ITジャーナリストの久原健司です。今回から地方創生とITの関係についてお話ししていきます。まず第1回は、国が地方創生とITに力を入れ出した背景について解説します。
5Gで広がる「人と物を繋げるサービス」
インターネットが普及したことで何が起きたかというと、人と情報が密接な繋がりを持つようになりました。ただ、インターネット上にある情報と人が「繋がる」といっても、テレポーテーションするわけではないので、実際には繋がっていません。それを、インターネットインフラを使って、実際に物と人を繋げましょうというのが 、IoT つまり「Internet of things(モノのインターネット)」の考え方です。
それがなぜ今、注目されているかというと、5Gと関係があります。2020年の実用化を目指して開発が進められている5Gは、現在の4Gと比べてより高速かつ低遅延で多接続の通信を実現するからです。
今でもすでに、物と人をWi-Fiで繋げるサービスは家の中で使われています。例えば、遠隔操作で餌を与える機能のあるペットの監視カメラ、スマホアプリと連携して食材の賞味期限管理ができる冷蔵庫、カプセル型のコーヒーを管理してメールで知らせてくれる専用ボックスといったものもあります。
これらは家の中では可能なのですが、4Gでは同時に接続する端末の数が限られてしまい、外では難しいのが現状です。実際、朝のラッシュ時の品川駅ではスマホが繋がりにくいといった現象も起きています。それが、5Gによって、これまでできなかったサービスができるようになる、つまり家の中のサービスを外へと拡大するのが5Gなのです。
既存のサービスを活用して問題解決へ
ただし、IoT を活用しましょうということになった時に、ものすごいコストをかける必要はないと私は思っています。わざわざ新しい商品を開発する必要はなくて、既存のものを活用することで解決することは結構あるのではないでしょうか。
しかしながら、とりわけ地方でIoT を活用しようというと、「便利なサービスがあるといい」という声と、「よくわからないサービスだから怖い」という声が出てきます。知らないことに対する不安を抱くのは、人間ですから仕方がないと思います。ですから、なおさら新しく奇をてらったものを作ったり、イノベーションを起こしたりする必要はなく、既存のサービスを活用したほうがいいのです。そのほうがコストも安くすみます。
例えば、重さを量るマットがあります。単純に体重計のように重さを量るもので、在庫管理用に使われているのですが、マットの上に商品を置いておき、そこから商品を持ち出すと、重さで減った個数がわかります。いちいち目で見て数えなくても在庫数がわかり、自動的に発注できるというわけです。
これを家庭に導入してみたらどうでしょうか。飲み物や食べ物をこのマットの上に置いておき、いつ、どれくらい減ったかがわかれば、遠方にいる高齢者の見守りをすることができます。以前から、電気ポットによる高齢者の見守りサービスはありましたが、これはIT(情報技術)の中でも特にICT(情報通信技術)を活用した例で、電気ポットに無線通信機を内蔵することによって、ポットの利用状況を遠隔で把握できるようにしたものです。
このように、ITをうまく活用することで、地方の様々な問題が解決できると考えられるのです。次回は、地方創生にITを活用した具体的な例を見ていきます。