ウイスキーは木樽で長期間熟成させることで、アルコール感が柔らかくなり、透明な原酒は琥珀色に色づき、複雑な香りと味わいに変化します。一言でいえば、まろやかに、美味しくなります。最低でも3年間以上熟成させることで、ウイスキーと呼べるようになります。
熟成年数はラベルに記載されていることもあります。例えば、「ザ・グレンリベット 12年」であれば、最低でも12年間熟成させた原酒を使っている、ということです。当然、メインは12年間熟成のウイスキーとなりますが、それ以上に長く熟成させたウイスキーもブレンドしています。ブレンドした原酒の中で、もっとも短い熟成年数を表記するのがルールなのです。
ちなみに、熟成年数を表記しなくてもOKです。ノンヴィンテージ(NV)やノンエイジと呼び、3年間以上熟成させていれば自由にブレンドできます。そのぶんコストを抑えてクオリティを上げることができます。ラインナップのうち、低価格帯のみをNVにしているブランドもたくさんあります。今の「山崎」や「白州」もそうですね。
通常は熟成年数が長いほど、比例して高価になります。保管コストに加えて、長く熟成させるほど木樽からウイスキーが蒸発してしまうからです。一般的には、10年や12年といった熟成年数の商品を主力にしているブランドが多くなっています。
その上位ラインナップとして、18年物や25年物があります。このあたりから高価になってくるので、おいそれと手を出しにくくなってきます。そこでおすすめしたいのは、バーで飲むことです。1杯ならボトルを買うよりだいぶ安く体験できます。とはいえ、1杯で通常品1本分くらいの金額(数千円~)になることもあるので、誕生日、仕事の打ち上げ、ボーナス支給日など、特別なときにチャレンジしてみましょう。
今回は、高価な25年物の中でも、比較的コストパフォーマンスがよいウイスキーを紹介します。昔は手ごろな値段だった「山崎25年」や「白州25年」も、今では1本50万円や100万円といった金額……。バーで1杯だけだとしても、とんでもない価格になってしまいます。ボトル1本が数万円から10万円くらいの銘柄であれば、1杯あたり3,000~1万5,000円くらいで飲めます。
定番ブレンデッドはしっとり重厚「デュワーズ 25年」
ブレンデッドウイスキーでも高級品はエイジ表記があります。例えば、定番ブレンデッドウイスキーのひとつ「デュワーズ」も、25年物をラインナップしています。
7代目マスターブレンダーのステファニー・マクラウド女史が、25年間以上熟成した希少な40種類以上のモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしています。また、史上初めて英国王室御用達となった、「ロイヤルブラックラ」を熟成していた樽に入れてフィニッシュしているのも特徴です。公式テイスティングノートは以下の通り。
- 香り:芳醇でエレガントなフルーティー・フローラル・ハニーの香り
- 味わい:甘さ、クリーミーさと複雑さが調和されたスムースで深みのある味わい
- 余韻:ヴェルベットのような長い余韻
個人的にコスパ最強の絶品モルト「グレンファークラス 25年」
「グレンファークラス」は1836年に創業され、長らくグラント家がウイスキーを作り続けている家族経営の蒸留所です。超有名なウイスキーで、クオリティも一級品。それなのに、長期熟成のウイスキーを多く作っているからか、比較的安く手に入る点に注目です(とはいっても安いショップでも3万円前後はしますが)。
25年物の「グレンファークラス 25年」は100%オロロソシェリー樽で熟成させており、パワフルで焦げた感じが印象的なウイスキー。とても美味しい銘柄です。個人的に、25年物のウイスキーとしてはもっともコストパフォーマンスがいいと思っています。バーで注文してもそこまで高くないので、シングルモルトの25年デビューにイチオシです。公式テイスティングノートは以下の通り。
- 色合い:ダークゴールドのハイライトを持つ琥珀色
