「撮りっぱなし」はもうおさらば!
デジタル写真ライフを豊かにするSDカード【2009年2月号掲載】


今やほとんどの人が持っているであろうデジタルカメラ。だが、撮影しただけで写真をデジタルカメラ内に保存したまま、という人も少ないはずだ。そんなユーザに待望の製品が登場した。2007年に米国でいち早くリリースされ、大きな話題を呼んだ「Eye-Fi Share(アイファイシェア)」だ。SDメモリーカードながら内部に無線LANチップを内蔵し、撮影した写真をワイヤレスでMacやオンライン写真サービスにアップロードしてくれる。デジタルカメラの活用方法を広げる期待の製品の使い心地はいかに?


スペック

[発売元] アイファイジャパン [価格] オープンプライス [実勢価格] 9,900円前後
[OS] Mac OS X 10.3以上 [サイズ/重量] W32×H24×D2.1mm/3.1g [備考] 対応ブラウザ:FireFox 2、3、Safari 3(Macの場合) 接続規格: IEEE802.11b/g 通信距離:屋外27m、屋内13m WEP(40/104/128)、WPA-PSK、WPA2-PSK [掲載号] 「Mac Fan」2009年2月号

OVERVIEW

最近のコンパクトデジタルカメラを見ていると、どうもしっくりとこない。「1000万画素超」「高速連写」「顔検出機能」「ブレ補正」など、新製品の売り文句は画一的で、その進化のベクトルも依然として「写真を撮影すること」に主眼が置かれたままだ。もちろん、写真をキレイに簡単に撮影できることはうれしいが、写真の楽しみは単に撮影することだけではないはず。撮影後に「いかに楽しむか」こそが、本来の写真の醍醐味といえる。

とはいえ、自分のデジカメを見てみると、そこにはたくさんの「撮りっぱなし」の写真が一杯。メモリカードの容量が増えたことで、撮影した写真をずっとため込んでいることが多い。また、たとえパソコンに取り込んだとしても、結局写真はハードディスクの中で眠ったまま。デジタルになって写真が手軽に撮れるようになったとはいえ、これでは「豊かな写真ライフ」とはほど遠い。

一目見ただけで、そんな状況を変えてくれると期待したのが本製品だ。見かけは普通のSDメモリーカード(2GB)なのだが、なんと内部に無線LANチップを内蔵。SDメモリカードスロットを搭載したカメラに差し込むことで、撮影した写真をワイヤレスでパソコンやオンライン写真サービスに転送できるのだ。

(1) ジャストSDカードサイズ
SDメモリーカードとまったく同じサイズのため、SDが使えるどんなデジカメにも装着できる

これはすごい。パソコンに転送するのが面倒だからという「撮りっぱなし」の理由を解決し、オンライン写真サービスでの写真公開に必要なパソコンでのアップロードやリサイズ作業などの手間も省いてくれる。対応する写真サービスは、アップルの「MobileMe」、定番の「flickr」や「Picasa」など。今後、「フォト蔵」など対応サービスも順次拡大していくという。

FOCUS ON

実際の使い勝手も非常によい。撮影した写真はメモリカード内に記録されたあと、無線LANを介してアイファイが提供するサーバに送られ、あらかじめ登録したパソコンの特定のフォルダと、自分の契約しているオンライン写真サービスに転送される。

(2) カードリーダ経由でMacと接続
付属のカードリーダに差し込んで、USB経由でMacと接続する。Mac上に認識されたら、カードの設定作業が行える

(3) 設定と履歴はブラウザから
無線LANルータにログインする際の設定や、転送先のフォルダやオンライン写真サービスの設定は、WEBブラウザ上で行う。アップロードの履歴なども参照可能だ

720万画素のニコンの「S50」で撮影した画像1枚は約6秒で転送が開始され、11秒で送信が完了(IEEE802.11gの環境)。連続で撮影しても1枚1枚転送され、[ピクチャ]フォルダを送信先に指定しておけば、撮影が終わってiPhotoを起ち上げあれば写真が表示される。

(4) 撮影後すぐにMacに転送開始
無線LANに接続して写真を転送できる環境であれば、撮ったその場でリアルタイムに写真が転送される。Mac上で転送されている様子が表示される

(5) iPhotoを指定しておくと便利
転送先を[ピクチャ]フォルダにしておけば、iPhoto起動時に写真が読み込まれる。撮影したデータは自動で日付別にアルバムとして登録される

一般のオンライン写真サービスへの転送は、Eye-Fiのサーバで画像サイズがリサイズされる。そのサイズはオンライン写真サービスによって変わり、「Facebook(フェイスブック)」の場合だと640×480ピクセルだ。写真は、オンライン写真サービスとMacに転送されたあと、サムネイル画像だけを残してアイファイのサーバから自動的に削除される。

(6) オンライン写真サービスにアップロード
MobileMeやflickr、Picasaなどさまざまなフォトサービスに対応。例えば、MobileMeをアップロード先として登録すると、写真は無線LAN環境があれば自動的にiDiskに保存され、写真ギャラリーに追加される

ただし、残念な部分もある。まず、デジカメとMacを直接(アドホック)接続できない。また、認証作業が必要な公衆無線LANサービスに対応していないので外出先からの転送が困難。そして、扱える写真は今のところJPEGのみでRAWや動画には未対応となっている。

しかし、これらは今後の本製品の普及次第で改善を望める部分といえそうだ。例えば、公衆無線LANサービスと提携することで認証作業の問題をクリアしたり、デジカメメーカーとの協力でカメラがEye-Fiカードを認識すると新機能が使えるようになったりなどだ。米国では2007年に発売後、すでにブロガーをはじめ一般ユーザへも広く浸透している。「カメラ文化」が強く根づく日本を初の海外市場として発売された本製品。国内での「デジタル写真ライフ」を豊かにするための画期的な製品として快く迎え入れたい。

AFTER REVIEW

写真を転送できるMac、およびオンライン写真サービスはそれぞれ1つだけ。できれば、複数のオンライン写真サービスに対応しているとよかった。写真はアイファイのサーバを介してMacに送られるが、Eye-Fiを搭載したカメラと無線LANルータ、Macが同じネットワーク内にあるならば、Eye-Fiのサーバを介さずにMacにも転送できる。Macに保存するだけならば、こちらのほうが高速だ。
(製品の外観は実際のものと異なります)