ポインティングデバイスを考える
思うに、PCのポインティングデバイスは停滞している。ボール方式から光学式へ、ワイヤードからワイヤレスへという進化はあるものの、センサーで移動を検知して距離を測定するという構造は、マウスの原型が登場した1960年代から大きく変わらない。タブレットやトラックパッドなどのデバイスも普及しているが、2次元の移動距離を手の動きで指示するという基本コンセプトは変わらず、いわばマウスの代替装置だ。
ゲームコンソールの分野はといえば、ATARIなど米国製ゲームコンソールが元気な頃は、突き出た棒を机に固定させて使う「ジョイスティック」が全盛だったが、日本製ゲームコンソールの台頭に伴い、両手に持ち操作するパッドタイプの「(ゲーム)コントローラ」に取って代わられた。ジョイスティックは、フライトシミュレータなど一部のゲームタイトルでは今も欠かせない存在だが、現在のコントローラは1983年発売のファミリーコンピュータ用コントローラ - 十字ボタンとA / Bボタン - の亜流ともいえるデザインが主流。依然マウスが主流のPCとは異なり、据置型のジョイスティックから両手支持のコントローラへと、トレンドが変化しているのだ。
同じく任天堂から2006年に発売された「Wii」も、トレンドメーカー的な性格を持ち合わせているゲームコンソールだ。前後左右そして上下という3方向への加速度の変化を検知する「モーションセンサー」の搭載により、振り回したりひねったり、従来のコントローラでは難しい操作が可能になった。この新しいコントローラの登場により、目新しい操作性を備えたゲームタイトルも続々登場、にわかに家庭用ゲーム市場が活気づいたのは記憶に新しい。
そして昨年末、Wii向けに新たなポインティングデバイスが。その名も「バランスWiiボード」、左右独立したセンサで重心・体重移動を検出、ヨガやサッカーのヘディングなどのゲームを楽しめる。いわば全身を使うポインティングデバイスであり、スキーなど体のバランスが重要な意味を持つスポーツを家庭用ゲームで楽しめるようになったのだ。
そのWiiボード、Wii本体とはBluetoothで通信する。PCのポインティングデバイスとしても利用可能で、その機能を生かしたソフトも公開されている。筆者はWii本体を所有していないが、ボード上で足踏みすればGoogle Earth上を"歩く"ことができる「WbalanceGE」やりたさに、Wiiボード単品を購入してしまった次第。
まずはペアリング
この「WbalanceGE」、早い話がWiiボードをGoogle Earthのポインティングデバイスとして使ってしまおう、というアプリケーション。動作環境はWindows XP SP2 / Vista、もちろんPC側にはBluetoothデバイスと、Google Earthが(軽快に)動作するマシンスペックが必要だ。クドいようだが、Wii本体は必要ない。
筆者が利用したマシン、実はMacBook Pro。Mac OS X 10.5 (Leopard)から標準装備のデュアルブートツール「BootCamp」を利用し、Windows XP SP2 Home Editionをインストールして使っているのだ。自分のマシンで使えれば……と悔しがっているそこのMacユーザ、BootCampでキチンと動くので安心してほしい。
事前準備は、Google EarthのインストールとCOM登録 ("C:\Program Files\Google\Google Earth\googleearth.exe" /regserver
の実行)、そしてペアリング。Windows XPの場合、コントロールパネルの「Bluetooth」ペインからウィザードを開始し、バランスWiiボード裏のSYNCボタンを押しつつ操作を進めれば、ペアリングはかんたんに完了するはず。なお、ペアリングはWbalanceGE側から行うこともできる。
利用方法は、Google Earthで歩きたい土地を表示してからWbalanceGEを起動、[Earth]メニューの[開始位置設定]項目を選択し、Wiiボードに乗ればOK。そのとき、「建物の3D表示」オプションを有効にしておくことがポイント。そうすれば、Googleにポリゴンデータが蓄えられている街を、存分に闊歩できるのだ。
Wii本体なしでもイケますよ!
筆者が"散歩"に選んだ場所は、隗より始めよ、というわけで地元・横浜の「みなとみらい地区」。自宅から車で20分の位置にあり、よく食事に訪れる勝手知ったる土地だ。Google Earthには、ランドマークタワーや大観覧車(コスモクロック21)のデータが収録されており、彼の地の雰囲気もなかなか出ている。
WbalanceGEで"散歩"が始まると、Google Earthの視点はズズズイッと地上数mの位置まで下がる。あとはボード上を足踏みすると、そのとき向いている方角へと前進を始める。障害物判定はないので、建物の有無は関係なし、ただ前進あるのみ。紅葉坂交差点からインターコンチを目指し歩いてみたが、道どころか壁や階段すら気にする必要もなく、ロイヤルパークをかわしパンパシを突き抜け、あっという間にパシフィコ付近に到達した。
ところで、方向転換には少々テクが必要。片足をWiiボードの前方に置き、もう片方の足を後方で足踏み(靴のつま先をトントンやる要領だ)すれば、後方の足の方向へ曲がることができるのだが、慣れるまではなかなか思うようにいかない。両足がWiiボードから離れると、駆け足と認識され歩幅が広くなるので、せっかちな向きはジャンプ気味に歩くといいかもしれない。
このWbalanceGEとWiiボードの組み合わせ、とにかく面白い。WindowsマシンとBluetoothデバイスさえ用意できれば、あとはすべて無料ということもあるが、自分が訪れたことのない街を散歩できるのはうれしい。さて、みなとみらいも飽きてきたので……フォロ・ロマーノでも散歩してみようかしらん?
○任天堂「バランスWiiボード」 | ||
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機能 | ★★★★ | |
価格 | ★★★★★ | |
楽しさ | ★★★★★ | |
怪しさ | ★★★★ | |
衝動買い | ★★★★★ | |
TOTAL | ★★★★★ |