「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。
「きょう、学校(園)どうだった?」と聞いても「べつに~」と言われる、「きょうは、お友だちとなかよくできた?」と聞いても「わかんなーい」と返ってくる。
こんな答えしか子どもから返ってこないと、「わが子は学校や園で何も考えてないんじゃないかしら?」「いつになったらちゃんと応えられるようになるのかしら?」と不安になりますよね。なかには、「男の子だから仕方ないわね」と諦めてしまったりしてしまう方もいるかもしれません。
大丈夫です。ちょっとした会話のコツがわかれば、お子さんも話ができるようになります。そして、その毎日の会話で、国語力も伸びていきます。今回は、「どうしたら、わかるように話ができる子に育つの?」というお悩みに親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。
会話の”目的”を明確にする
こちらが聞いた質問に、子どもが「わからない」と答えるのは、別にお母さんお父さんに意地悪しているわけでも、教えたくないわけでもなく、本当にわからないのです。
たとえば、あなたも急に「きょう、会社どうだった?」や、「きょう、家どうだった?」と聞かれたらなんて答えますか? 「えっ? なに? どうって?」と思うでしょう。つまり、なにが聞きたいの? と大人でも戸惑いますから子どもなら尚更ですよね。
まずは、「会話の目的を明確にすること」が大切です。「きょう、学校(園)どうだった?」この問いかけの目的(意図)はなんでしょうか。
・誰と遊んだのか知りたいのか
・今日1日楽しく過ごしたか知りたいのか
・先生のことを知りたいのか
一体なにを知りたいのでしょうか。こう考えると、親自身が知りたいことをわかっていないのかもしれませんね。お子さんと話をするときには、会話の目的を明確にしましょう。
・運動会の練習が上手にできたのかを知りたい
・どうして服が汚れているのかを知りたい
・先生に怒られるようなことはなかったのか知りたい
など、整理してみると具体的に聞くことができ、知りたいことがわかるような会話になります。
お父さんお母さんが、目的を明確にしながら話を聞くことで、子どももそういう会話ができるようになっていきます。「なんのためにそれをするのか」「今すべきことは何か」、自分の考えを整理してまとめていくことを、日常会話で自然に習得していけるのです。
会話する順番が大切
ただ、この時に大切なことは、「きょう、運動会の練習は上手にできたの? 」と聞かないこと。子どもは上手にできたのかどうか、わからないからです。そこで"会話の順番"が大切です。
親「運動会の練習した?」子「うん」(まずは答えやすい問いかけをする)
親「練習したんだね? !」(ことばを繰り返します)
親「何の練習したの?」子「……」(答えられない場合は、2択にします)
親「リレー? ダンス?」子「ダンス」(次に、少し話を広げます)
親「体育の時間にダンスの練習したの?」子「ううん」
親「いつ、ダンスの練習したの?」子「休み時間に」
親「休み時間に、自分たちで練習したのね! 」子「うん、みんな上手なんだよ」
親「上手にダンスできたんだね。どんなダンス?」子「こんなダンスだよ!」
親「おお! かっこいいね! 運動会楽しみだね」
このように、一つひとつ整理しながら聞いていきます。まどろっこしく感じるかもしれませんが、子どもは相手にわかるようにどう話したらいいのか習得している最中です。親が上手に順を追って会話をすることで、しっかり話ができるようになっていきます。
4W1Hで聞き、「Why」は使わない
まずはお子さんが事実を順番に話すことができるようにするために、4W1Hで聞くことが大切です。<1When(いつ)、2Where(どこで)、3Who(だれが)、4What(何を)、1How(どのように)>で、整理します。
この時もう一つのW:Why(どうして)は聞きません。「どうして」を話せるようになってほしいのですが、それは、ずっと先のことです。理由を言えるようになるために、まずは事実を正しく言えるように導きます。また、「どうして」には非難されているイメージがあり、子どもが話す気持ちを削いでしまうため、使わないほうがいいのです。
たとえば「どうしてちゃんと話せないの?」「どうして宿題しないの?」は、親が理由を知りたいというより、できないことにがっかりしているように受け取れますね。こう言われて「じゃあ、頑張ろう! 」なんて思う子どもは(大人も)いないので、使わないようにしましょう。
「感情」と「事実」を分けて聞く
逆に、子どもが話たいことがいっぱいあって、悔しかった! とか、嫌だった! と感情的になって、何を言っているのかよくわからない時は、感情と事実を分けて話せるようにすることが大切です。
まずは「そう、悔しかったね」とか「嫌だったんだね」など、こどもの感情をそのまま受け止め、落ち着いたあとで事実を4W1Hで整理していくと、子どもは出来事(事実)と自分が思ったこと(感情)を分けて考えられるようになります。
大切なのは「お母さんやお父さんに話すと楽しい」「一緒に喜んだり、悔しがったりしてくれるからもっと話したい」という気持ちにさせることです。話すと怒られたり、何言ってるのかわからないと言われてしまうと、子どもは親と話す気を失ってしまいます。
指示したり教えたりする前に、子どもの話したい気持ちを育てて、家族の会話の楽しさを実感させてあげられるといいですね。