2021年2月、東京株式市場で日経平均株価が30年ぶりに3万円の大台を回復しました。月末は3万円割れとなりましたが、それでも過去30年では十分に高い水準です。「コロナ禍なのに、なぜ、日経平均が3万円なの?」、識者が色々な見解を示しています。その中でも、先日、日経新聞に掲載されていたグラフ(※1)がとても示唆深かったのでご紹介しましょう。

  • 実感なき景気回復と株価上昇で「いま、できる、こと」

まずはグラフの見方。人件費率と株主配分比率とは、企業活動で生み出された付加価値のうち、従業員にどれくらい支払われ、株主にどれくらい還元されたかを示した比率です。21世紀に入って人件費率が若干低下し、株主配分比率が上昇していることがわかりますね。これこそが、実感なき景気回復で株価だけ上昇、という背景のひとつだと思います。

「皆、一生懸命働いているのに、従業員よりも株主が大切なの?(怒)」、たしかにそうかも知れません。でも、失われた30年と揶揄されながらも、企業がマインドチェンジしている様子を考えれば、現役世代にとって「いま、できる、こと」があると思うのです。つまり、給料が伸び悩む中だからこそ、企業の積極的な株主還元を好機と捉え、株主としての対価を獲得しながら資産形成を進める、ということです。

でも、いきなり株式投資はハードルが高いですね。なぜなら、左のグラフは日本企業全体の傾向であり、個別企業の株式投資には、更なる知識や分析が必要になるからです。もっと簡単に株主還元の恩恵を受けるには、日本企業全体を投資対象とするインデックスファンドが選択肢になるでしょう。

もし株式投資を考えるなら、持株会もアリですね。自分が働いた対価を従業員としてだけでなく、株主としても受け取るのです。「持株会はリスク分散ではなく、リスクが集中してしまう」との批判もありますが、従来なら自分が受け取る分だと考えて、株主として対価を享受してもいいのではないでしょうか。

(※1)出所:2021年2月20日付、日本経済新聞「株3万円 長期投資で果実 株主への利益配分大きく」
(※2)日経新聞掲載のグラフをヒントに集計期間を20年から30年に延長、日経平均株価の推移を追加