1.休憩の基本
「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と労基法で定められています。
所定労働時間を8時間としている会社で、休憩時間を「正午から1時間」というように定めていることが多いのは、1分でも残業をしたら1時間の休憩が必要となるからです。例えば9時~18時(休憩正午より1時間)の会社で午前有休を取得した場合、この社員は13時から勤務を開始するので休憩時間は必要ありません。ただし、その日に19時以降まで残業をすると少なくとも45分間の休憩を与えなければならないのです。
なお、休憩は労働時間の途中に与えなければならないので、残業を終わらす前に休憩を取らなければなりません。「休憩するくらいなら早めに終わらせてとっとと家に帰りたい」なんて思うかもしれませんが、労基法上は休憩を与えないと労基法違反になってしまうのです。その他、労基法では休憩時間について上記の他「一斉に与えなければならない」と「自由に利用させなければならない」という決まりがあります。
2.一斉付与
ここでいう"一斉"というのは労働者に"一斉"に休憩を与えるということです。よく「うちの休憩は交代制だからお店が空いている時間にランチができる」という話を聞きますが、それを可能にするには理由があります。
まず、そもそもの一斉付与の例外として運輸交通業や広告業、接客娯楽業、保健衛生業等があります。これらの業種は、仕事柄一斉付与が馴染まない業種です。病院やレストラン、役所が休憩時間なしに営業されているのはこの例外があるからなのです。また、その除外されている業種に該当していなくても、労使協定を締結すれば一斉付与が除外されます。
休憩する側からすれば、「好きな時に休憩できる」方が親切に感じるかもしれませんが、適用除外の業種に該当せず、労使協定を締結していないような会社が「交代で休憩を与えている」場合には労基法違反になってしまうのです。
3.自由利用
休憩時間は自由に利用させなければなりません。つまり、休憩中の労働者に対して「本を読んで勉強しろ」とか「外食をしてはいけない」などといった制約を設けてはいけないということです。ただし、休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは問題ないとされています。
例えば、「休憩時間中に外出する場合は許可を得なければならない」というような社内ルールは、必ずしも労基法違反とは言えないというわけです。中には警察官や消防吏員等そもそも自由利用の適用除外とされている職種もあります。
4.これって休憩?
「今日は電話番なのでデスクで昼食をとります」。こんな職場も少なからず存在します。お昼時間であっても、お客様からの電話対応のために交代でデスクに残っているというものです。
おそらく、実際にデスクでお弁当を食べながら電話番をしている方はあまり気に留めていないかもしれませんが、これはいわゆる"手待ち時間"と言われるもので、本来は休憩時間とは言えず労働時間としてカウントしなければならないのです。電話番という業務をしながら昼食をとっているので、自由利用とは言えず、このような運用をしている会社は労基法違反をしている可能性があるわけです。
その他、システムの保守など24時間対応を要する仕事の場合、携帯電話等を持たされることがあります。「電話がなったら必ずでなければならない」や「電波の届かない場所に行ってはいけない」など制約がある場合も労基法上の休憩時間に該当しない可能性があります。
最近の流行では「ランチミーティング」というのも、強制的に参加もしくは暗黙の了解で参加しなければならないような会議であれば、単に昼食をとりながら会議をしているだけの時間にあたるため、休憩時間とは言えないのです。
その他、飲食店などでありがちなのですが、休憩スペースが職場のすぐ脇にあるなど、休憩時間中でもついつい仕事をしてしまうような環境下にある休憩も労働時間とみなされることがあります。
また、所定労働時間が8時間未満の場合、45分間の休憩時間が設定されていることがあります。この場合、8時間を超えて残業した場合には、あと15分間の休憩を与えなければなりません。このようなケースでは実際には休憩を取っていないにも関わらず、残業時間から自動的に休憩時間の15分を控除する仕組みをとっている会社もあります。このような状態は、休憩時間が足りないという以外に、未払い賃金も発生している可能性があるので注意が必要です。
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著者プロフィール: 大槻智之(おおつき ともゆき)
特定社会保険労務士/大槻経営労務管理事務所代表社員 1972年4月東京生まれ。日本最大級の社労士事務所である大槻経営労務管理事務所代表社員。株式会社オオツキM 代表取締役。OTSUKI M SINGAPORE PTE,LTD. 代表取締役。社労士事務所「大槻経営労務管理事務所」は、現在日本国内外の企業500社を顧客に持つ。また人事担当者の交流会「オオツキMクラブ」を運営し、220社(社員総数18万人)にサービスを提供する。