買っちゃったも~ん
師走の風物詩「お歳暮」は、正月に祖先の霊を迎えるためのお供え物という日本古来の慣習が起源。夏に行われる「お中元」は、道教の儀式である三元節が日本に伝わり、そのうち盂蘭盆会の時期と重なる中元が贈り物をするイベントとして定着したもの。いずれも美風とまでは言わずとも、後世へ残してもいい習わしだ。
話は変わって「自分へのご褒美」。いわば自分宛の中元・歳暮だが、この言葉になんとなく腹立たしさを覚えはしないか? その理由をあれこれ考えたところ、往年のTVCMを思い出した。そう、スウィート・テン・ダイヤモンド。「買っちゃったも~ん、主婦がんばってるも~ん」というアレだ。思うに、このCMの登場と前後して、贅沢や無駄遣いを自分への褒美だとして正当化する風潮が広がったのではなかろうか。
だが漢<おとこ>なら、言い訳をすることなかれ。欲しいから買う、買うために働く、斯くありたいもの。というわけで、11月中旬の発売開始直後に捕獲してしまいましたよ、バンダイの「SPACEWARP desktop」。背後から妻の冷たい視線を感じるが、買っちゃったも~ん(以下略)。
30分で組み立て完了
SPACEWARPという製品は、"転がり系"玩具の大御所的存在。初代は1983年の発売開始から約4年の間に累計100万個を販売した、大人にも支持されたヒット商品だ。その後絶版となるが、消費者リクエスト型物販サイト「たのみこむ」を通じた働きかけも奏功し、2005年に約20年ぶりの復活を果たした。
製品の趣旨だが、敢えて説明するまでもないだろう。ジェットコースターのように敷かれたレールの上を、万有引力の法則に従い鉄球が転がるというそれだけのものだが、眺め続けても不思議と飽きない。実売価格も約4千円とリーズナブル、飲み事を一回我慢すれば買えてしまう。
筆者も復活後初の限定版を購入したクチだが、組み立ての難しさには閉口した。ベースパネルにアルミシャフトを立て、そこにアームを取り付けナイロン製のレールを敷いていくわけだが、調整がとても難しい。鉄球が転がる勢いを考えてなければならないし、不用意に幅を広げると鉄球は落ちてしまう。筆者の場合組み立てに数日を要したほどで、器用な人はともかく、楽しむにも相当の気合いが必要なことは確かだ。
今回の「SPACEWARP desktop」は、その難しさを一気に引き下げた入門版。レールはプラスチック部品をつなぎあわせる形式となり、設計の自由度は失われたが、30分もあれば組み立てられる手軽さを実現した。設置には幅30×奥行き15×高さ23cmの空間があればよく、場所もとらない。
転がる球をぼーっと眺める至福のひととき
SPACEWARP desktopの箱を開けると、下まで転がった鉄球を上へ持ち上げるエレベータと、袋詰めされたレールが目に入る。これを説明書どおり組み立てれば、大人も楽しめる「からくり仕掛けの鉄球箱庭」の完成だ。接着剤もネジ回しも必要なし、ジョイント部を重ねて捻ればレールを連結できる。
透明なレールには、A4やC1といった型番が刻印されているので、初めてでも迷うことはない。ただし、鉄球が転がるスピードに緩急が生じるよう設計されていることもあり、ただレールをつなぐだけでは問題が生じる可能性大。あくまで「説明書そのまま」に作業することが肝要だ。
SPACEWARP desktopのコースは2つ、エレベーターの頂点で左右に分岐するところから始まる。エレベーター内の球が載るところには、上に突起があるものとないものがあり、その有無により頂点で振り分けられる仕組み。時間差で異なるコースを転がるよう、うまく工夫されているのだ。
球種が鉄の「鉄球」と、夜光塗料入りプラスチック素材の「夜光球」の2種類用意されていることも面白い。鉄球のほうが夜光球よりわずかに大きく重量もあり、転がる速度や音に違いがでるため、二粒で二度おいしい(?)感じだ。大きさの違いで球種を分別管理しているので、背面のツマミを回転させるだけで切り替えることができる(球種の混在は不可)のもうれしい。
とにかく、SPACEWARP desktopは"転がり系"玩具好きには堪えられない一品だ。基本設計が鉄球で行われたためか、ときどき夜行球がエレベーターの排出部に詰まるトラブルが発生するものの、そのストレスを補って余りある爽快感が得られるはず。ウイスキーなどチビチビ飲りつつ、転がる球をぼーっと眺めるのも一興と考えるが、いかがだろう?
○バンダイ「SPACEWARP desktop」 | ||
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機能 | ★★ | |
価格 | ★★★★★ | |
楽しさ | ★★★★★ | |
怪しさ | ★★ | |
衝動買い | ★★★★★ | |
TOTAL | ★★★★★ |