「たっぷり」と「入り」、「ゼロ」と「オフ」は別基準
さて、コンビニなどでよく見る「たっぷり」「オフ」などの強調表示。今回はそれらについてのお話です。
上記の写真の商品には、「カルシウムたっぷり」と書かれています。この「たっぷり」という表示に基準はあるか?と言うと、あります。これは健康増進法(国民保健の向上を図ることを目的とした法律)で定められています。この法律に基づく栄養表示基準で、量に関する表示の区分は以下です。
1)高い旨の表示(「たっぷり」「豊富」など)
2)含む旨の表示(「入り」「添加」など)
たんぱく質やビタミンB1など19の栄養素は、その商品に含む量によって、この2つの区分にあった強調表示ができます。
今回の「エースコック ワンタンメン」の場合は、1)に該当します。その場合のカルシウムの含有量は、100g当たり210mg以上(飲料の場合は100ml当たり105mg以上)、または100kcal当たり70mg以上が要求されます。パッケージには1食95gあたりでカルシウムが350mgとなっているので、この基準をクリアしています。
ちなみに2)の場合だと、カルシウムの含有量は100g当たり105mg以上(飲料の場合は100ml当たり53mg以上)、または100kcal当たり35mg以上という基準があります。
では逆に少ない場合はどうでしょうか? 上の写真には、「カロリーオフ」と書かれています。この「少ない」場合についても基準はあり、2つの区分があります。
1)含まない旨の表示(「無」「ゼロ」「ノン」など)
2)低い旨の表示(「低」「ひかえめ」「オフ」など)
カロリーが100g当たり40kcal未満(飲料の場合100ml当たり20kcal未満)であれば、2)として定義されます。写真の商品の場合、カロリーが100ml当たり16kcalなので、「カロリーオフ」と表示することができます。
よく見る表示として、「糖類ひかえめ」「塩分ひかえめ」などというものがあるかと思います。「糖類ひかえめ」に関しては、食品100g当たり糖類は5g未満(飲料については100ml 当たり2.5g)、という基準値が適用されています。また「塩分ひかえめ」においては、ナトリウム換算(※)で食品100g ・飲料100ml当たり、ともに塩分120mg未満と定められています。
1)の基準については第2回の記事でもお話しましたが、例えば糖質であれば、100ml(飲料の場合)中0.5g未満であれば「ゼロ」と表示できます。
※ナトリウム換算の計算式は、ナトリウム(mg)×2.54÷1000=食塩相当量(g)
甘さなど味覚に関する表示は単なる「自社比」
ただ、これらの定義には抜け道があります。それは、「原材料として使われた食品の量」と「味覚に関する表現」です。意味が分かりにくいと思いますので、次の写真をご覧いただきましょう。
左下の写真には、「ビタミンCたっぷり」と同時に「はちみつ入り」と書かれています。「入り」となっていることからビタミンCだけでなく、はちみつの量にも基準があるように思われるかもしれません。
ですが、「たっぷり」や「入り」について基準があるのは、あくまで19の栄養素についてだけです。従って、ここではビタミンCについては基準値がありますが、「原材料として使われた食品」であるはちみつについては、絶対量の基準はありません。
右上の写真のように、「甘さひかえめ」と書かれた商品もあります。これが「味覚に関する表示」の代表的な例で、この場合の「甘さ」について基準はありません。ですので、この表現は単なる「自社比」という見方ができます。
筆者プロフィール : 梶原 茂(かじはら しげる)
食品表示コンサルタントとして「食品表示情報ネット神戸」を主宰。「無果汁と書いてあるのになぜキリンレモンはOKなのか?」という疑問から、商品表示に関心を持ち始め、法令知識を深めるために行政書士の資格を取得。有料通信講座「食品表示関連業務担当者の為の知っておくべき法規制とQ&A講座」(技術情報協会)の講師を務める。現在はホームページ「食品表示情報局」で食品表示関連情報を発信するとともに、個人・法人問わず食品表示に関する質問に無料で答えている。
「食品表示情報局」