「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

これまでのお悩みはこちら

  • 祖父母の家に帰省する時のストレスを減らすには


年末年始など、実家に子連れで帰省するのは、何かと気を遣うものです。ましてやコロナ禍の今年は、感染対策なども気をつけなければなりません。

「夫の実家に気を遣って、年末年始はストレスです」という悩みを聞く一方で、「孫はかわいいけど、帰省のあとは体力的にもぐったりする」という祖父母の本音も聞こえてきます。

今回は、「実家に帰省する際、お互いにストレスなく過ごすためにはどうしたらいいのでしょうか」というお悩みに、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

当たり前だった「帰省」を見直そう

今年は、帰省の意味を問い直すいい機会です。

まずは、事前にどうしたいのか家族(夫婦)で話し合いましょう。誰かが勝手に決めて実家に連絡をする前に、どうしたいのか、不安なことや嫌なこと、困ることなどを話し合っておきましょう。後から、こんなはずではなかったとストレスをためることは避けられるといいですね。

これまでは年末年始の帰省が当たり前だったとしても、今年は帰省したい思いや方法を問い直し、自分の本音と向き合ってみましょう。

親孝行をしたくて帰省するのか、家事から解放されるために帰省するのか、孫の成長を見てもらいたいのか、今後のことを話し合いたいのかなど、夫婦で話しあうことが大切です。そうすれば帰省に伴うストレスの原因がわかるかもしれません。

<会話の例>
妻「コロナが心配だけど、帰省して大丈夫かな?」
夫「心配だから今年はやめておく?」
妻「うん。万が一感染したら怖いしね。でも親孝行したい気持ちは伝えたいね」
夫「そうだね。リモートおせちとかあるらしいよ」
妻「へえ、画面越しに一緒におせちを食べられたらいいね」
夫「うちの実家はパソコンがないから、せめて電話かな」
妻「事前に子どもや家族写真を撮って送っておこうか」

実際に帰らなくても、一緒に新年を迎えたい思いは、工夫すればしっかりと伝えられそうですね。

何がストレスなのか把握する

では、帰省する場合は、みんながストレスなく過ごすために、どのような対策をとれるでしょうか。ここでも話し合いは重要です。話しているうちに、何が嫌なのかが分かれば、対策も立てられます。

<会話の例>
妻「コロナが心配だけど帰省して大丈夫かな」
夫「うーん…でも孫も見せたいね」
妻「お年玉ももらえるし、テレビも見放題だしね」
夫「たまにはいいんじゃない?」
妻「でも一回崩れた生活の乱れを元に戻すのって大変なんだよ」
夫「そう? 正月くらい…」
妻「私の苦労もわかって。あなたも協力して帰省中も規則正しい生活を心がけてね」
夫「わかった」

この場合は、子どもの生活リズムが崩れることを避けたいという妻の気持ちがうかがえます。そのため、事前に子どもの起床、食事、おやつ、お風呂、就寝などの時間の予定を実家に伝えておきましょう。

祖父母も、子どもや孫たちにとってより快適な空間を作りたい思いは同じはず。事前に1日の予定が分かれば、祖父母もそれに合わせて計画できるので、お互いにストレスなく過ごすことができそうです。

夫婦で帰省に関してどうしたいのかがまとまったら、結果を伝える前に、まずは実家の意向を聞きましょう。

祖父母も「コロナで帰ってくるな」「コロナだけど帰ってきて」とは言いにくいかもしれません。対話を重ねることで、本心がみえることもあるでしょう。そうして、こちらの思いも正直に伝えられるといいですね。

<会話の例>
夫婦「今年の年末年始はどうしましょうか?」
祖父母「コロナも心配だね」
夫婦「心配ですけど、会いたいですね」
祖父母「帰ってきてほしいけど……でも……」
夫婦「やっぱり感染が心配ですよね」
祖父母「ううん、大丈夫。でも家の中が片付かないままなの」
夫婦「大丈夫ですよ。私たちが行って手伝いますから無理しないでくださいね」
祖父母「申し訳ないね。ありがとう」

話し合ったことによって、コロナよりも家の中のことを心配していることがわかりました。また、片付けのお手伝いをしようと、準備をすることもできます。会話を重ねるうちに、してほしいことやすべきことが見えてくるのです。

帰省の準備を怠らない

話し合いの結果、帰省することに決めた場合は、出発前の準備に取り掛かりましょう。上の例のように、片付けの手伝いをする場合は、軍手やゴミ袋、紐やガムテープ、はさみなど持参してもいいかもしれません。自分のやり方でストレスなく手伝う為には、使い慣れたものを持参するのが1番です。

また、子どものテレビの時間を見放題にしたくないなら、みんなと一緒に遊べるトランプやかるた、ボードゲームなどがあるのか聞いてみましょう。折り紙やクレヨン、色鉛筆、画用紙なども、じいじとばあばに教えてもらって遊べば、楽しめそうです。もし実家になければ、持参しましょう。

子どもに食べ物の好き嫌いやアレルギーがあれば、事前に伝えておくことは大切です。子どもの好き嫌いは、成長とともに変わりますし、一度伝えたとしても、祖父母も忘れてしまいます。帰省する際は毎回、伝えるようにしましょう。

祖父母は、今の時代の子育てに詳しいわけではありません。また、孫との付き合い方がわからず、甘やかしてしまったり、厳しくなってしまったりします。しかし、孫の為になりたい、子どもたちの為に少しでも力になりたい、との思いは皆さん同じです。

対話を重ねることで相手の思いを尊重し、こちらの思いも伝えて、少しずつ分かり合う。そうすれば、無駄なストレスを感じず、楽しい帰省になるでしょう。