「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

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  • 子どもの「睡眠時間」は叱ってでも確保すべき?

    子どもの「睡眠時間」は叱ってでも確保すべき?

子どもの生活を規則正しく整えていくことはとても大切です。でも忙しい毎日の中で時間を優先してしまうあまり、子どもの心を育てられていないのでは? と悩むご相談はとても多いです。

子どもが何かに熱中して遊んでいる時、できればそれをやらせてあげたい。でも、そろそろ片付けないと寝る時間がどんどん遅くなる……そんな時どんな言葉をかけたらいいのでしょうか。今回は「子どものしつけと睡眠時間のバランスをどうすればいいのか」というご相談に、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

"睡眠時間"と"心を育むこと"を両立させるために

子どもが十分な睡眠時間を取ることの重要性は、最新の研究でも明らかとなっています。また、日本の子どもの睡眠時間が世界と比べてもとても少ないことによる弊害も警告されています。

しかし、たっぷり睡眠時間を取らせたいと思っていても、叱りつけて寝かせることになっては意味がないのでは、と悩むお母さんお父さんは多いのではないでしょうか。

たしかにその通りです。子どものやりたい気持ちを尊重し、時間になったらコテンと寝てくれるのが理想ですよね。真面目なお母さんは「さあ、今日から!」と意気込んで、うまくいかずに悩んでしまうのですが、1日で生活リズムは変わりません。「1~2年かけて整えていく」くらいの余裕を持って臨めるといいと思います。

生活スタイルを見直そう

まずは、生活リズムと生活スタイルを変えることが大切です。寝る時間の30分前には一緒にお布団に入れるようにしましょう。そのために、お風呂は寝る時間の90分前、深部体温が下がるタイミングがスムーズに入眠に入れる理想だそうです。

そして、寝る準備が出来たら照明を夜モードにして30分かけて絵本を読んだり、創作のお話をしたり、子守唄を歌ったり、1日のおはなしをしたり、親子で幸せな時間を満喫しましょう。私自身、今振り返ってもこの時間は宝物です(私が先に寝落ちしたことも多々……ですが)。

理想的なのは、子どもとお母さん(お父さん)に、お父さん(お母さん)が絵本を読んでくれてそのまま眠ること。これは、映画監督の河瀬直美さんと対談をした時に教えていただいた素敵な方法で、わたしも真似していました。

このように寝るまでに必要な時間を割り出して、夕食をとれるよう生活スタイルを変えること。朝起きる時間、朝食、外に出かける時間や体を使って遊ぶ時間など2時間ほど前倒しにする必要もあるかもしれませんね。

ちなみに、私は産後、朝3時に起床して仕事をする生活に変えました。7時間睡眠で快適です。子どもが朝早くに起きても余裕であやすこと(相手をすること)ができます。案外働くお母さんにこのスタイルは多いようです。

日頃から子どもの気持ちを言葉に置き換えよう

もうひとつ大切なのは、日常的に子どもの気持ちを言葉に置き換えることです。よく見かけるのは、お母さんお父さんが望まないことに熱中している子どもを苦々しい顔で眺めながら、何も言わずにやらせていること。これがお子さんのやりたい気持ちを育むことだと勘違いしている方が多いのですが、これではお子さんの気持ちを育むことはできません。

お布団に入る時には、一緒にお布団に入ることを楽しみましょう。お風呂に入る時はお風呂に入ることを楽しみ、ご飯を食べる時にはご飯を食べる幸せを噛みしめましょう。お子さんが何かに熱中している時は、一緒に熱中することを楽しみましょう。

子どもが熱中したら、邪魔しないようにすることも忘れずにしつつ、子どもの気持ちを言葉にして、一緒にやってみることが大切です。子どもの気持ちを育むための特別な時間なんていらないのです。日頃の会話の中で気持ちを言葉に置き換えていきましょう。

「やりたくない」にも種類がある

例えば、お子さんが何かを「やりたくない」といった時、なんと言っていますか? 「そう、やりたくないのね」「わかったわ。もうやめなさい」と返している方が多いと思いますが、NGです。

なぜなら子どものやりたくないには、いろいろな種類があるからです。「今はやりたくないけど、ママが一緒にやるなら、やりたい」「やりたいけど、パパや弟の前ではやりたくない」「靴を履いたらやりたいけど、裸足だからやりたくない」「1回だけならやってもいいけど、ずっとはやりたくない」など、「やりたくない」の一言にもいろいろなバリエーションがあるのです。

しかし、子どもはまだ語彙が少ないので「やりたくない」の一言に集約されているだけなのです。そこで親がその気持ちの一つ一つを言葉に置き換えて行くことが大切です。

「今はやりたくないのかな? じゃあ後で一緒にやってみようか」「ママが先にやってみようかな」「まずは靴を履いてから、やってみる?」「ずっとは嫌だったよね」といった具合に、子どもの気持ちにぴったりな言葉を親が声にすることで、子どもの気持ちが言葉とつながっていきます。

言葉よりも手が出てしまったり、スーパーの前で床に寝転んだり、地団駄を踏んだりしているお子さんも一緒です。自分の気持ちをうまく言葉で表現できないので、こうした行動に出てしまっているのです。

"言葉"という武器を与えるイメージで

イライラして辞めさせるのではなく、一つひとつの気持ちを受け止めて言葉という"武器"をお子さんに持たせてあげられるといいですね。そうすれば、お子さんも言葉で会話ができるようになっていきます。

こちらの時間の都合を優先してやらせるのではなく、日常のなかで感情を言葉に置き換えて心を育てていくことが大切です。