婚姻届が最も多く提出される月は11月と3月だといいます。また結婚式の件数は11月と10月が多いそうです。つまり、婚姻届と結婚式をあわせると、11月は1年で結婚が一番多い、おめでたい月だと言えるのではないでしょうか。
さて、初婚年齢の平均が男性31歳、女性29歳※1ということを考えると、結婚して「単身世帯」から「二人以上世帯(以下、二人世帯)」になるケースが多いのではないでしょうか。今回は「家計の金融行動に関する世論調査※2 」をもとに、「単身世帯」と「二人世帯」を比較することで、お金に関する考え方や行動について、結婚による影響を探ってみます。
まず、金融資産を比較すると、中身が大きく違っていることが分かります。「単身世帯」が現在保有している商品は預貯金(94%の世帯、以下同じ)、株式(19%)、積立型保険商品(19%)がトップ3です。一方、「二人世帯」のトップ3は預貯金(96%)、積立型保険商品(52%)、個人年金保険(26%)となっています。「単身世帯」では株式と同程度、2割弱しか保有していない積立型保険商品が、「二人世帯」では半分強と大幅に増えているのが特徴です。これは何を重視して金融商品を選んでいるのか、の違いです。
商品を選ぶ際、「単身世帯」が重視するのは収益性(32%)、安全性(27%)、流動性(20%)の順番です。それに対して、「二人世帯」は、安全性(41%)、流動性(22%)、収益性(19%)の順番で商品を選んでいるのです。結婚すると人はお金に関して保守的になる、ということですね。
面白いのは「単身世帯」も「二人世帯」も目指しているところは同じ、という点です。両世帯とも金融資産の保有目的として最も多いのが「老後の生活資金」(単身世帯の57%、二人世帯の65%)、次いで多いのが「病気や不時の災害への備え」(47%、58%)です。さらに興味深いのは、その目標金額もほぼ同じ、ということ。年金支給時に必要な資産を、「単身世帯」は1,909万円、「二人世帯」は1,974万円、と回答しているのです。こんな数字を見ると、金融庁の「老後に2,000万円」も、結構、的を得たものであったことが分かりますね。
なお、今回の世論調査では、これから両世帯が同じような道を辿ることになる兆候も伺えます。今後、増やしたい商品は、「単身世帯」では預貯金(52%)、株式(14%)、株式投資信託(10%)、「二人世帯」では預貯金(43%)、株式(8%)、個人年金保険(6%)となっているのです。「二人世帯」の多くが現在保有している積立型保険商品は、超低金利で貯蓄商品として魅力が低下しているので、「単身世帯」と同様、株式による資産形成を真剣に考え始めている、ということだと思います。
結婚しても独身気分のままではいけませんが、お金の考え方ではそうとも限らないようですね。ですから、結婚したらぜひ、独身時代に培った投資の経験をパートナーと共有してください。そして、二人で一緒に、更なる投資の経験を積み重ねながら老後資金準備を進めてください。そんな夫婦が増えると、日本における貯蓄から資産形成への道のりも、大きな“うねり”になると思います。
※1 厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
※2 金融広報中央委員会が毎年実施している調査、2019年11月18日に公表された最新公表結果をもとにコラムを作成