「取引先で出されたお茶を飲むのは失礼」「ハンコは上司の方へ傾けて押す」「メモは紙の上に取らなければならない」「了解ですという言い方は失礼」……etc。いくらなんでも気にしすぎではないかというような気遣いの仕方をビジネスマナーとして耳にすることも多々あるでしょう。中にはわざわざ非効率なことを強いられて仕事の妨げとなったり、相手の時間を奪ってしまうような内容のものもあったりしますよね。
いくら形式的に「礼儀正しく」振る舞っていても、中身が伴っていなければ仕方がありません。本来、相手のことを気遣う心が日常の中の行動に表れているのが大切なのであって、過度にへりくだるような行いは、逆に「相手のために自分はここまでしているのだ」「自分ほど謙虚なものはあるまい」という慢心の表れともとらえられます。
例えば「出されたお茶を飲まない」という行いは、自分が謙虚であることを示すために、お茶それ自体や、お茶ができるまでにたくさんの人がした仕事、用意してくれた人の気遣いや時間などを無駄にしている(こねたもの風に言えば「殺生をしている」)と考えることもできます。
言葉尻をとらえたり揚げ足をとったりするように「この言い回し・行いは失礼だ」と細かく指摘するのも、形式だけ礼儀正しく振る舞って外面を取り繕うのも、月を差す指を見て月を見ない(言葉などの形式にとらわれて本質を大切にしない)というもの。
マナーについてさまざまな情報が飛び交いますが、それが一体誰のための行いなのか、本当に相手のためになっているのか、しっかりと吟味したうえで自身の振る舞いを決めたいものです。