているので、いろいろ試してみて、好みの動きを選ぶことが可能だ。

(2) アニメーションの種類が豊富
オブジェクトを選択して[アニメーション]ボタンを押せば、動きを選択画面が表示される。サンプルがアニメーション表示されるのでどんな動きになるのか想像できる。用意されている動きの種類も豊富だ

動く長さや時間、タイミングなどはタイムライン上で自分で操作するか、右のプロパティウインドウで秒数などを入力すればいい。よほど凝ったモノを作るのでなければ、30分もあれば結構見栄えのいいWEBバナーやショートアニメを作ることができるはずだ。

FOCUS ON

(3) 参考になるテンプレート
付属のテンプレートは、このソフトをマスターする時のいい参考になる。タイムラインの扱いなどを勉強するには最適な素材だ

簡単に作るという点では非常に優れている製品だが、その簡単さは、できることをある程度制限しているからこそであり、慣れてきてもっと凝ったことをしたいと考えた場合、タイムラインでの編集やオブジェクトの細かな動きの設定で、融通が効かないと感じてしまう点もあるだろう。もっとも、難しいことは抜きにして、簡単にアニメを作るのがこのソフトの主な目的だから、機能と操作性のバランスを考えれば妥当だといえる。

あらかじめ用意されているグラフィックスはファンシーなデザインのものが多く、好みが分かれるところだが、別のソフトで作成したイラストや写真素材を用意すれば、オリジナルのアニメーションが作れる。また、豊富な種類のテキストアニメーションを一瞬で作成できるというのは大きな魅力の1つだろう。

(4) 写真があればアルバムはカンタン
デジタルカメラの写真がある程度揃っていれば、Flashベースのインタラクティブなアルバムが簡単に作れる。自分で文字を入れたりすれば、オリジナリティも出すことができる

マウスオーバーやクリックによってイベントを発生させる(別のアニメーションに移行させたり、指定したWebページに移動させるなど)ことも可能で、うまく使いこなせばインタラクティブなコンテンツも作成できる。簡単にできるフォトアルバムや、Flashビデオを取り込む機能などもあり、機能に対してのお買い得感は高い。

(5) 動画ファイルの取り込みも可能
FLV形式の動画も取り込むことができる。なお、他形式の動画ファイルをFLV形式に書き出す「On2 Flix Standard 8 (日本語マニュアル版)」も同時発売となっており、本製品とのセット販売も行っている(9,240円)

AFTER REVIEW

このソフトはFlashの入門用と考えないほうがいい。むしろFlashの勉強を端折って、動くパーツだけを簡単に欲しいという、かなり絞り込んだターゲット向けの製品であり、その潔さには感心する。シンプルなインターフェイスのわかりやすさや操作性は秀逸だが、付属してくるパーツなどをもう少し大人っぽい感じにすれば、もっと多くの人が手に取ってくれるはず。そう考えると少し惜しい気がする。