何故キーボードにもワイヤレスなのか

いまや一般化したワイヤレスマウス。多くのPCユーザにとって、ケーブルのないことがいかに快適か、煩わしくないかを教えてくれた初めての入力デバイスだと思う。時折バッテリーを交換しなければならない面倒はあるものの、それを補って余りある自由度を与えてくれる。

入力デバイスの分野におけるもう一方のメジャープレイヤーであるキーボードはといえば、ワイヤレス化はそれほど進んでいない。固定した状態で使用するため、ケーブルに煩わされる局面が少ないというそもそもの必要性の低さも原因のはず。

とはいえ、その状況はここ1~2年で変わりつつある。Bluetoothチップを搭載したPCの普及により、Bluetoothで通信するタイプのワイヤレスキーボードが増加したのだ。機器間の距離は最大10m(新Apple Wireless Keyboardは9mが推奨範囲とされている)と通信範囲が広く、障害物にも強いBluetoothは、通信ポート同士を向き合わせる必要もないことから、従来の赤外線方式(IrDA)に比べると格段に扱いやすい。消費電力もIrDAより小さいため、バッテリーの交換頻度が低いという利点もある。

そこに出ました、新Apple Wireless Keyboard。MacBook風キートップはともかくとして、Bluetooth接続で小さく、しかも薄いボディは、ワイヤレス派の筆者にとってまさにストライクゾーン。8月の発表直後にUS配列タイプを予約していたが、出荷時期遅延により10月に入りようやく到着、遅ればせながら本日当コラムにて紹介する次第。

新しいApple Wireless Keyboard(写真はJIS配列)

アップル製品らしく厳重に梱包されている

裏側にはアップルマークが

初代Apple Wireless Keyboardに載せると、コンパクトさが一層際だつ

キートップを外したところ。パンタグラフの構造はワイヤードと共通だ

MacBook Proのようなギミックが

喜び勇んで梱包を解いてみると……そこに現れたのは一面の銀世界ならぬアルミニウム。酸化皮膜処理された表面は、触れればほんのり冷たく、見れば目に涼しい。最薄部3.4mmという薄さのキーボードパネル下には、一見意味のない三角形状のスペースが生じているが、これもデザインのうちなのだろう。

特筆すべきは、側面から眺めたときのシルエット。ファンクションキー斜め下に円筒形のチルトスタンドがあり、そこがバッテリー収納エリアとスイッチを兼ねているのだが、そのバランスが絶妙なのだ。同時に発売されたワイヤードのApple Keyboardは、チルトスタンドが円筒形ではなく、USBコネクタにあわせた長方形となっているが、どちらが優美な雰囲気を醸し出しているかは一目瞭然だ(個人的見解の押しつけで申し訳ない)。

ワイヤレス(上)とワイヤード(下)とでは、チルトスタンドの形状が異なる

ちなみに、バッテリーは単三乾電池×3。蓋には切れ込みがあり、硬貨などで回転させれば乾電池を挿入できる。とりあえずは同梱されていたアルカリ電池を使用したが、今後は二次電池を6本用意して順に使い回そうと考えている。

バッテリー挿入口は硬貨で開けることができる

ところで、右上の電源ボタン付近にあるステータスLEDは、いかにもAppleな仕上がりだ。ふだんは参加皮膜処理された銀色の部分に溶け込み見えないが、パワー・オン時は緑色に点灯する。MacBook Proのときも感じたが、オーナーの心をくすぐる心憎い演出といえる。

点灯していないときはまったくそれと気がつかない、ステータスLED

MacBookと同じ? いえ、違います

同時に発表されたワイヤードとの違いだが、USB 2.0ポートとテンキーが省略されているほか、ファンクションキーの数(ワイヤードはF1~F19、ワイヤレスはF1~F12)など、構成はかなり異なる。ちなみにApple Storeでの価格は、ワイヤードが6,400円でワイヤレスが10,200円だ。

ファンクションキーには、ExposeやDashboardなどMac OS X特有の機能がアサインされている

2003年9月発表の初代Apple Wireless Keyboardと比較しても、キーレイアウトが一新されたことがわかる。ファンクションキーにはMac OS Xの機能が割り当てられ、F1とF2は順に輝度調整、F3はExpose、F4はDashboard、F7~F9はiTunesの操作用、F10~F12は音量調整用となっている。なお、ファンクションキーを一般的な設定で使用する場合には、新設されたFnキーを併用すればいい。

カーソルキー横の[enter]がないことが、MacBookとの大きな違い(写真はUS配列)

MacBookとの配列と同じかといえば、そうでもない。JIS配列の場合、MacBookではカーソルキー横から左方向へ[enter]、[fn]、[かな]、[SPACE]の順となっているが、新Apple Wireless Keyboardでは[fn]、[かな]、[SPACE]と、[enter]が省略されている(JIS配列の左下隅は[caps]だが、US配列では[fn]が配置されている)。Numericモードが省略されていることは、決定的な違いといえるだろう。なお、カーソルキーの表面には方向を示す三角形しか刻印されていないが、Keyboardソフトウェアアップデート1.2を適用すると、MacBook同様に[fn]キー併用でページアップ/ダウンとhome/endが使えるようになる。

ところで、新Apple Wireless Keyboardはその薄さゆえに、既存のパームレストが利用できない。肘から掌底までベタッと置いたまま手首を曲げず、指先だけでタイプする格好になるため、ある程度の慣れは必要だろう。そして慣れる頃には、ワイヤレスキーボードの便利さが実感として理解できることと思う。

裏側には滑り止めが配置されているので、当初の想像よりもガタつかなかった

○アップルジャパン
「Apple Wireless Keyboard」
機能 ★★
価格 ★★★★
楽しさ ★★★
怪しさ
衝動買い ★★★★★
TOTAL ★★★★