みなさんは《起業》と聞くと、どんなイメージを持ちますか? 「楽しそう」「やりがいがある」「自由」などのいいイメージでしょうか? 反対に「大変そう」「リスクが高い」「不安」など、悪いイメージのそれぞれを持つ人もいるかと思います。
今までの社会であれば、起業は大きなリスクを孕んでいたかもしれません。しかし私は、それは幻想にすぎないと考えています。高度経済成長期や、バブル時代に培われた「終身雇用」というシステムが、皆さんの脳裏にずっとあるだけで、「実際の世界」は違っていることを身を持って体感しているからです。
実際、私はサラリーマン生活をしていたときより、時間的にも、精神的にも金銭的にも恵まれています。もちろん、それは人それぞれの性格や、ストレス耐性なども関係しているかもしれませんが、昭和の働き方と現代の働き方は変わってきているのです。
これから全5回にわたって、「サラリーマンが起業をするとは、どういうことなのか? 」というテーマで連載をしていきます。
大手思考の罠
これからの世の中、「大手に入社すれば勝ち組だ」という思考はとても危険です。実際、あの東芝が傾きかけていて、シャープは海外の会社に買われ、大手でも倒産してしまう世の中です。
世界経済の繋がりは年々密接になっていき、どこかで恐慌が起きれば、世界の経済は止まってしまい、世界全体として景気悪化が進んでしまいます。
日本の田舎に住んでいようが、この流れから逃れることはできません。《日本の円》という経済圏に住む限り、私たちは資産を《円》で運用し、リスクを《円》で取るという生活を送ってしまっているのです。
銀行にお金を預けているからと言って、そこで保証されるのは1000万円まで。それ以上の金額は銀行が潰れてしまえばなくなってしまいます。山一證券なども1990年のバブル崩壊の時には取り付け騒ぎで潰れてしまいましたよね。記憶に新しいところでは、2008年にはアメリカの大手であるリーマン・ブラザーズが倒産しました。
私は世界経済の中で生き残っていく方法は2つだと考えています。
《自分のスキルで食べていける状態を作る》か《資産運用ができるほどの資産を持つ》かのどちらかです。
では、《自分のスキルで食べていける状態》とはどんな状態でしょうか?
例えば会計士資格を取ること、これは自分のスキルと言えるのでしょうか? 例えばデザイナーとしてのスキルを磨いて、仕事につく。これは自分のスキルで食べていける状態と言えるでしょうか?
私は、「直近10年は大丈夫でしょう。でもそのあとはわかりません」と考えています。AIの台頭が騒がれ、ちょっと前までは「芸術だけは人間に残された分野だ」と言われていたにも関わらず、「AIによる作曲」まで出てきてしまっています。雑誌では、「10年後にAIに取って代わられる職業」の中に「弁護士・会計士」まで出てきてしまっている始末です。
私が考えるAI世界で生き残れるスキルは3つ。
1:ITを使う側のエンジニアになる。
2:《コミュニティ》を持つ人間になる。
3:ITを使い、コミュニティを持ち、新しい価値を生み出す《起業家》になる。
このどれかの状態になっていれば、数十年後の未来も生き残っていけると思います。
《起業》と聞くと、みなさん「難しそう・リスク高そう・怖そう・大変そう」と思われると思いますが、戦略的にやっていればそんなことはありません。楽しみながら楽にできると思います。もちろん会社を辞めて起業一本に絞ろうとしたら大変だしリスクは高いと思います。
しかし、サラリーマンでいる今、できる限りの準備をしておけば、リスクを最小限に抑えて起業することが可能です。しかも、それが数十年後のAI時代を生き残れるツールにもなるのであれば、楽しさという面からも、生き残るという面からも、チャレンジしてみる価値があると思います。
起業がうまく行ってくれば、ある程度お金も貯めやすくなってきます。そのお金を資産運用という形で回していけば、日本円だけで資産を持っている状態は脱却できるので、将来的なリスクの軽減になります。資産運用については、ここでお話しするよりもたくさんの専門書が出ていますので、そちらをご参考になさってください。
ビジネスのライフサイクルとは?
話を戻して、「大手が危険」というのをビジネスのライフサイクルで少しご説明します。事業ライフサイクルと言いますが、事業ライフサイクルとは、事業規模の変化を「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つに分けて、S字カーブで表現したものです。
事業や製品の特性によって、その期間は変化しますが、下記のグラフのように、どんどんと短命化してきています。
つまりどういうことか?
大手は、常に新しいヒット商品を生み続けないと、大きくなってしまった固定コスト(人件費)を抱えきれなくなってしまうのです。これはベンチャーでも同じです。1個のヒット商品が生まれただけで会社の規模を大きくしすぎてしまうと、その後数年でヒット商品のライフサイクルが終わったときには会社が潰れてしまうということはよくあります。
この中で生き残っていくためには、会社のために生きるのではなく、プロダクトベースで自分の力を発揮できる分野を作っていくことが肝心になります。
《起業》という選択肢をすると、あなたは《社長》になるわけですが、社長として生きていくには、《新しい価値を生み出す能力》や《組織力》が必要です。上述したAI世界で生きていくスキルのひとつ「コミュニティを持ち、新しい価値を生み出す《起業家》というスキル」です。
今までにないサービス・価値はアイディアから始まります。つまりは「サービスのビジョン」を考え出すことが、ひとつ目のスキルです。新しい価値を生み出す能力のファーストステップですね。
大手の社長だとわかりませんが、ゼロから起業していると、ビジネスに必要な全てのスキルが身につきます。ビジョンを考え出すファーストステップに始まり、その後ビラも作らなきゃいけないし、HPもなんとか自分で作れないか、マーケティングフレーズを考えたり、サービスを作ったり、お客さんへの説明の仕方を考えたり、経理や法務も勉強します。
その上で、売上が上がってビジネスが回ってくると、それぞれのスキルのプロたちに仕事をお願いするようになってきます。これが2つ目の社長スキルである組織力です。より大きなサービスを作ることができるようになります。
この2つのスキルが揃えば、たとえ1回目の起業に失敗したとしても、2回目の起業時には1回目の失敗を活かしながら成功することができるでしょう。2回目の起業に失敗したとしても、大企業の中で新規プロジェクトを提案するなど、自分のいる価値を出すことができます。
AI時代、事業ライフサイクルを考えると、《起業》という道が一番安全そうに見えるのは私だけでしょうか?
私はあなたに今の会社を辞めて、起業して欲しいということではありません。会社を続けながら起業するというのはどうでしょうかというご提案です。
これだけ安全だと言っても、みなさんピンとこないと思いますので、次回は、「起業ってこんな感じでもできるんですよ〜」という、僕のような起業家が実際に行っていることをみなさんにご紹介したいと思います。
■ 執筆者プロフィール:小茂鳥 雅史(こもとり まさふみ)
株式会社スパルタ英会話 代表取締役
慶應義塾大学院卒業後、外資系証券会社モルガン・スタンレーMUFG証券に入社。退職後、NPO法人JAVO(ボランティア証明書発行機関)を発足。2年後、《語学で「夢はかなう」の実現》を理念とし、3ヶ月短期集中型の英会話教室を創業。わずか3年で4本のテレビ出演、 年商を3億円企業へ。会社規模を拡大させ、世界をひとつのビックファミリー にという想いのもと、語学、IT、金融、人材などの6つの会社を束ねる株式会社We&を設立し、代表取締役に就任。
■株式会社スパルタ英会話