前回、つみたてNISAとiDeCoの税制を比較し、「税制優遇だけが制度選択の唯一の理由とは言えなさそうですね」と結論付けました。それでは、現役世代は何を基準にどちらを選べばいいのでしょうか? 結論から申し上げると、「入口」と「出口」の違いで選べばいい、そんなシンプルな考え方に行き着くと思います。
まずは「入口」。つみたてNISAの場合、年齢は20歳以上、毎年積立できる上限金額は40万円、毎月だと上限は3.3万円くらいになります。一方、iDeCoは原則20歳以上60歳未満で、現状、60歳を過ぎると積立ができません。また、積立できる金額は職業によって違います。少しややこしいのですが、私はいつも、3つのグループに分けて説明しています。
第1グループが制度創設からiDeCoを利用できた人たちで、自営業者は上限が月6.8万円(年81.6万円、以降金額は全て上限金額)、勤め先に企業年金制度がない会社員が月2.3万円(年27.6万円)です。第2グループが2017年から新たにiDeCoが利用できるようになった人たちで、公務員は月1.2万円(年14.4万円)、専業主ふが月2.3万円(年27.6万円)です。第3グループが勤め先に企業年金制度のある会社員。企業年金制度であるDC (企業型確定拠出年金)とDB(確定給付企業年金)の有無で金額が違います。現状、DCのみだと月2万円(年24万円)、DCとDBが両方ある、あるいはDBのみだと月1.2万円(年14.4万円)です。
以上は「入口」の上限金額ですが、つみたてNISAの最低金額は金融機関によって違いますが、100円からはじめられるところもあります(※)。片や、iDeCoは最低5千円、これはどの金融機関のiDeCoでも同じです。
次は「出口」。投資の3大原則と呼ばれる長期・積立・分散投資を誰でもかんたんにできるのが、つみたてNISAとiDeCoですが、実は「長期」の意味合いが違います。つみたてNISAは非課税で20年間運用できるので「長期」です。でも、あくまでも「できる」であり、「マスト」ではないので、20年を待たずに売って「出口」を迎えてもいいのです。「出口はいつでもOK」、これがつみたてNISAの使い勝手の良さです。他方、iDeCoは原則60歳まで引き出せないので「長期」です。売ることはできますが、引き出せないので長期が「マスト」なのです。そもそも老後資金準備のための制度ですから、「出口は60歳以降」、これがiDeCoの特徴です。
こんな風に「入口」と「出口」の違いに注目すれば、自分にあった制度選びもシンプルな考え方に行き着くはずです。まずは「出口」を考えて、60歳までに使いたいお金なら「つみたてNISA」、60歳以降に使いたいお金なら「iDeCo」を優先すればいいでしょう。そして、「入口」の最低金額を考えて、ムリのない金額ではじめることも大切です。さらには、少しずつ積立額を増やし、「入口」の上限金額にぶつかれば、もう1つの制度を利用する、そんなシンプルな考え方でいいと思います。
※大和証券のつみたてNISAでは、積立金額は100円以上1円単位、買付頻度は毎営業日/毎週/毎月/隔月/3カ月毎/4カ月毎/6カ月毎で投資信託の積立投資が可能(職場つみたてNISAは、1,000円以上1円単位で毎月買付のみ)。