先日、引きこもり支援に長年携わっている方が、引きこもりの事例や事実、支援の考え方を説明している本を読みました。本屋で立ち読みしたとき、引きこもり支援と私が取り組んでいる投資教育に相通じるものを感じて、その本を買い求めました。どちらも人の背中を後押しする、そんな仕事だと思ったからです。
まずはイメージと実態のギャップ、これが「引きこもり」と「投資」の共通点ですね。「引きこもり」は家から出ないというイメージを持っていませんか? 私もこの本を読むまでそう思っていましたが、実は9割弱の人は家から出ているのです。
一方、「投資」はギャンブルとのイメージもまだまだ多いですね。私が資産形成セミナーの講師を務めた際、参加者から「投資って、実はギャンブルじゃなかったんですね」との感想を聞くことがあります。これは「投資」のイメージと実態のギャップを埋めることができた事例ですね。でも、セミナーがいつもうまくいくとは限りません。これは「引きこもり支援」も同じようです。
例えば、引きこもりの講演会で、アンケートに「勉強になりました」との感想があると、「ああ、この親はたぶん動き出さないな」と思うそうです。情報集めは大切ですが、情報収集だけでは分からないことが多々ある、とのこと。私も同感ですね。ですから、「引きこもり支援」も「投資」も実際にやってみることが大切なのでしょう。これもよく似ているところです。
一番共感したのは、「リスクがゼロの支援なんてありません」と言い切っているところ。「支援」を「投資」に置き換えても、問題なく意味が通じますね。さらに、「忘れるべきでないのは、リスクを恐れて何もしない場合にも、引きこもりが長期化するというリスクは高まり続ける」と指摘されています。すなわち、何かを選択することも、選択を先送りにすることも、全てにリスクがある、ということです。これも「投資」に当てはまります。つまり、現役世代の我々が「投資」という選択を先送りすると、超低金利時代だと十分な資産形成ができないリスクが高まるのです。リスクの捉え方も似ていますね。
最後に見習いたいと思ったのが、この本のタイトル。本屋で『コンビニは通える引きこもりたち』(※3)を目にしたとき、引きこもりという社会課題に意識が高いとは言えない私でも、思わず手に取ってしまいました。「引きこもりなのにコンビニ?」という違和感に手が動いたのです。ですので最近は、投資に興味や関心のない人たちでも振り向いてくれるような、そんな違和感を探しています。なかなか見つかりませんけど……(笑)
※1 内閣府が2016年に発表した15~39歳を対象とした引きこもり調査
※2 内閣府が2019年に発表した40~64歳という高年齢引きこもりを対象とした調査
※3 久世芽亜里(2020)『コンビニは通える引きこもりたち』 新潮新書