「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。
ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。
どこにも出かけられず、お家の中で過ごす時間が長くなると、さすがに親も疲れてきて子どもに「勉強しなさい!」と怒ってしまうことが増えてくるようです。そして、「ねえ、どうして勉強しなければいけないの?」と子どもに聞かれて、うまく答えられなかったお父さんお母さんも多いのではないでしょうか?
今回は、「なぜ、勉強しなければいけないのか聞かれた時に、何と答えればよいでしょうか」というご相談に、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。
勉強は「目的」ではなく「手段」である
親も在宅、子どもも在宅で、初めは少しゆったりした気持ちを持っていても、長期となると心配と不安も積もり、「ずっとだらだらして、少しは勉強しなさい!」と焦る気持ちになってくるもの。また、お子さんが小さいと、有り余る体力の発散と運動不足も心配になってきますね。
"子どもを遊ばせなければ"と思うとそろそろネタも切れてきますし、"勉強させなければ"と思うと素直に聞いてくれずストレスを感じます。誰しも、「○○しなければ」や、「(いついつ)までに○○しなければ」と思うと、それに縛られ、期限が迫るともっとイライラしてしまいます。
まずは、「こどもに……させなければ」と思うことから自分を解放してみるのはどうでしょうか。遊ばせたり勉強させたりする目的を考えてみましょう。
「なぜ、勉強するの?」と子どもに聞かれて、何て答えていますか? きっと「将来のためよ」「あなたのためよ」「選択肢を広げるためよ」などが多いと思います。
言われた子ども、あるいは、かつて子どもだった私たちは、「学んだ知識が将来生かされているように見えないけどなあ」、「将来役に立つのかなあ」と思うわけです。
そう、みなさん薄々気づいているように、勉強したことが入試のあとの長い人生で何かに生かされているかと問うと、あまりないような気がします。
しかし、「集中する力」「予定を立てて取り組む力」「自分の欲望を自制する力」「やり遂げた達成感」「自分の課題を見つける力」「課題をクリアする独自の方法」などは、勉強をする中で身につけた力だと思います。これらの力が将来に役立っているわけですね。
つまり、勉強することは「目的」なのではなく、こうした力をつけるための「手段」なのだと考えると、とても合点がいきます。これは、いろいろな先生方とお話して私が1番納得した答えでした。
そう考えると、集中力をつけるために、何も"勉強"でなくてもいいのですね。だからアスリートや芸術家になる子は、机の上の勉強でなくても、自分のすべきことの中から、集中力などの力を身につけているわけです。
「勉強」を目的にするのではなく、「集中力」をつけさせたいと考え、子どもが熱中する物を応援すれば、より効率もいいのです。その中から学ぶ力は本物です。しかも親もイライラせずにすみますよ。
子どもの「好き」を「学び」に変える親の言葉
では、親はどのように子どもの熱中していることを応援すればいいのか、具体的な場面で考えてみましょう。
公園でアリをずっと見ている子どもがいたとします。親は、「もう、帰るよ」とやめさせるのではなく、下記のポイントを意識してみてください。
1.予測と原因を考えさせる
「アリさん、どこに行くのかな?」と予測と原因を考えさせるヒントを投げかけてみましょう。
2.調べることの面白さを伝える
子どもの予測が外れたら、「アリさんの好きなものってなんだろうね」と調べることの面白さを伝えて、一緒に調べましょう。図鑑やネットやYouTubeなど、わからないことは納得するまで調べることを一緒に学ぶのです。
3.五感で感じる体験を作る提案をする
「明日、もう1度、アリさんを捕まえに行って、飼ってみる?」と五感で感じるような提案をしましょう。優しく触らないとアリが潰れてしまうことや、くすぐったいことも体験してみる機会を作ります。
4.知識の幅を広げる
ヒアリなど危険なアリの種類や生態を学びましょう。
5.思考力を養う
絵に描いたり、図を書いたりして、より深く考えてみるクセをつけましょう。
6.アウトプットさせる
体験し学んだことを第3者(パパや、じいじ、ばあば)に教えてあげましょう。
このように、アリひとつとっても、そこから学び経験し考えることはたくさんあります。子どもが好きなことや興味を持ったことを応援できるといいですね。
もちろん、クッキー作りやネイル、ゲームでもかまいません。子どもが興味を持ったことに親も一緒にはまり、深まるような提案をしてみることで、様々な力を育むことができると思います。
この長期休みの間に、集中する力などを育むことによって、後に勉強にも生かされるというわけです。よく聞く東大生が小さい頃親に勉強しなさいと言われたことがないというのは、ほったらかしだったということではなく、子どもが興味を持ったことを親が応援してくれた結果、勉強にも必要な力を育めていたからだと思います。
「勉強しなさい!」という代わりに「集中力をつけてるね!」「最後までやり遂げる力をつけたね!」と子どものしていることを応援する言葉をかけることで、 今育むべき力をしっかりつけましょう。