「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。
ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。
コロナも長引き、そろそろ疲れが出てくる頃ですね。今回は、「息子が帰宅すると『疲れたー!』と言います。子どもなのに、『疲れた』なんて生意気なような気もして……どうしたらいいのでしょうか」というご相談に、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。
「疲れた」にはいろいろな意味がある
親は、子どもに明るく元気であって欲しいもの。そのため、「疲れた」というようなマイナスなイメージの言葉を子どもが使うと、ついドキッとして、やめさせたくなってしまいます。
しかし、この子どもは本当に疲れているのでしょうか。まだまだ語彙力の少ない子どもの言葉をもう少し丁寧に受け取る必要がありそうです。
子どもが「疲れたー」といったとき、「疲れたなんて言うのはやめなさい」と返してしまうお母さんお父さんは多いと思いますが、これはよろしくありません。
なぜなら、子どもの「疲れた」には、いろいろな意味があるからです。
例えば、「頑張ったから"疲れた"」。「今日ね、僕はものすごーく頑張ったんだよ! 疲れるくらい頑張ったんだよ」といったような、自分の頑張りを認めて欲しくて出た言葉が「疲れた」の一言なのかもしれません。
そのため、このようなときには、「そっか、疲れるくらい今日は頑張ったんだね! すごいね」と返しましょう。そうすると、お母さんお父さんに認めて褒めて欲しい子どもは、また俄然張り切って頑張れます。
「だったら頑張ったよ」って言えばいいのに、と思いますが、「今日頑張ったよ」とは照れ臭くて言えないくらい、ちょっぴりおませになった証拠なのかもしれません。
一方、「心が折れて"疲れた"」というケースもあります。「頑張ったけど、できないかもしれないからもう疲れた……ちょっと休憩したい」と、SOSの意味で「疲れた」と発しているのかもしれません。
そんな時は、「そっか、ちょっと疲れたね。よく頑張ってたもんね。少し休もうね」と伝えられるといいですね。一緒に落ち込んで、一緒に気持ちを分け合えば、子どもはまたやる気に満ちてくるはずです。このとき注意したいのは、親として「頑張れ!」とか「どうして疲れたの?」と尋問して追い詰めないようにすることです。また、「頑張れば、あなたならできるよ」と正論を言わないようにしましょう。
一緒に落ち込んで気持ちに共感してもらう中で、子ども自身が気持ちを持ち直すチャンスを待つことが大切です。可能であれば、お子さん自身のいい面や得意な面に眼を向けて、一緒に気分転換を図れるといいですね。
お母さん自身が「疲れた」=「逃げ」と思い込んだ言葉掛けはやめて、子どもの真意を考えられるといいなと思います。
子どもが抱える問題に気づいて対処しよう
子どもの「疲れた」には、「飽きたから"疲れた"」と言っている場合もあります。「この状態に飽きてしまったから、疲れた! 一緒に遊んで!」という意味で疲れたと言葉にする。これは、お母さんお父さんに甘えたい気持ちの表れとして言っているのかもしれません。
「なに甘えているのよ」と思われるかもしれませんが、積もり積もって大変な状況になるよりも、いま、お子さんのストレスが小さいうちに、受け止めてあげられるといいですね。なぜなら、親の愛情を確かめるために「疲れた」と言っている可能性もあるからです。
そんなときに、「頑張りなさい」は逆効果になってしまう可能性があるので、「疲れたから少し休もうね」と認める言葉をかけましょう。あるいは、今の状況を見直してみて、親子で楽しく取り組めるように工夫をしてみるのもいいかもしれません。そうすると子どもは、自分の気持ちをわかってくれたことで楽になり、またやる気を取り戻すはずです。
最後に、もし子どもが何回も「疲れた」と繰り返すようであれば、他の問題が隠れている可能性も疑ってみましょう。園や学校で、いじめや人間関係の問題など何かしら隠れているのかもしれません。
例えば、宿題をしているときに「疲れた」と言っても、宿題をすることに疲れたと言っているわけではないかもしれないと思って、「疲れたね」と子どもの心の声に耳を傾けましょう。宿題を頑張らなくても、あなたはいるだけで価値があること、ママパパは幸せなことを伝えましょう。
親が思っているよりも、子どもはまだまだ言葉を知りません。「疲れた」ということばだけで、イライラしたり、やめさせたりしようとするよりも、子どもの気持ちを言葉に置き換えて、ストレスを減らすような会話を重ねられるといいなと思います。
つい親は自分の思いを押し付けたくなりますが、「疲れた」の裏にある子どもの真意を考えていけるといいですね。