「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。
ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。
連日ずっと家族で家にいるこの時期、夫婦の会話が子どもに大きな影響を与えています。殺伐とした雰囲気になったという夫婦や、逆にお互いを見直して仲良くなったという夫婦もいるようです。夫婦2人の問題は、子どもにも大きな影響を与えます。そこで今回は、「子どもの前で、夫婦の会話にどのような注意が必要ですか」というご相談に、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。
「間接的」な言葉が「教養」を作る
「直接」言われた言葉から、子どもはいろいろなことを学んでいきます。「片付けしたの?」と言われれば、片付けはしなければいけないのだと、「いただきますは?」と言われれば、ご飯の前にはいただきますを言うんだなと知るわけです。
お母さんたちから、「何度言ってもできるようにならない」と相談が寄せられるのは、子ども達は、"知識"としては知っているけど、"知識の使い方"を知らないからかもしれません。そこで、夫婦の会話の出番です!
たとえば、(父)「散らかしたから片付けしよう」」(母)「そうね」(父)「これですっきりしたね」と話すとします。それを見た子どもは、片付けるとお部屋がすっきりして気持ちいいことや、お母さんお父さんの機嫌もいい、ということを感じます。
この「間接的」な言葉から、自分はどうすればいいのかを見て、聞いて、学び、自分の頭で知識の活用を考えるようになっていくのです。
こうしたことの積み重ねが「教養」になっていきます。子どもは、親をよく見て、真似していくからです。子どもにいくら正論を言っても、親がやらなければ、やれる子には育ちにくいというのは、ご存知の通りです。
夫婦げんかにもルールが必要
子どもは夫婦げんかをよく見ています。正しいけんかの仕方を子どもが学ぶためにも、私は見せてしまってもいいと思っていますが、ルールが必要です。
<夫婦げんかのルール>
1.相手を否定しない(無視するのもこれに当たりますので、やめましょう)
2.自分の思い(主張)を「私は〜」で伝える
3.共通の目的を確認し合う(幸せな家族を作ることなど)
4.相手の主張のうち、理解できる点を言葉にして認める
5.解決の妥協点をさぐる
6.仲直り(解決策)まで見せる
相手を否定して、自分の感情だけをぶつけるのは、けんかではありません。暴力であり、いじめにつながる恐れがあります。お互い無視するというのも、子どもはよく見ているので気をつけましょう。
夫婦げんかは、あくまで、問題を乗り越えるための手段だと思います。「自分がだまっていればいい」「最後は謝ればいいでしょ」では、何の解決にもならないので、前向きに取り組めるといいなと思います。
けんかをみせてしまったら、仲直りまで見せて、子どもを安心させてくださいね。そうすることによって、子どもは異なる意見の相手との解決策を学んでいきます。
「仕事だけでなくて、家でもこれをやらなきゃいけないのか」と思われたお父さんお母さん、「家でこそ」今やるべきです。
もしもの未来を具体的に話し合おう
アフターコロナで、社会は随分変わると思います。企業も、働き方も、学び方も、買い方も、価値観も……今あるものが、今後もあるとは限りません。マインドも少し変えていきましょう。
もしも、家族の誰かが感染したらどうするか、今の間に話し合ってみてください。「夫婦で協力して乗り越えよう」という意気込みだけでなく、より具体的に考えておきましょう。
家族の感染が発覚すると、「いやだ」「悲しい」「こわい」などの思いが最初に浮かぶと思います。しかし、お母さんお父さんが感染したら、「まず、どこに連絡するの?」「仕事は?」「残された家族はどうするの?」など想像力を働かせて、必要な知識や情報、今準備しておくべきことなどについて話し合いましょう。
また、もし子どもが感染したらどうするのかについても話し合ってください。その際、親は子ども自身にもわかる言葉で話し合いましょう。子どもの意外な思いを聞くこともできるかもしれません。
「もし」に対して話し合うことは、なかなか難しいと思いますが、完璧な準備をするためというより、家族の大切さを再認識するために、話し合ってみるといいと思います。
「仮定」の話であれば、日頃考えていることや、なかなか言えなかったことなども言葉にできるチャンスです。そして、相手の立場に立って考えやすいチャンスです。
最後には、コロナという共通の敵に、家族で立ち向かって乗り越えよう! この家族がいれば大丈夫! そのために、今できることをしよう ! と思えるのではないでしょうか。