「レディーファースト」と言えば紳士たるべきには欠かせないマナーの一つ。それも特に欧米では必ず守るべきマナーのようなもてはやされ方をされているのは諸君も知っての通り。「ご婦人はお先にどうぞ」という例のやつだが、現代のように女性の地位が向上し、地位とともに強さも際立ち向上してきている昨今、我々男性はこのマナーをこれからも守るべきか否か……!? 今回はそういったことをテーマに話を進めてみよう。

この「レディーファースト 」という習慣がどのようなことに由来するかをみてみると、どうも人がまだ集落生活を営んでいた頃までさかのぼることができ、その当時敵対する部族の衝撃を受けたときなど自分たちの子孫繁栄の為に、女子供を先に逃がし、男は逃げることなく戦いに挑んだ……とまー、まともな説もあるのだが、もう一つ、面白い話があったので紹介しよう。

「昔々とあるイタリアの村に相思相愛の男女がおった。しかし周囲に結婚を反対され、二人は思いを貫くため心中を決意し、海に身を投じることにしたそうな。そこでどちらが先に海に入るかということになったわけだが、心優しい男は愛する人が自分の目の前で海に入っていくなど忍びないと思い、『自分が先に行くから君も後を追ってくれ』と言い残し最後の別れを告げたのだが……男を見送った女はというと、こともあろうに海に入るどころか、心一転、ちゃっかり村へと戻り数年後には別の男性と結婚して子どもまで儲け幸せに暮らしたとか。そして村人たちはこの出来事にいろいろな憶測をめぐらせ、『やはり女性は先に海に身を投じ先に死ぬべきだ、女は信用ならない』

諸君はどっちの説に「なるほど!」と思うのだろうか!?

では現代の女性の意見はと言うと、もちろん未だに"allow ladies to go first"「女性を先に行かせてあげる、通してあげる」、“hold a door open for a lady”「ドアを開け、女性を先に行かせてあげる」、“give a seat to a lady/make room for a lady"「女性に席を譲る、女性のために場所をあける」などといった男性側の心がけは今も、これからもずっと重んじられるべきと考える女性も少なくはない。

しかし一方で、男性が女性を先に行かせるのは親切心でもなければ良きマナーでもなく、"Ladies first, in reality, means -- Lady, you go first so I can stare at your butt! "「レディーファーストの真意は -- ご婦人よお先にどうぞ、そうすればわたしはあなたのお尻をじっくりと見つめることができるから!!」というのがその本意と唱える女性も、近年急激に増えてきている。つまりよかれと思っての「ladies first」もときには無礼な振る舞いとしかとらえられない場合もある、ということなのだ。

そこで小生から諸君へアドバイスを一つ。もともと我々日本人にはそぐわないこのマナー、あえて無理矢理実行する必要は無いと心得よ。もしどうしてもと言うなら、「ladies first」というマナーは女性に応じて使い分でみてはどうだろう。相手の仕草から実行すべきか否かを感じ取るのもよし、直接話し合うのもよし。とにかく相手の思いを確かめてからの行動でも決して遅くはないぞ、というのが私の持論。

とは言うものの、さりげなく車の乗り降りにすかさずドアを開けてしんぜるとか、ちょっと気取ったレストランでは、椅子を引いて着席をうながしたり、コートを着せ掛けてあげるなどといった行為は未だトライの価値ありかも!? 強気の女性もきっとまんざらではないはず。「ladies first なんて男の下心の表れよ」なんて言いながらも「わたしってひょっとしたら大事にされているんじゃないかしら……」と思いを馳せる可能性も多いにある。

ただし、階段を昇るなんてときだけは要注意。ここでは間違っても「ladies first」と言ってはいけない。"Yeah right, so you can watch my butt, hah!! "「やっばね、それでわたしのお尻を見つめるんでしょう、ね」といっきに凍り付くような冷たい返しが飛んでくる……このとき「しまった」と思ってもそれはもう旧の木阿弥、ぜひとも気をつけてもらいたい。

男子たるや、女性への優しさはもち続けるべき。しかし優しさが転じ嫌みになることだけは避けたいものだ。

あっ、それから日本では「レディーファースト」と言うが、英語で言うときは必ず「レディー」の部分を複数にして“Ladies first.”ということを忘れないように。これには「わたしは決して一人の女性だけではなく、全ての女性に均等に気を配っているのですよ」といった思いが込められているから……。

ではまた次回。