精米したてが一番おいしい
大学進学で親元を離れるまで、家でマズい米を食べた記憶がない。食にこだわるような親ではないが、米は知人の農家が自家消費用に栽培したものを分けて(もちろん代金を払って)もらっていたため、常にコシヒカリ100%、炊きあがった米はいつもいい香りがした。1995年施行の改正食糧法以前の話なので、いわゆる計画外流通米を常食していたことになる。
外食したときなど、それまでもマズい米を食べる機会はあったが、なぜマズいのか原因を突き止めようと考えたことはなかった。品種あるいは新米 / 古米の違いか、はたまた炊飯器の性能差か、といった程度の認識はあったものの、米経験値の上がった今、精米の時期が重要なのだということに気が付いた。
実際、どんな旨い米でも精米から1カ月ほど過ぎれば、確実に味は落ちる。コシヒカリでもササニシキでも事情は同じ、精米から日が経つにつれ香りは薄れ、粘り気も減少する。そういえば、実家でも時折どこかへ精米を依頼していた。コシヒカリという銘柄のおかげもあるだろうが、旨さの秘密は「精米したて」にあったのだ。
新年を迎え、仕事始めの前にしばし黙考、1つの真実に気がついた。仕事のヤル気を促進するのはなにより食事、そして酒。それに旨い米は欠かせないと。ふと我に返ると、ツインバード工業製の精米機「精米御膳 MR-D720」を購入していた次第。
家庭用精米機の特徴を考える
MR-D720について語る前に、現在の精米機事情をかんたんにまとめてみよう。どのような方式があるか、どうようなことができる / できないか、精米機の購入を検討している向きには参考になるはずだ。
精米方式
家庭用精米機は、圧力式と撹拌式、圧力循環式の3種に大別される。圧力式は精米時の"割れ"が起こりにくいが、温度上昇により風味が落ちるといわれる。撹拌式は温度上昇しにくいが、動作音が大きく、割れが発生しやすいのが難点。米穀店の精米機にも採用されている圧力循環式は、割れが発生しにくく温度上昇も少ないため、3方式中ベストといえるが、価格もそれなりに高価。
+αの機能
「玄米からヌカを取り去る」ことが精米機本来の目的だが、家庭用精米機には消費者の目を引くさまざまな+αの機能が用意されている。ヌカの取り去り加減を調節して栄養分を残す「分づき」、ヌカは取り去るが栄養価の高い胚芽部分を残す「胚芽精米」、米とぎが必要ないようにする「無洗米」、精米から時間が経過し風味が落ちた米を酸化被膜除去により復活させる「白米みがき」が、その好例だろう。
メンテナンス性
見落としがちなのが、この部分。精米、すなわち玄米から白米を精製する過程では、玄米から約10%ものヌカが発生する。ヌカは当然粉末状であり、「ヌカ臭い」といわれるほどの臭気を発することから、掃除にはそれなりの手間とコツが必要。ヌカで汚れた部分を取り外しでき、可能であれば水洗いOKな機種が一般消費者には求められている。
精米は一日にして成らず
上記の3項目を検討したうえで、筆者がベストと判断したのがMR-D720。ツインバード工業が擁する精米御膳シリーズのフラッグシップ機だが、量販店での実売価格は2万円以下とお手頃。撹拌式のため騒音と割れ米は覚悟のうえだが、分づき機能に胚芽精米機能を備えていること、米が接する部分のほとんどが水洗いOKなことを評価した。
無洗米機能がないことも、筆者が評価した点の1つ。いわゆる「米とぎ」は、一般的な精米では取り切れない「肌ヌカ」を洗い流す作業のことだが、これを機械で (美味しく食べられるよう) 落とせるようになったのはつい十数年前、東洋精米機製作所が「BG精米製法」を確立してから。よく考えてみれば、かなりのノウハウが詰め込まれた精米技術であり、それが家庭用精米機でやすやす実現できるはずもない。無洗米に対応していますと謳わないところに、メーカーの良心を感じたわけだ。
肝心の精米だが、実にかんたん。プラスチック製のぬかボックスと金属製の精米カゴ、そしてかくはん棒をセット、玄米をカップで量り投入。分つき調整レバーで精白度を決定したあと、精米量ボタン (1~5合) を押し、最後にスタートボタンを押す。あとは自動的に機械が停止するまで待つだけ。
精米に要する時間だが、分つき調整レバーを「白米」にしたときの目安として、5合で約5分30秒、3合で約8分、2合で約9分。米同士で研ぎあう効果のためか、量の多いほうが精米時間が短くなる傾向らしい。
しかし、最初のテストでは、かなりの割れ米が発生してしまった。割れた米からはでんぷん質が流れ出るため、炊きあがりの風味が損なわれてしまうのだ。ううむ、使った玄米 (新潟・魚沼産のコシヒカリ) が柔らかめだったか、いきなり「上白米」に設定したのがマズかったか……米の品種や収穫からの経過日数により、精米時間を微調整しなければならないようだ。
というわけで、炊きあがりのレポートは次の機会に。精米にこだわるのならば炊飯にもこだわるのは道理、適当な炊飯器を見繕い、割れ米が出ない精米テクを習得したうえで皆さんに報告させていただきたい。
○ツインバード工業 「精米御膳 MR-D720」 | ||
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機能 | ★ | |
価格 | ★★★ | |
楽しさ | ★★★★ | |
怪しさ | ★★ | |
衝動買い | ★★★★ | |
TOTAL | ★★★ |