「ちょっとeグッズ」は毎日のくらしをちょっとイイ感じにしてくれる、ガジェットのよもやま話を語る連載です。

2023年の年始、実家へ帰省した際に気になったのが、母(73歳)の聞くラジオの音量でした。部屋に響きわたる、まあまあの音量でしたが、本人いわく「これくらいの音じゃないと聞こえない」。

これは何か、もっと耳元で音を聞かせられるソリューションが必要だぞ……と検討していたところ、高田純次さんのテレビCMで見かけた「ミライスピーカー」を思い出し、メーカーから借りて短期間試用してみました。

  • 高田純次さんのテレビCMでもおなじみのミライスピーカー。実家で棚として使われていた段ボールの上に設置されました。本体サイズはW86×D212×H143mmで、重さは約690g。直販価格は29,700円です

デジタル機器が苦手な両親、スピーカーを設置できるか?

2020年発売の「ミライスピーカー」は、特許技術「曲面サウンド」を搭載し、音が聞こえにくい高齢者向けに「聞こえやすい音」を出すスピーカー。湾曲させた平板を振動版に採用し(これゆえに曲面サウンド)、音に指向性を持たせ、特に人の声を明瞭に届けられるといいます(※聞こえ方には個人差あり)。製品の詳細はニュース記事レポート記事が詳しいので、ぜひご参照ください。

さて、離れて暮らす両親は2人ともにデジタル機器が苦手なタイプ。しかし高齢者向けをうたうからには、両親だけでセットアップできるべき……と、リュックに詰めて持って行ったミライスピーカーを2人に任せ、接続を見守りました。ちなみに“ながら作業”が好きな母は普段テレビを見ず、ラジオ(パナソニック「RF-U180TV」)しか聞いていないとのことで、今回ラジオと接続しています。

  • ワンセグTV音声とワイドFM/AMが聞ける、パナソニックの「RF-U180TV」。現在は生産を終了しています

  • 同梱品は、本体、ACアダプター、オーディオケーブル、説明書の4点のみ。商品パッケージのサイズは26cmほどでリュックに入れて持ち運べ、実家への搬入も楽でした

  • 「よくわからんけど、これはココに入れればいいんでしょ?」

  • 「そんでこっちをラジオのココに入れればいいんでしょ?」

パッケージの同梱品は、本体、ACアダプタ、3.5mmオーディオケーブル、説明書のみと超シンプル。そもそもつなぐものがACアダプタとオーディオケーブルの2点のみ、間違える要素はほぼ皆無とあって、デジタル機器が苦手な両親も難なく接続を完了しました。

そしていざ、本体の電源をオン! と意気揚々押したものの……。スピーカーの電源を入れても流れてくるのはノイズのみ。ラジオの音は流れません。

  • 接続完了。いざ電源を入れ、どのように聞こえるのかと待ち構えていたところ……

  • なんと音が鳴りません。ボリュームの問題? と音量つまみをいじる母

スピーカーから音が鳴らない! 原因は?

困ったときは説明書、というわけでトラブル項目を探していたら、「音が出ない、ノイズが出る、ブーンと音が出る」という状態の対処法が、一番目立つところに書いてありました。

いわく、長く使っていないヘッドホン端子は接触が悪くなることがあるそう。解決法「音を出す側とつないだプラグを、4~5回抜き差ししてください」に従ったところ、無事にラジオの音がスピーカーから再生されました。ホッ。

  • トラブルシューティングの1番最初の項目が「音が出ない、ノイズが出る、ブーンと音が出る」。まさに今回の症状です

実際の音の体感を、ラジオ内蔵スピーカーからそのままニュース番組を流した場合と、ラジオにミライスピーカーをつないでからニュース番組を流した場合とで比べてみました。筆者にとっては同じくらいの音量でも、母の耳にはラジオから聞こえる音より、ミライスピーカーから再生した音のほうが、大きく明瞭に聞こえるということで大喜び。

「人の声が大きくはっきり耳に聞こえる。音が小さいと聞くのに神経を使うけど、これは一生懸命聞かなくても内容が理解できるからよい。今も『ゴール』って言ったでしょ? (サッカーの試合を中継していました) 意識しなくても言葉がクリアに聞こえる」と好印象。しかし、部屋を移動するときにラジオとスピーカー、両方持っていくのは大変だから、ラジオのスピーカーとしてそのまま内蔵して欲しい! という要望も出てきました。

  • ラジオとつながったミライスピーカー。白い部分が湾曲した振動板で、この延長線上にいると、音の指向性により特によく聞こえます

一方で父からはこんな指摘も。「上部の再生つまみは大きくて回しやすいけど、年配の人では握って回すという作業が難しい人もいるかも。ボタン式のほうがよくない? あとラジオとつなぐとき、ACアダプタケーブルとオーディオケーブルの色が両方とも黒でどっちがどっちかわからなかったんで、色分けしたほうがいいよ!」。

  • 上部の音量つまみ。固すぎず柔らかすぎず、適度な力で調節できます

音量低減効果は限定的なものの、母の満足度は高し

試用前、このスピーカーを使うことで、母には音がよく聞こえ、他の家族には通常の音量で聞こえるのでは……という期待がありました。

ただ、確かにラジオの内蔵スピーカーで聞いていたときに比べて音量を下げることはできたものの、母の耳でよく聞こえる音量にすると、結果として同じ部屋にいる自分たちの耳にもよく聞こえる状態になり、同じ部屋にいる家族にもうるさい音量となりました。この点はやや残念な結果に。

とはいえ、接続元のラジオと比べ音の指向性が高く、ミライスピーカーのすぐ隣にいるよりも、離れた場所でもスピーカーの延長線上にいるときのほうが音はよく聞こえました。これを利用すると、同じ部屋に利用者以外がいても、ある程度音が抑えられて聞こえる、といった工夫ができるかもしれません。また、必要な時だけミライスピーカーを付け外しする使い方であれば、テレビを点けた際に自分が普段聞く音量よりはるかに大きくて驚いた(高齢の両親が聞いたままの音量になっていた)、といった事態は防げそうです。

今回、試用が終わった段階で母親から「このスピーカーが欲しい」というオファーがありました。

音が大きい問題は残るため、有線のネックスピーカーとも相当悩みましたが、「距離の制限なく手軽に聞ける」「同居しているのは72歳の父親だけ(なので音が大きくてもさほど問題なし)」「本人の満足度が高い」といった理由から、ちょうど母の日(2023年は5月14日)が近いこともあり、ミライスピーカーを購入してプレゼントすることに。

というわけで公式サイトを眺めていたら、なんとサウンドファン認定による公式中古品の販売を発見! 同社が定めた整備プロセスを経たリユース品で、新品購入の特典となる「60日間返金保証」は受けられませんが、新品が29,700円のところ、認定中古品は22,000円と少し安く買えます。

確かに新品である必要はなく、認定中古品でも1年保証は付帯するため、届け先を実家に指定し、サクッとポチッと買ってしまいました。再び無事にセットアップされることを祈るばかりです。

  • 公式サイトからサクッと購入。送付先が指定できるので、実家の住所をそのまま指定して送りました。無事にセットアップが完了すればよいのですが……