お酒は自由に楽しみたいものです。うんちくなど知らなくても、自分が美味しく感じれば、それが美味しいお酒です。とはいえお酒に合う飲み方を知っていれば、より味わいを堪能できます。お酒にマッチする料理、おつまみを知っていれば最高です。
また、最低限の知識やマナーを身につけておくことで、ほかの人がいるバーで恥ずかしい思いをしたりせず、より快適に過ごせるようになります。マナーに反する行為をして他人に不快感を抱かせるよりも、普通に振る舞えればトラブルも起きません。若ければ若気の至りで済むこともあるでしょうが、大人としては教養としてある程度の知識を身につけておきたいところ。この連載を通じて、洋酒の魅力を知り、バーでのお酒体験がより充実したものになれば幸いです。
お酒の基本的な原料を知る
今回は基本の基本、お酒の原料をおさらいします。まずは定番のビールから。1516年、バイエルン公ヴィルヘルム4世によって制定されたビール純粋令では、大麦とホップ、水だけを使ったものが「ビール」とされました。その後、大麦は麦芽に変わり、新たに見つかった酵母が原料として追加されました。
ドイツ以外の国では、麦芽になっていない大麦や小麦に加え、香辛料や副原料が使われることもあります。マイナーな材料は別の機会に紹介するとして、ビールの主原料は麦芽とホップ、と覚えておくとよいでしょう。
麦芽は麦が発芽したものですが、なぜ発芽させるのかも覚えてしまいましょう。当たり前ですが、お酒にはアルコールが入っています。このアルコールは原料の糖分を酵母が分解することで生成されるので、お酒の原料には糖分が含まれている必要があります。大麦そのままからはお酒を造ることができないのです。
大麦を水に浸して発芽させると、でんぷんを糖に分解するアミラーゼという酵素が活性化します。そのまま育つと酵素が失活してしまうため、乾燥させて発芽を止めます。これを麦芽と呼び、温水と混ぜ合わせることによって、でんぷんを糖化させます。この「麦汁」を発酵させるとアルコールが生まれ、ビールになるのです。
次に、ワインの原材料はブドウです。ブドウ品種は1万種類以上ありますが、ワインで使われるのは数百種類、定番でも30~40種類もあります。単に「ワイン」といえば、ブドウが原材料と分かっていればよいでしょう。
ブドウ以外のフルーツから作られたワインもあります。この場合は、フルーツワインとか、その果物の名前を付けた、例えばピーチワインなどと呼びます。リンゴ、モモ、イチゴ、洋ナシ、さくらんぼなど、糖分を多く含む果物が使われており、一般的なワインよりもアルコール度数が低いという特徴があります。
話題がちょっと逸れますが、お酒は醸造酒と蒸留酒に大別できます。穀物や果実を発酵させたお酒のことを醸造酒と呼びます。アルコール発酵させたままの状態で飲むことができるもので、ビールやワイン、日本酒などが代表的な醸造酒です。
一方の蒸留酒は、原材料をアルコール発酵させてできた発酵液を蒸留したお酒です。発酵液を熱すると、水よりも沸点が低いアルコールが先に蒸発し、その蒸気を冷やして液体にすることで、よりアルコール度数の高い液体が得られます。例えば、ウイスキーやブランデーは蒸留酒です。そのため、40度以上とアルコール度数が高いのです。
話を戻して、ビールとワインに続いてウイスキー。ウイスキーの主原料は穀物です。大麦や小麦、トウモロコシなどが定番ですが、ライ麦、そば、あわなどを使うこともあります。要はビールのような液体を蒸留したものと考えてよいでしょう。
大麦の麦芽だけを使ったウイスキーのことをモルトウイスキーと呼びます。トウモロコシや小麦、ライ麦などの穀物(グレーン)を使ったウイスキーはグレーンウイスキーと呼びます。モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜたものがブレンデッドウイスキーです。ウイスキーの種類によって原材料が少し異なります。
ブランデーは「burnt(焼いた)」「wine(ワイン)」が語源となっていることからも分かるように、ワインを蒸留した蒸留酒です。代表的な原材料はもちろんブドウですが、ワインと同じく他の果実を原材料とするフルーツブランデーもあります。
ラムの原材料はサトウキビ。しぼり汁をそのまま使うものと、砂糖を生成したときにできる廃糖蜜を使うものがあります。ラムはカタカナだと子羊の肉のラムと同じになってしまうので、ラム酒と呼ぶこともあります。
テキーラの原材料は「ブルーアガべ」という竜舌蘭(リュウゼツラン)で、巨大なパイナップルのような球根を使います。サボテンが原材料ではないので、覚えておきましょう。
ウォッカは穀物やジャガイモなどの芋類を原材料としています。糖化して発酵させ、蒸留します。その上で活性炭を使ってろ過し、雑味を取り除いている点が特徴です。
ジンもウォッカと同様に、ジャガイモなどの穀物が原材料です。杜松の実(ジュニパー・ベリー)などで香り付けしています。ジンに香りを付ける素材(基本的に植物)をボタニカルと呼びます。
以上が、有名な洋酒の原材料です。知らなくてもお酒の味は楽しめますが、原材料を知っているとお酒ごとに味の違いを理解できて、さらに深く楽しめるようになります。知識をひけらかす必要はありませんが、誰かと飲んでいるときに「これは何のお酒?」と聞かれてサラッと答えられたらいいですよね。今回紹介したお酒に関しては原材料を押さえておくことをおすすめします。