故渡辺淳一先生がモテた理由
故渡辺淳一先生を遠くから拝したのは二回。一回は編集者に連れて行ってもらった毎年恒例のお誕生日パーティ。そして次は銀座のママをしている早稲田大学出身の知人の出版講演会。いつも美女に囲まれていらした。
そして亡くなってから、先生と縁の深かったいろいろな出版界の方から先生の話を聞かせていただいたのですが、誰ひとりとして先生の悪口を言う人はいない。男性はもちろん女性もです。
先生の武勇伝を聞くと、こんなに女性が大好きで、女性にモテて、男の夢を体現するような一生を送った人はいないのでは……と思います。
しかし男の夢の陰には女の涙がたくさんあるはず。あれだけ多くの女性たちを蝶よ花よとはべらせ、女性の敵? とも言える人なのに、亡くなった後、誰にも悪口を言われないのです。本当のモテとはこういうものなんでしょう。
ある女性誌の編集長が言っていました。「うちの読者(60代から70代女性)の夫はみんな「俺様」世代だから、マッチョな男にアレルギーがある。そういう男はぜったいに誌面に登場させない」。
しかし、そんな年配の女性向け雑誌にも渡辺先生はたくさん連載を持っていました。彼女たちの夫と同じ年代でも、渡辺先生から女性たちは「俺様臭」を感じなかったということです。そして渡辺先生は女性を賛美しても、決して女性に対して失礼なことは言わなかった。これが「女性にモテる」本当の秘訣ではないでしょうか?
「アイドル」と「お笑い芸人」の違い
例えば「アイドル」と「お笑い芸人」の違いってわかりますか? アイドルは決して女性が不愉快になるような、失礼な言葉を言わないのです。対して芸人さんは言います。特に女芸人さんたちへの扱いなどひどいものがあります。でもアイドルは女芸人さんと共演しても、決して決定的な言葉は言わない。そのあたりのさじ加減が絶妙です。
結局誰がクライアントか? ということです。
アイドルは女性に受け、芸人さんは女性だけでなく全方位を目指す。しかし直接「お前、おもしろくないなあ」等と批判をしてくるのは「先輩の男性芸人」になります。自然と彼らは女性におもねるよりも男性におもねる芸風となっていくのでしょう。
週刊誌に見る「男性受け」「女性受け」
最近おじさん向け週刊誌だった「週刊朝日」の誌面ががらりと変わりました。あのマッチョな朝日新聞に、ついに女性の週刊誌編集長が誕生したからです。いきなり女優のグラビアはなくなり、王子様やイケメンサッカー選手などのグラビアになりました。
表紙は「男子アイドル」になり、嵐などのジャニーズアイドルが誌面を飾ります。中身もかなり変わりました。引退して週刊誌を買わなくなる団塊世代のオヤジの代わりに、新たに狙っているのは「婦人公論」の読者層だそうです。今まで「オヤジ向け」だった誌面を「女性向け」にしようとしているのです。
そうなると何が変わるのでしょうか?
女性に失礼なことを言う記事が一切なくなるのです。例えば、同じ週刊誌系列でも「週刊新潮」は明らかに「女性読者はいらない」という印象です。「週刊ポスト」は「熟年セックス」の特集を必ず載せています。
今週の朝日、新潮、文春を比べてみたら、新潮、文春は見出しに「美人女子アナ」とか「愛人」という単語が並びます。朝日には見当たりません。女性受けを狙うなら、「職業」にあえて「美醜」をつける必要はなく、「愛人」ではなく「恋人」という表記のほうがいいでしょう。完全に「男性受け」を狙うか、「女性受け」を狙うかで、使う語彙が変わります。
「誰がクライアントか?」を意識するだけでモテる
つまり、誰がクライアントなのか……それを意識するだけで男性はモテるようになるのです。
一番よくないのは、クライアントが「自分」という場合です。自分の優位を見せつけるためだけに「女性を支配する」ようにふるまったり、「女性を下位におく」ような言動をしたりすると、たちまちそれは女性に伝わって女性を不快にさせます。
渡辺淳一さんは多分自分の「男としての優位」を誰とも競う必要がなかった。そのために女性を利用するなどという姑息な手段を使う必要もなかった。女性を同じ人間と思ってはいなかったと思いますが、違うものとして賛美し、恋をした。怖さも知っていた。
夫婦関係も一緒かもしれません。奥さんをクライアントと考えれば、奥さんに失礼な言動をとり不快にさせることもないでしょう。
もし女性とうまくやりたかったら、お笑い芸人ではなくアイドルの所作や発言を観察しましょう。女性がクライアント、女性受け……それを征したものがモテを征するのです。
<著者プロフィール>
白河桃子(しらかわとうこ)
少子化ジャーナリスト、作家。相模女子大客員教授。経産省「女性が輝く社会のあり方委員会」委員。山田昌弘中央大学教授とともに、2008年度流行語大賞にノミネートされた「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著『婚活時代』(ディスカバー21)がある。婚活ブームのきっかけを作った。近著は、『「産む」と「働く」の教科書』(講談社)『格付けしあう女たち 女子カーストの実態』(ポプラ新書)、国立成育医療研究センター母性医療診療部不妊診療科医長の齊藤英和医師との共著で『妊活バイブル』(講談社)、『女子と就活――20代からの就・妊・婚講座』(中公新書ラクレ)。
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話題の授業が一冊になりました。女の子の親は必見です。
『「産む」と「働く」の教科書』白河桃子・齊藤英和
※写真と本文は関係ありません