夫婦の問題として新たに定義した「産後クライシス」
今年の流行語大賞とか、今年のヒット商品などが話題になる年末。さて、今年の結婚や夫婦関連ワードの流行語は?
ちなみにユーキャンの新語・流行語大賞にノミネートされた夫婦関連のワードは「ビッグダディ」と「ハダカの美奈子」です。
テレビ番組「痛快ビッグダディ」でずっと密着されていた大家族・林下家。主役である夫と妻は離婚してしまいましたが、それぞれの著書が大ヒット。特に妻美奈子さんは、子だくさんのシングルマザーから、テレビ番組のひな壇にもすわるほどのタレントに変身しました。インパクトの強かった夫婦として「林下夫婦」に日本一有名な夫婦大賞を送りたいぐらいです。
私的にはトレンド夫婦ワードの一位は「産後クライシス」を押したいですね。これは今までママの問題と思われていた「産後鬱」や「産後ブルー」などを夫婦の問題として新たに定義した言葉。第一子から第二子への壁となるのが、この夫婦クライシス。(前回記事参照)日本の少子化にも影響があります。
2人だけの夫婦関係から、子どもがいる「夫と妻」にいかに変わっていくか? 夫の家事育児はお手伝いではなく、本気の協業になるのか?
日本の場合、夫の子育てへの参画の少なさ(平日30分、休日でも一時間以下)で、夫婦関係よりも縦の「親子関係」とくに「母子関係」が強くなって、そこで「夫婦関係」は崩壊してしまう。でも夫は気づかない…そんな状態をドンピシャリと表したのが「産後クライシス」だと思います。
多くのママたちが「ぶら下がる」どころではない
それから「ぶら下がり」という言葉も流行りましたね。アベノミクスによる「女性活躍推進」がクローズアップされたのはいいのですが、どこでも言われるのが「育休後のワーキングマザーが制度に甘えて会社にぶら下がっている」という論調。この言葉を聞くたびに思うのは「ん? 会社にぶら下がっているのは育休後のママたちじゃないよね? 出世しない、活躍しない男性がたくさんいるよね?」という疑問です。
インタビューした結果、多くのママたちが「ぶら下がり」どころか、「短い時間で前と同じぐらい働こう」と深夜まで持ちかえり仕事をしていたり、「今はとにかく現状維持が精いっぱい」と肩身の狭い思いをしながら働いていたり…と「ぶら下がる」どころではありません。もし、そういった意識の人がいたら、「働かないおじさん社員」という前例があるので、「申し訳ないけど、今は彼らを見習おう」と思っている。つまり前例に倣っているのではないでしょうか?
でも「働かないおじさん」と違って、ママたちは5時に帰ろうが、4時に帰ろうが「家に戻って最初に座るのが、子どもを寝かしつけた後のお風呂の椅子」というぐらい稼働しています。決して遊んでいるわけじゃない。「次世代を再生産する」というアクションを起こしているのです。
育休や時短などの制度のおかげで、産後のママたちが「正規労働市場」にとどまることはできた。でも次の課題は、会社にとっても、ママたちにとっても、幸せな働き方を見つかること…そして来年はパパたちが、小さな子どものいる家に、早くに帰れる闘いをはじめる年になるかもしれません。
男女共同参画型の「夫婦2.0」になることで、「産後クライシス」も防ぐことが可能
そして2014年のトレンド予測です。リクルートが発表した2014年のトレンドワードの中には夫婦関連ワードがたくさんでていました。
「ありのママ採用」「マルニ(○2)婚」「ヨザル夫婦」です。
「ありのママ採用」とは、子育てをしたママたちの再就職について。「子育てが一段落し、社会復帰しようとしているママの、ありのままの力を戦略的に活用する『ありのママ採用』を行う企業が増えている」
接客やサービス業にママたちの育児経験、主婦経験を戦力にしようという動きが2013年から活発になってきているとのことです。
「マルニ(○2)婚」とは、離婚の"バツイチ"に対し再婚を"マルニ(○2)"と呼ぶ提案。バツイチというネガティブな言葉からポジティブな言葉に再婚をとらえなおそうという試みです。3組にひと組が離婚し、4組にひと組が再婚の夫婦という今、確かに離婚のネガティブイメージは一掃されていると言ってもいいでしょう。当然再婚夫婦には子どもがいることも多い。新しい複合ファミリー(まさにビッグダディ一家のような)の時代が来る予感です。
「ヨザル夫婦」とは、子育ては父親、母乳は母親という「ヨザル」という猿の育児からきた言葉。つまり男性がお手伝いを超えて、夫婦まったく同じぐらいの育児をするというイメージです。つまり「夫婦2.0」ですね。
昭和型の夫婦(妻は子育て、夫は仕事)から進化した男女共同参画型の「夫婦2.0」になることで、「産後クライシス」も防ぐことができます。家事や育児をしっかりやる夫。その代わり妻もしっかり稼ぐ。夫婦2.0とは、家計、子育て、家事、全部を夫婦で等分にシェアする夫婦です。30代男性のお給料が上がらず、女性の職場進出が盛んになると、当然そういった結婚の形が多数派になるでしょう。2人で支え合わないと、厳しい時代。結婚は「女性が生きるため」だけでなく、男性にも必要なツールとなっています。
2014年はさらにその動きが加速しそうです。
それでは、皆さま、良いお年をお迎えくださいませ。
著者プロフィール : 白河桃子(しらかわとうこ)
少子化ジャーナリスト、作家。大学講師。経産省「女性が輝く社会のあり方委員会」委員。山田昌弘中央大学教授とともに、2008年度流行語大賞にノミネートされた「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著『婚活時代』(ディスカバー21)がある。婚活ブームのきっかけを作った。近著は、『格付けしあう女たち 女子カーストの実態』(ポプラ新書)、国立成育医療センター女性医療診療部不妊治療科医長、齊藤英和医師との共著で『妊活バイブル』(講談社)、『女子と就活――20代からの就・妊・婚講座』(中公新書ラクレ)。
公式ブログ : http://ameblo.jp/touko-shirakawa
ツイッター : http://twitter.com/shirakawatouko
Facebook : http://www.facebook.com/profile.php?id=100002282391578
仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座 : http://www.facebook.com/#!/goninkatsu