電力線を使ってインターネット!
速度が向上したPLCアダプタ【2009年1月号掲載】



スペック

[発売元] アイ・オー・データ機器 [価格] 1万6,800円、PLC-ET/M2(子機単品):9,300円 [インターフェイス] 10BASE-T、100BASE-TXイーサネット [サイズ/重量] 約W100×D60×H42mm(突起部含まず)/約160g [備考] 通信規格:HD-PLC方式 [掲載号] 「Mac Fan」2009年1月号

OVERVIEW

どこにでもある電力線のコンセント、つまり電気の屋内配線を利用した「PLC(パワーラインコミュニケーション)」は、有線LANのようにイーサネットケーブルを張り巡らすのが難しく、無線LANでは壁や障害物によって信号が途絶えがちといった、厳しい環境で威力を発揮する通信方法だ。

PLCにはいくつかの規格があり、本製品は「HD-PLC」方式を採用している。従来機種(PLC-ET/M)に比べてサイズは約75%、重さは約3分2にコンパクト化され、耐ノイズ性能を高めているのが大きな特徴だ。

これまでの通信速度の理論最大値190Mbpsだが、本製品では約10%向上した210Mbpsを達成している。なお、購入後に万が一通信ができなかった場合は購入代金が返金される。

FOCUS ON

ネットワーク製品というと設定が難しそうに思えたが、本製品はパソコンによる初期設定は不要。インターネット回線につながった親機のPLCアダプタを電源コンセントに、子機を電源コンセントとMacに接続するだけで暗号化されたネットワーク環境を構築できた。

(1) 取り付けはコンセントに挿すだけ
親機を電源コンセントに接続し、インターネット回線(ルータやモデム)と接続する(左)。子機も電源コンセントに挿し、Macとイーサネットで接続する(右)。そして、本体上部のボタンを押せば設定は完了だ

(2) 親機と子機は設定済み
同じ形をした親機と子機が同梱している。出荷時に親機と子機が設定されているため、改めてする必要はない。子機の増設などで再設定する場合は、モード切替スイッチで切り替える

(3) LEDランプで速度を確認
セットアップボタンを押し続けると、おおまかな通信速度を確認できる。3つのランプがすべて点灯するのがベストだが、最低1個は点灯するコンセントに接続しないと通信できない

PLCアダプタはノイズに弱いというのが弱点だ。本製品も他のコンセントが接続されている電源タップに接続すると、通信速度が落ちる場合があった。ただし、本製品には3段階で電波の強さを知らせてくれるLEDが搭載されており、それを見ながら最適な場所に設置できる。

NTT東日本のFTTH(光ファイバ)「Bフレッツハイパーファミリー」を導入している環境でテストしてみると、親機を設置した同じ2階の部屋内では3つのLEDが点灯し、通信速度は約45Mbps前後。インターネット回線を直接Macに接続した際の約71Mpbsという速度には及ばないものの、AirMac(IEEE802・11g)による無線LAN通信よりも速かった。

(4) AirMacとどちらが速い?
親機と子機を同じフロアのコンセント、それぞれ2階と1階のかなり離れた部屋のコンセントにつないだ場合の速度を、AirMacによる無線LANと比較。電源状態がよいのか、PLCのほうがかなり速いという結果が出た

また、天井や壁をはさんだ1階の部屋ではLEDの点灯2つで10~30Mbpsと、こちらもAirMacより高速。さらに、AirMacがほとんど通じない1階納戸の中でも、本製品は通信可能だった。

屋内に限るが(屋外や離れでの使用は法律で禁止されている)、ワイヤレス通信が不可能な場合、電源まわりさえクリーンならばかなり実用的といえる。

(5) 接続状況を確認
システム環境設定、もしくは[アップル]メニューのネットワーク環境[Ethernet接続]で接続状況を確認できる

AFTER REVIEW

PLCには、「HD-PLC」「HomePlug」「UPA」という3種類の規格があり、それぞれ互換性はない。HD-PLCはパナソニックが提唱する規格で、国内AVメーカーのほとんどが参加している事実上のデファクトスタンダード。ブロードバンドコンテンツを楽しむための高速通信規格としても期待されている。PLCアダプタは、親機と子機の電源ラインが異なると使えない。増築や電圧アップなどで追加工事をした住宅で通信できない場合は、電源ラインをチェックしてみよう。