おどろくほどに落ちるんだ
子供の時分、2日に一度は駄菓子屋へ行った。舐めると猛烈に泡を発するコーラ風味のタブレット (本当は水に溶かすものらしいが)、紐を引くと大玉が当たるかもしれない飴、小さなカップに入ったヨーグルト風味のクリームなどなど。あわせて爆竹やらロケット花火やらを買い込み、昆虫の尊い犠牲のうえに成り立ついけない爆破実験をよくやったものだ。
硬貨をコロがして貯金する、「「人生銀行 CoinCoron(コインコロン)」 |
駄菓子屋を友人との待ち合わせ場所にしたとき、よく時間つぶしに遊んだのが「10円玉ゲーム」。パチンコ台のような盤面の両端に6つほど (だったか?) 取り付けられた金属棒で、途中の穴に10円玉を落とさないよう、投入した10円玉を弾くというもの。成功すればガムをGETできるが、力加減が微妙で、強すぎるとコースを外れたり途中の穴に落ちたりして、かなりの確率でなけなしの10円は没収。ああやらなきゃよかった、と後悔するが性懲りもなく挑戦してしまう愚かさよ。
学習効果のなさは少年時代からだったか、とまたしても宿酔いの頭で量販店の玩具コーナーを歩いていると、一瞬デジャヴが。目に入った製品の名は「コインコロン」、投入した硬貨が転がっていくタイプの貯金箱。硬貨を弾く金属の棒はないが、硬貨が転がるコースを自分で設計できる点が琴線に触れ、衝動買いしてしまった次第。
コインの音、たからかに
このコインコロン、タカラトミーが2006年末に売り出した「人生銀行」のシリーズ商品。初代人生銀行は、貯金することで"中の人"を育て、その様子を内蔵の液晶モニタで楽しむ、という育てゲー的な要素がウケてヒット商品に。2007年6月には、空きペットボトルに取り付けて使う1円硬貨専用の「人生銀行 ONE」、9月には目覚まし機能を持つ「人生時計」と立て続けに発売。2007年末に発売されたこの製品、育てるキャラもいなければ液晶モニタも装備されていないが、人生という人類永遠のテーマを背負った製品なのだ。
箱を開けると、穴が開いたプラスチック製のパネル2枚と左右のスタンド、パネルを支えるためのアーム、硬貨が転がるレールなど、多数の部品が目に入る。とめ具はランナーから切り離さなければならないため、組み立てに着手できるまでには10分ほどの時間を要するが、それ以外は非常にシンプル。硬貨が万有引力の法則に従い受け皿 (コインポット) へ落ちるよう、パネルに部品を取り付ければいい。
レールは5種類あるが、レールと呼べるほどの長さはなく、いずれも硬貨のサイズに応じた穴が開いている。最大の直径を持つ500円硬貨用はなく、最後まで転がり落ちた硬貨は500円に仕分けられるという仕組み。ただし、ただふるい分けられるだけではなく、坂道を落ちたり回転したり……といった硬貨ごとのギミックが用意されているので、見た目も音も賑やかになる。
部品の取り付けは、レールやギミックの背面にある白い突起をパネルの穴に差し込み、それをクリップで留めることで行う。クリップの"留め加減"はユルく、触れた程度で部品の角度が変わってしまい、硬貨が途中で止まってしまうこともあるなど、カッチリピッタリという雰囲気ではない。箱には「対象年齢6才以上」のシールがあり、実際組み立てに力は不要だが、ランナーからパーツを切り離すなど準備段階では、プラモデルを組み立てられる程度の器用さが必要だ。
10円玉のメカ目指し、世界の果てまで……?
10円玉ゲームの感覚でコインが転がり落ちる……かと期待して購入したコインコロンだが、筆者の評価は少々厳しめとならざるをえない。なぜなら、落下から次の落下までの「間」とでも言おうか、落ち方の情緒が不足しているのだ。レールが短いというかないに等しく (実際のところ硬貨振り分け用の穴となっている)、せっかく設けたギミックも経路が短すぎアッー! という間に通り抜けてしまうため、余韻に浸ることは難しい。
コインを振り分ける精度も、高いとはいえない。100円玉が10円のところで落ちたり、10円玉が最後の500円のところまでたどりついてしまったり。ギミック (ループスライダー) から10円玉が飛び出したことも。ギミックも特定の硬貨専用のため、カスタマイズ性は期待したほど高くない。コインポットも各硬貨十数枚が限度で、鍵をかけるどころかほぼむき出し / 丸見え、貯金箱としての実用性は期待できない。
とはいえ、レールの取り付け位置はある程度自由で、ベースパネルを縦 / 横方向に並べ替えることで、コースデザインにもバリエーションが出てくる。部品は総じてサイズが大きいため、やはり自由度が高いとはいえないが、ピタゴラスイッチ (NHK教育の"落ちモノ好き"バイブル的番組) 的なものを自分で作りたい、という欲求をある程度満たしてくれることは確かだ。
ついでに意見具申してしまうと、この製品も「SPACEWAP desktop」のように、コースを決めうちしてしまってはいかがか。そうすれば部品の組み合わせを考慮しなくて済むので、10円玉ゲームのようなギミックも可能になるだろうし、レールを長くとることもできるだろう。それにつけても、10円玉ゲームの懐かしさよ。どこへ行けば、あの物理的にも経済的にも"お金が落ちて行く"感覚を体感できるのだろう?
○タカラトミー 「人生銀行 CoinCoron(コインコロン)」 |
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機能 | ★★ | |
価格 | ★★★ | |
楽しさ | ★★ | |
怪しさ | ★★★ | |
衝動買い | ★★★★ | |
TOTAL | ★★ |