できる喜びを与えてくれる、ユーザの目線を意識した複合機
【2009年2月号掲載】



スペック

[発売元] 日本ヒューレット・パッカード [価格] オープンプライス
[実勢価格] 2万円前後 [OS] Mac OS X 10.4以上 [解像度] プリンタ:9600×2400dpi、スキャナ:4800×9600dpi [インターフェイス] USB2.0 [サイズ/重量] W452×D406×H207mm/7.5kg [備考] インク数:5色インク、最小インク滴:1.3pl、液晶サイズ:2.4インチ [掲載号] 「Mac Fan」2009年2月号

OVERVIEW

最近のインクジェット複合機は基本性能が高く、プリント品質や解像度はもちろん、スキャンやコピー性能、本体パネルの操作性なども甲乙つけ難くなってきた。各メーカーは毎年さまざまな新機能を盛り込むことで、ユーザの目を引こうと知恵を絞っている。

そんな中、日本ヒューレット・パッカード(以下、HP)はこれまでいい意味で必要な性能・機能を過不足なく盛り込んだ複合機を送り出してきた。「C5380」も実売2万円前後の普及価格帯モデルにして、最小インク滴1.3pl(ピコリットル)&9600dpiの高品質プリント、L判最速15秒の高速写真プリント、そして光学解像度4800dpiの高性能CISスキャナの搭載など、高いスペックを誇る。

ただし、その一方で、HPの複合機には目玉機能があまりなく、他社に比べて地味な印象とも捉えられがちだ。確かに、HPの複合機より華やかな多機能製品はいくつもある。高度な自動写真補正機能や手書き合成機能、TVプリント機能などを搭載したモデルだ。

しかし、目を機能から使い勝手に転じてみるとその評価はがらりと変わる。特にC5380は、実際に使ってみると心憎いばかりの気配りが感じられるモデルなのだ。

FOCUS ON

もっとも特徴的なのが、HPならではの自動用紙選択と印字品質の自動設定だ。Macから印刷する時は用紙を入れ、そのままプリント。ドライバの設定をいじらず、すぐ「印刷」を押しても大丈夫。自動で普通紙や写真用紙を見分けるので印刷のミスがほとんど起こらない。

また、今では複合機で当たり前のようになった前面給排紙を最初に導入したのもHP。サイズの異なる用紙を2段トレイに収納し、用紙の入れ替えなしに写真印刷ができる。新たに対応したCD/DVDのレーベルプリントも使いやすい。

(1) CD/DVDトレイを収納できる
2.4インチの液晶ディスプレイを搭載したコンパクトな本体。CD/DVDのトレイは本体に収納できるのでなくす心配がない。また、付属の「フォトスマート・クリエイト」を使えば、画像ファイルを選択して文字を入れるだけで素早くレーベルが作れる

さらに、もっとも注目したいのが付属ソフトだ。「HPデバイスマネージャ」というナビゲーションソフトから、スキャンアプリなどの各アプリを起動するが、この連携が絶妙で直感的にやりたいことへ進んでいける。いろいろなことができる複合機より、したいことをすぐにできるほうがユーザはうれしい。複合機が多機能化する中、C5380はそんなことを思い起こさせてくれるモデルだ。

(2) 初心者に使いやすいスキャナ機能
通常はボタンを押すだけで手軽にスキャンが可能。カスタマイズもできるが、推奨設定と異なる場合は、警告が出て教えてくれる

(3) OCRソフトも付属
「HPデバイスマネージャ」から行いたい作業を選んでアプリを起動することができる。OCR(自動文字認識)ソフトはI・R・I・S・社のものを搭載している

(4) 高速にプリント
L判のプリント速度は最速モードで15秒前後。画質も高い。また、最速モードでA4モノクロ10枚の連続印刷は、スプール後印刷し終るまで1分弱しかからない

AFTER REVIEW

3年ほど前の機種に比べると、搭載されている機能が絞り込まれていて無駄がない。また、液晶も明るく見やすいので大変使いやすい。目新しい機能ではなく実質的なクオリティで比較すれば、他のメーカーの複合機とも十分勝負できるだけのものは持っている。ただし、使用していてやや駆動音が気になったのが残念なところ。写真プリントに関しては、5色インク搭載機ながら高画質で、数年前の同社製品と比べて格段に画質が進歩している。