"せともの"の街、愛知県瀬戸市。この街は火の街・土の街と呼ばれ、昔から真っ白な陶土や自然の釉薬が採れるため、やきものの産地として栄えてきました。「ものをつくって、生きる」そのことに疑いがない。それゆえ、陶芸に限らず、さまざまな"ツクリテ"が山ほど活動する、ちょっと特殊なまちです。瀬戸在住のライターの上浦未来が、Iターン、Uターン、関係人口、地元の方……さまざまなスタイルで関わり、地域で仕事をつくる若者たちをご紹介します。

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Vol.16 On-Co 代表取締役 藤田恭兵

  • 1992年愛知県大口町生まれ。名城大学法学部退学。2019年に「On-Co」を設立し、代表取締役へ。身長195cmの長身で、一度見たら忘れられない。|

    1992年愛知県大口町生まれ。名城大学法学部退学。2019年に「On-Co」を設立し、代表取締役へ。身長195cmの長身で、一度見たら忘れられない

「On-Co」の藤田恭兵くんこと、 “きょうちゃん”は現在28歳。オンラインを駆使しつつ、リアルに帰着させるニューノーマルな地域の課題解決に日々挑戦している。大学時代に起業し、都市部の生き方は最適化なのか? を探り、現在はローカルを舞台に全力で遊ぶように働く。

瀬戸では商店街での大家さんの顔、そして行政とのプロジェクトを運営する顔を見せる、東海エリア注目の起業家・きょうちゃんがめざす社会とは?

きょうちゃんとは何者か?

  • 笑顔が素敵なきょうちゃんって何者?

    笑顔が素敵なきょうちゃんって何者?

世の中には、いろんなことを手がけすぎて、「何をしている人なんだろう?」とよくわからない人がいる。そのひとりが、きょうちゃんだ。

瀬戸では、せと銀座通り商店街にある「ライダーズカフェ瀬戸店」の物件大家さんであり、瀬戸市役所の都市計画課とは、菱野団地内の空き家のリノベーションプランを考える企画「DADADA DANCHIストック計画」などを進める。

2020年までは、名古屋駅徒歩圏内でシェアハウスのコミュニティーマネージャーとして活動し、一緒に事業を運営していた水谷岳史さんと「On-Co」を立ち上げ、共同代表になった。

地域の課題を解決するクライアントワークをしつつ、空き家解決や若い人の夢を叶えるプロジェクトとして、物件ではなく、借りたい人の想いをホームページで紹介する「さかさま不動産」をリリース。「儲からないんすよ~」と笑いつつも、すでに4組がマッチングに成功し、成果をあげている。

  • 「さかさま不動産」CM

    「さかさま不動産」CM

その活動は、まだまだ数えきれないほどあり、きょうちゃんが何者なのかというイメージは、人によってさまざま。ただ、新しいことを生み出すスピード感と実行力は、驚くべきものがあり、彼を知る人は、何に向かって、あれだけ動けるのか!? と思っている人も多いハズ。そこで、きょうちゃんが一体何を原動力に動き続けているのかをお届けしたい。

大学時代に友人と起業する

  • 起業メンバーとそのときに開催していた勉強会のコミュニティ。真ん中の一番後ろのメガネの人がきょうちゃん

    起業メンバーとそのときに開催していた勉強会のコミュニティ。真ん中の一番後ろのメガネの人がきょうちゃん

きょうちゃんは、大学生のときに友人3人と大学時に合同会社「Memotime(メモタイム)」を 立ち上げ、新社会人向けに教育コンテンツの作成とコミュニティ運営の事業をスタートする。

「20歳ぐらいの時、やりたいことがなくて、モヤモヤしながら大学生活を送っていたんですよね。まわりみると、何やったらいいか悩んだり、先輩が就職して鬱になる人がめっちゃ多かったんです。そこで、大学生向けの教育コンテンツを始めました。

その時に、いろいろな社長に会いに行ったり、知見を広めていったら、人生楽しいな~と思うようになったんです。僕と同じ現状があったときに、どうすれば解決されるかなと思い、形にしようと思いました」

  • シェアハウス「Fyume(フューム)」のオープンパーティの時の様子。赤い服着た男性と、右側のショートカットの女性がインター開発のメンバー

    シェアハウス「Fyume(フューム)」のオープンパーティの時の様子。赤い服着た男性と、右側のショートカットの女性がインター開発のメンバー

けれど、メモタイムはうまくいかず、1年で廃業。個人でインターン開発を始め、仲間を募集すると、集まってきてくれたものの、住まいがバラバラだったため、名古屋に集まれる場所がほしいと持ち上がる。そこで、2015年、名古屋駅から徒歩圏内に古民家シェアハウス 「Fyume(フューム)」の運営もはじめた。

すると、シェアハウスの運営の方が、お金がまわってきて、「こっちのほうがいいじゃん(笑)」と、シェアハウスの運営に舵を切る。

その後、シェアハウスを立ち上げる時に、お世話になったシェアハウス「Longroof」立ち上げメンバーの水谷岳史さんと活動をはじめ、飲食店、レンタルスペース、シェアハウスなど合計8件の空き家をリノベーションして運営するように。まるで家族のようなコミュニティが出来上がり、大都会・名古屋に “村”が出現と、話題を集めた。

オンラインを駆使し、リアルに帰着させるまちづくり

  • 左は「On-Co」共同代表の水谷岳史さん

    左は「On-Co」共同代表の水谷岳史さん

名古屋で5年以上活動し、一大コミュニティを築いた末、2020年になると、「新しいことをやりたい」と、古民家シェアハウス・飲食店は、やりたい人へすべて譲渡。前年には、水谷岳史さんと共同代表で「 On-Co」も設立し、ローカルでの課題解決の仕事が増えていく。

さらに、新型コロナウイルスが拡大すると、SNSを駆使したライブ配信の実験などを日々行っていたことで、オンライン配信の依頼が多く舞い込んだ。

  • 2021年1月に配信された、瀬戸市の魅力を紹介する『ローカルまちづくり番組 ハジ○ツアー』

    2021年1月に配信された、瀬戸市の魅力を紹介する『ローカルまちづくり番組 ハジ○ツアー』

瀬戸市では、「瀬戸まちづくり」から、瀬戸市の中心市街地の活性化できないか? との依頼で、瀬戸の魅力と空き家を紹介するVTRを作成。その動画を「On-Co」メンバーで見て、ツッコミながらのオンライン配信。

ほかにも、「三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島」では、オンライン商店街を開催。GATEの漁業をゲームワールドな世界観でライブ配信し、獲れた魚は名古屋市内のカフェで食べられるようにしたり。また、三重県桑名市のお寺で開催された法要のオンライン配信をサポートしたこともあった。