新しく始まる連載『世界を見てやろう』では、ジャーナリストの石井清氏が、国内外を縦横無尽に取材したエッセンスを、マイナビニュースの読者にお届けします。


ミャンマーの「ティラワ」開発を行う会社が設立

10月29日、都内のホテルで、ミャンマー「ティラワSEZ(経済特別区)開発」を行う「MJティラワ・デベロップメント社(Myanmar-Japan Thilawa Development Ltd, 本社予定地:ミャンマーヤンゴン市:出資はミャンマーが51%、日本側49%。日本側は三菱商事、丸紅、住友商事の3社)」の設立式典が行われた。式典には、茂木敏充経済産業大臣、麻生太郎財務大臣、ミャンマー側からはウィン・シェイン財務大臣が出席。年内着工、2015年の開業を目指して開発を進めていくという。

ティラワの開発を日本に行ってほしいと要請があってから約2年。日本側は三菱商事など3社が主体となることが早々に決まったが、ミャンマー側の主体が決まらなかったため、事業体の設立が遅れていると言われていた。

何はともあれ、前向きに進みはじめたことは喜ばしいことではある。「視察"旅行"に来るだけ」と揶揄される日本企業も「ティラワの工業団地ができれば続々と進出がはじまる」と期待がよせられている。一部では、自動車のスズキが組み立て工場を建設するという話も聞く。

ティラワの工業団地予定地

「時間がかかった」という声も--中国や韓国の企業は"急いでいる"

ただ、「時間がかかった」という声も多い。実際の開業までにはあと2年かかる。何も2年待たなくても、ヤンゴン市周辺では工業団地の造成が次々にはじまっている。日本企業が本気でミャンマー進出を急ぐのであれば、何もティラワの完成を待たなくてもよいのではないのか? という疑問もわいてくるが、日本企業の人に話を聞くと、「日本の商社が開発する工業団地だから、日本企業も安心して進出できる」という。確かに"急がば回れ"という言葉もあるぐらいだから、急げばよいというわけではない。

だが、中国や韓国の企業が"急いでいる"ことだけは確かである。ヤンゴン市内を車で走ると、確かに日本企業の看板も増えたが、サムスンなど韓国企業の看板は倍以上に増えている。サムスンやLGの専門ショップまでできている。経済制裁を解いた途端にアメリカ企業も素早く動いた。「コカ・コーラ」の看板をみかけるようになったと思ったら、現地生産まで始めているというから、やっぱり"早い"。

「LG」のたすきをかけてチラシ配布をしている様子

ミャンマーでもスマートフォンが浸透している

2015年にすんなり開業できるのか?

ティラワに話を戻せば、今はもう少し進んだのかもしれないが、土地の買収/立ち退きが進んでいないという。というのも、ミャンマー政府が適正な値段の立ち退き費用を払わないため、一度は出て行った住民が戻っていきたとか。今回、早期開発区域として400ヘクタールが先行して開発される。本来2400ヘクタールの開発予定だが、立ち退きが遅れているためだという話も聞く。真相は不明だが、2015年にすんなり開業できるのだろうか。

また、ミャンマー国際航空が茨城空港とヤンゴン間を週3便、年内に運行するという計画も、来年2月に5便だけ試験的に飛ばすということにスケールダウンした。全日空は9月から成田、ヤンゴン間を週7便に増加させた。それだけ需要があるのであれば、東京駅から茨城空港までバスで1時間40分と、成田に行くのとそんなに大きな違いがないため、それなりに競争力があるのではないかと思っていたので少し残念である。

ミャンマーと日本の関わりは今後どうなるのか? 機会があるごとに紹介したい。