「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。
ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。
子どもに身につけさせたい力No,1は「コミュニケーション力」と言われています。この先、勉学やスポーツ・芸術など、どの道に進む上でもコミュニケーション力はカギとなります。相手の教えを受け止め、自分のやりたいことをわかってもらえるよう伝え、課題を見つけて邁進していくために欠かせません。そして、このコミュニケーション力を育てるには、家での親子のコミュニケーションが大切です。
先日あるお父さんから、「親子のコミュニケーションをとる場所やタイミングはどこがいいのでしょうか」とご相談を受けました。私は「どこでも、いつでも」と思ったのですが、もうお子さんが大きく、少し距離ができてしまっていると悩んでしまうのかもしれませんね。そこで今回は、「子どものコミュニケーション力を育むために親が注意すべきこと」について、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。
コミュニケーションは「手段」である
"子どものコミュニケーション力を育まねば"と一生懸命なお母さんお父さんの中には、水泳の練習やピアノのおけいこのように、「コミュニケーションの時間」という特別なことをしなければならないと構える方もいらっしゃるのですが、そんな必要はありません。
コミュニケーションは「手段」であって「目的」ではないからです。日常生活の中で何かをする時に、子どもの気持ちや考えを引き出し、わかりあうための手段なのです。その際、どの言葉を選ぶのか、伝え方のコツを知っていると、子どもの心に届きやすくなります。結果として、子どもが自分で考えて行動できるようになり、自律した子どもへと育つのです。
子どものコミュニケーション力を育むためには、親のコミュニケーション力を高めることが早道です。理想は、言葉を話す前の0歳から子どもの気持ちを読み取って、言葉に変えていく練習をしたいところですが、仕事が忙しくて日常的に子どもと関わりが少ないという方もご安心ください。コツをお伝えするので、今日から会話の仕方を変えましょう。
子どものコミュニケーション力を育む会話の2つのコツ
1.いいところも悪いところも言葉で認める
「いいところ」を認めるのはわかるけど、「悪いところ」をどうやって認めるの? と思われた方は多いと思います。しかし実際は、いいところを認める言葉をかけられている方も少ないのではないでしょうか。
例えば、朝娘が起きてきて「ママ、おはよう」というのに、パパには言わなかったとします。するとパパが「おはよう、は? ちゃんと言いなさい!」なんて言いがちですね。
この場合のいいところとは、ちゃんと朝起きてきたこと(そんなの当たり前なのですが、起きなかった赤ちゃん時代からすれば大きな成長です)。 そのいいところを認める言葉を言わずに、おはようを言わなかった悪いところを非難する言葉だけが娘に届きます。すると娘は、「パパはいつも私を見てない。怒ってばかり」と受け取っていきます。
もちろんパパは娘がちゃんと挨拶のできる子に育って欲しいと思ってのことなのですが、そんなことは成長期の娘にはわかりません。"いいところも伝え、直して欲しいことも認めた上で伝える"、このバランスが大切です。
ですから今回の例でいうと、お父さんは「おはよう! 早起きしたね」とか「おはよう! 背が伸びたね」など、当たり前のことを言葉にすることからスタートしましょう。そんなことわかってるだろ、は無しです。伝え合うことがコミュニケーションの一歩。"おはようを言いたくない日もある"、これが悪いところも認めることですよ。
張り切ってほめようとする必要はありません。「作文で賞をとっておめでとう!誇らしいよ」とか「昨日のテストも100点だったね」「徒競走で1位だったなんて素晴らしいね」なんてことはそう毎日あることではありません。当たり前にできたことを毎日言葉にすることの方が大切です。
2.会話の目的を明確にする
子どもとの時間の少ないお父さんは、ついコミュニケーションすることが目的になりがちですが、冒頭に書いたようにコミュニケーションは手段です。
「今日学校(園)どうだった?」この質問の目的は何でしょう? 会話をすることが目的になっていませんか? 知りたいことは何でしょうか?
何を勉強したのか知りたいのか、運動会の練習をしたのかを知りたいのか、いじめにあってないのか知りたいのか……分かりにくいですね。親自身が知りたいことをわかっていないとも考えられます。まずは、会話の目的を明確にしましょう。
特に学校(園)に興味がないのであれば、目の前で子どもがしていることに関心を持つことから始めましょう。ゲームやYouTubeをしていれば、隣で一緒に見てみる。「へえ、面白いね」「凄い集中力だね」「このおもしろさが理解できるなんてすごいね」など感心したことを言葉にしましょう。
急にお父さんが寄ってきたら、子どもも警戒して「なに? あっち行って」という反応かもしれませんが、その言葉を認めて「はい、邪魔してごめんね」と離れた後、ジュースやお菓子を持って「ちょっと休憩したら?」とまた隣にいきましょう。「なに?」と言われたら「たまには隣にいたいんだよ」「君のことをもっと知りたいと思ってさ」など素直な気持ちを言ってみましょう。子どもは「きも!」と言いながらまんざらでもありません。
コミュニケーションは、相手の時間や空間にこちらが少し入っていくことから始まります。こちらのペースに巻き込むのは、そのあとです。