トヨタ自動車は新型「ランドクルーザー」に「GR SPORT」というグレードを設定していますが、フロントグリルには見慣れたトヨタマークではなく、アルファベットの「TOYOTA」というロゴが入っています。なぜ、TOYOTAロゴなのでしょうか? モータージャーナリストの内田俊一さんに聞きました。
ランクルのGR SPORTはどんなクルマ?
ランドクルーザーの「200系」が14年ぶりのフルモデルチェンジで「300系」になった。同時に追加となったのが「GR SPORT」グレードだ。
ランドクルーザーは1951年8月、強力なエンジンを備えた4輪駆動車「TOYOTA BJ型」として誕生。トヨタはランクルの本質である「信頼性・耐久性・悪路走破性」を世界中の顧客の使用実態に基づいて鍛え、進化させ、累計約1,060万台、年間30万台以上を販売する人気車種に育て上げた。
そんなランクルの「GR SPORT」は、世界で最も過酷な「ダカールラリー」で鍛え、作り上げたクルマだという。ラリーに参戦したドライバーからの改善要望を車両開発に直接反映したそうだ。
ランドクルーザーは1995年から25年以上にわたり、ダカールラリーの市販車部門への参戦を続けている。GR SPORTの開発にあたっては、「モータースポーツを起点にしたもっといいクルマづくり」を実践。ラリーに参戦するドライバーからのフィードバックを車両開発にいかし、過酷な運転環境でも安心して運転しやすく、疲れないクルマを目指して改善に結び付けた。
今後(2023年以降)のダカールラリーには、「Team Land Cruiser TOYOTA AUTO BODY」(トヨタ車体のチームランドクルーザー:TLC)が新型ランクルのGR SPORTをベースにした車両で出場する予定。ラリー参戦を通じ、高度なポテンシャルをさらに進化・熟成させていって、市販車へとつなげていく方針だ。
そのGR SPORTのエクステリアで最も目をひくのは、フロント周りが通常グレードと異なる点だ。現在、トヨタが用いているエンブレムは1989年(平成元年)10月2日からのもので、それ以前は「TOYOTA」というロゴが用いられることも多かったのだが、なぜ今、最新のランクルにTOYOTAロゴを採用したのだろうか。
歴史も踏まえた判断?
トヨタ広報に直接訪ねてみると、「ランドクルーザーのGR SPORTは『モータースポーツ基点のもっといいクルマづくり』を具現化したグレードであり、ダカールラリーからのフィードバックを他のグレードよりも色濃く反映し、オンロード・オフロード双方での操縦安定性を向上させたユニークなグレードです。その特別感とランクルの持っている力強さを組み合わせた、GR SPORTならではの外観(装備)のひとつとして、このタイプのグリルを採用しました。TOYOTAロゴの今後の採用予定については未定です」との回答を得た。ちなみに、これまでのダカールラリーには「GRハイラックス」も出場しているが、そのグリルに「TOYOTA」と書かれているクルマもある。
ここからは想像だが、今回の採用には大きく2つの理由が考えられる。ひとつは、オフロード走行を目的に開発された車両に対し、そのアイコンとしてTOYOTAロゴを使っているのではないかということ。もうひとつは、ランドクルーザーの歴史歴背景だ。トヨタはランドクルーザーの生誕70周年にあたり、ランドクルーザー「40系」(1960~1984年生産)の補給部品復刻などに取り組んでいるが、40系のグリルにもTOYOTAのロゴが入っている。ランクルの歴史を感じてもらうべく、あえて新型でもTOYOTAロゴを採用した可能性はありそうだ。
海外で販売しているランクルの多くがTOYOTAロゴを装着していることも関係しているかもしれない。GR SPORTも海外を見据え、さらにはダカールラリーなどモータースポーツの参戦実績を踏まえて、TOYOTAロゴとしたのではないだろうか。海外では現在のトヨタのエンブレムよりも、TOYOTAと書かれていた方がなじみがあるからである。