「シンガポール疲れ」って何?
「シンガポール疲れっていう言葉があるのを知ってる?」。そう話すのは、日本で起業してシンガポールにも新たな拠点を設けた某氏だ。ここ数年、日本からも若手起業家がこぞってシンガポールを目指したが、人件費や居住費の高さに嫌気がさして、「シンガポール疲れ」という現象になって現れているという。
例えば、拠点をマレーシアのクアラルンプールやジョホールバルに移すといった動きだ。人材のリクルートはシンガポールで行い、賃金はシンガポールと同じ水準を支払うことを条件にしてクアラルンプールに来てもらう。
そうしたほうが、経営側にとってはオフィス賃料を低く抑えられるというメリットがあり、従業員とっても安くて広い住居に住むことができるというわけだ。とはいっても、シンガポールが東南アジアにおけるビジネスのヘッドクウォーターであることに変わりはないなかで、「シンガポール疲れ」の動きは今後どうなっていくのか……。
不動産の「ハワイシフト」とは?
起業家だけではなく、日本の資産家の一部にも"脱シンガポール"の動きが見られるという。不動産の「ハワイシフト」だ。私も今年に入ってから2度ほどハワイ(ホノルル)を訪問したが、「不動産の動きはかなり良い」という話を現地の人から何度も耳にした。日本人観光客で溢れかえるショッピングモール「アラモアナセンター」の裏手に完成していたコンドミニアムの看板にも「SOLD OUT」の文字があった。
どんな人が買っているのか。地元の人によれば、「日本人もいるにはいるだろうけど、やっぱり中国人じゃないの?」という返事がかえってきた。確かに資本力に加えて、人数でも中国人のほうが多いだろう。ワイキキなどではまだ日本人も数では負けてはいないが、今後中国人観光客のほうが多くなるという日がくるかもしれない。
実際、ハイブランドのショップに入ると日本人よりも中国人のほうが多いように感じられた。日本人観光客からすれば、わざわざハイブランドをハワイで買うという購買行動にならないのだろうが、やはり中国人はお金を持っているんだなということを目の当たりにさせられた。
日本人の"ハワイ通い"は理に適った行動!?
それにしても、ハワイは日本人が多い。世界中の観光地のなかでも最も日本人が多いのではないだろうか。平日のフライト(羽田発)でも座席は満席だった。「それだけハワイが好きなら、いっそ住んでしまえばいいのに」、と思ってしまう。しかし、ハワイ在住30年になるという日本人タクシー運転手のおじさんは、「ハワイはね、給料以外は全部高いよ」と話していた。
毎回名残惜しいくらいで帰って、お金を貯めて何度も来るのが一番だという。家賃も高ければ、食品などの日用品も高いそうで、「金持ちならまだしも、普通のサラリーマンがハワイに住もうなんて思わないほうがいい」(おじさん談)らしい。そういわれてみると、普通の日本人のハワイ通いも"理に適った行動"だと納得できるのだった。