「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • 三者面談を子どもにとって有益なものとするために


今年は夏休みが短い学校も多く異例続きですが、我が子が学校生活をどのように送っているのか、学習や行事はどのように進めているのか、気になることは多いと思います。

夏休み前の三者面談で、これらの不安を和らげ充実させられる機会にできるといいですね。親としては担任の先生に子育てへの不安を話し、アドバイスをもらいたい気持ちはわかりますが、優先すべきは子どもの気持ちや考えです。

以前とても優秀な女の子が「面談の時、お母さんが私が家で寝てばかりで勉強しないのが心配だって、先生にチクったの。頭にくる! ちゃんと勉強してるのに」と私に相談してくれました。

お母さんとしては「寝てばかりだけど、成績が優秀だから大丈夫ですよね?」という親心だったと思うのですが、子どもの受け取り方は違うようです。

そこで今回は、「三者面談の際、どんなことを心がけたらいいのでしょうか」というご相談に、"三者面談の心がけ"を3つ、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

1.子どものやる気を引き出すことばを先生に伝える

「三者面談で何を聞けばいいのかわからない」という方が多い一方で、「先生に聞きたいことがたくさんある」という方もいらっしゃいます。三者面談の目的とは何でしょうか。子どもの気持ちを考えてコミュニケーションをすれば、効果倍増のチャンスです。

先ほどの女の子の例で、お母さんの先生への質問を聞いた子どもは、「よし、明日から寝ずに勉強を頑張るぞ!」とは受け取りませんでした。これと同様、三者面談で親子の問題を先生に聞いてもらえば解決できるのでは、と期待される方は多いのですが逆効果です。

なぜなら、間接的なことばは、直接言われたことばよりも、真実味をおびてしまうからです。つまり、「寝てばかりいないで、少しは勉強したら?」と直接言われたことばよりも、「この子は寝てばかりで、勉強しないんですよ」と間接的に聞くことばの方が、ダメージが大きいのです。

一方、ことばは効果的に使うこともできます。「よく寝てるけど、効率的に勉強してるのね。すごい」と直接褒めることも大切ですが、先生に「この子、よく寝ていますが、効率的に勉強しているようで感心しています、学校ではどうでしょうか?」と伝えることばを聞く方が、子どものやる気をアップさせることができます。

聞いた子どもは、「先生に伝えるほど、私のことよく見てくれてる!」と嬉しくなり、頑張ろうと思うはずです。

つまり、三者面談での心がけ1つ目は、親は、先生に子どものダメな点を伝えて叱ってもらうことを目的とせず、あくまで"子どもの気持ちを前向きにさせること"を目的にしましょう。

2.学校を非難せず、一緒に良い環境を作っていく

三者面談で学校の間違っている点を指摘して直させようと意気込むお母さんもいらっしゃいますが、子どもは嫌な気持ちになり、先生も自分の方針を否定されたような気持ちになるので気をつけましょう。

例えば、お子さんの学習時間を気にして、「先生、算数の宿題ドリルをもっと出してください。この子は言われないとやらないのです」と言っても、子どもが自分から学習する子になるとは限りません。宿題を出してもらうのは手段だからです。

それであれば、「算数を今一生懸命に頑張っているのですが、ドリルなどをしたほうがいいのでしょうか」と言い換えてみてはいかがでしょうか。

子どもは「ぼくは算数を頑張っているのか」とハッとして、褒められて嬉しく思いもっと頑張ろうと思いますし、先生からも、宿題の意図や良い学習方法などを教えてもらえるかもしれません。

心がけの2つ目として、話をする際は、学校に「してください」と要求するのではなく、"意欲を高める伝え方"をしましょう。

3.事前に親子で作戦を立てる

心がけの3つ目は、三者面談で"何を聞けばいいのかわからないという時こそ、事前に親子で話し合う"ことです。

親「三者面談で何を話そうか。最近困ってることとか、先生に聞いてもらいたいことある?」
子「特にない」
親「じゃあ、先生のいいところはどんなところ? やさしい?」
子「やさしいよ。この前1人で掃除していたら、『誰もいないのに掃除してくれてありがとうね』って言われて嬉しかった」
親「先生ちゃんと見てくれてたんだね。しかも1人で掃除したの? えらいじゃん!」
なんてエピソードが出てくるかもしれません。

親「その話、先生に嬉しかったって伝えたら?」
子「え、自分で言うのは嫌だよ」
親「じゃあ、お母さんが伝えてもいい?」
子「別にいいけど……」
親「家では、時々お手伝いしてくれることも話してもいい?」
子「それはいいよ」
といった具合に、お子さんが感じていることなどを事前に話し合ってみるといいですね。

親が勝手に先生に話すのではなく、子どもに話してもいいかどうかの判断をさせることが大切です。

三者面談は、子どもが主役の流れを作り当事者意識を持たせることで、自分が頑張ろうと思えるきっかけにできる場だと思います。親や先生に応援してもらっていることを子どもが自覚することで、自立した大人に成長させることができるでしょう。