- 香り:複雑でありながら洗練された、マーマレード、蜂蜜、挽きたてのコーヒー、シェリー、ナッツの魅力的な香りが漂う。オークの香りも少し感じられる
- 味わい:フルボディで力強く、シェリーとオークが主張し合うが、どちらも過剰ではない
- 余韻:強烈で長く続く、ドライでモルティーなフィニッシュ。ダークチョコレートの美しい味が口の中に残り、25年の熟成を締めくくる
新しい蒸留所でも、その品質は一級「アラン 25年」
スコットランドのアラン島にあるアラン蒸留所は、1995年に設立された新しい蒸留所です。現在は姉妹蒸留所の「ラッグ蒸留所」を開設したため、ロックランザ蒸留所と改名されています。
まだ創業したての時期に作った原酒を使っているので、25年物は年間で3,000本しか出回らない貴重品です。バーボン樽熟成の原酒をメインに、シェリー樽熟成の原酒とあわせて、1年間シェリーホグスヘッド樽で追熟しています。複雑なシェリー感が楽しめる元気な長期熟成ウイスキーです。公式テイスティングノートは以下の通り。
- 香り:リッチなオークと優しいナツメグのノート。熟したイチジク、サルタナ、ブラックチェリーの甘いアロマ
- 味わい:フルーツケーキにトーストしたアーモンドとシナモン。オレンジとマンダリンのジューシーな果皮の風味が、マヌカハニー、黒砂糖、焼きアプリコット、興味深いホワイトペッパーのニュアンスと完璧に調和し、さらに複雑さを与える
- 余韻:クリーミーでスパイシー、ダークチョコレート、クルミ、ダークフルーツのコンポート
ピート好きならアイラの女王「ボウモア 25年」
ピート香と呼ばれる燻製のような香りがするウイスキーがあります。スコットランドのアイラ島で作られたウイスキーはピート香が強く、熱烈なファンがたくさんいます。中でも「ボウモア」はアイラの女王として、高品質なモルトウイスキーをリリースしています。
「ボウモア 25年」はバーボン樽とスペイン産のシェリー樽で熟成され、ピート感は控え目。ですが、シェリー樽の甘やかさやオーク樽のバニラ感があり、複雑な味わいが楽しめます。公式テイスティングノートは以下の通り。
- 見た目:芳醇なマホガニー
- 香り:濃厚なシェリーと煮詰めたフルーツ、微量のボウモアのスモーキーさ
- アタック:おいしいトフィーとヘーゼルナッツ、ほのかに甘いピートスモーク
- 味わい:まろやかで優しく、驚くほど複雑なフィニッシュ
滑らかな甘やかさにとろける「グレンリベット 25年」
世界でもっとも売れているシングルモルトウイスキーのひとつ「グレンリベット」の25年物も最高です。バーボン樽とシェリー樽で熟成したあと、シェリー樽とコニャック樽という2種類のファーストフィル樽で追熟させています。ペドロヒメネス・シェリー樽の甘いニュアンスと、トロンセ・オーク・コニャック樽のジンジャーやトーストといった温かみのあるノートが特徴で、スパイシーな余韻を残します。
「グレンリベット 25年」は2023年4月にリニューアルされ、ボトルやボックスのデザインだけでなく、中身も進化しました。以前に「グレンリベット 25年」飲んだことがある人も、ぜひ再チャレンジしてみてください。公式テイスティングノートは以下の通り。
- 見た目:濃厚な銅色
- 香り:チョコレートガナッシュ、プラムジャム、マヌカハニーに、フレッシュなレモンゼスト、炙ったシナモン、オレンジブロッサムのアロマが続く
- 味わい:甘いイチジクとブラッドオレンジに、温かみのあるジンジャーやトーストしたオーク、ほのかに焼き色を付けたパイナップルを感じる
- 余韻:優しくスパイスが香る、甘くて長い余韻
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以上、「バーでチャレンジ! ちょっとお高い贅沢ウイスキー、25年熟成のおすすめ 5選」でした。どれも一度は飲んで欲しい最高のウイスキー。できれば、10年物や12年物の通常品とじっくり飲み比べると、重ねた年月の重みと深みを感じられることでしょう。