近所のスーパーの店頭に、ニュージーランド産のキウイフルーツが並ぶ季節になった。現地では、どんな人たちが栽培に携わっているのだろう?キウイのあれこれを学ぶため、ニュージーランドまで飛んだ。
■キウイ料理をいただく
ニュージーランド北島にあるベイ・オブ・プレンティ在住のジェス・ソーンズさんは2児の母であり、管理栄養士としても多方面で活躍する人物。”健康オタク”を自認しており、キウイフルーツを取り入れた料理レシピなども数多く手掛けている。そんなジェスさんの自宅で、ニュージーランドの食文化について話を聞いた。
「ニュージーランドの先住民であるマオリに受け継がれたHangi(ハンギ)は、塊肉、ジャガイモ、かぼちゃなどを土に埋めて蒸し焼きにする料理。現在も大きなパーティ、あるいは結婚式などで提供されます。またイギリスによる植民地時代の影響が残り、現在もオーブン料理、たとえばローストビーフなどをよく食べます。あとは地中海料理、南太平洋料理など、海外から入ってきたフードカルチャーも定着しました」とジェスさん。
ご自宅はパパモアビーチが近い、ということで「食欲も落ちる夏期には、簡単なフィッシュ&チップスを新聞にくるんで海辺で食べます。海を見ながらバーベキューすることもありますよ」と付け加える。
キウイについては「ニュージーランドから海外に輸出されている、最も重要なフルーツのひとつです。健康面でも非常に大切な役割を果たします。腸の健康(便通改善)に作用するほか、免疫を上げ、また睡眠を改善するという研究結果も出ています。個人的には、ゴールドキウイを様々な料理のレシピに採用しています」。このほか家畜を大切に育てるのが”ニュージーランドスタイル”とし、ニワトリを檻のなかで飼育することは2022年に違法となった、と教えてくれた。
このあと、特別メニューをふるまってもらった。
提供されたのは、どれもキウイを効果的に使った、見た目も鮮やかな4品。料理名を聞くと、キウイフルーツ添えのラムチョップ、フェタサラダ、キウイフルーツサルサ添えのエビケバブ、キウイフルーツとレモンカードをかけたパブロバパフェ、という説明だった。大事な栄養素を壊さないよう、どの料理のキウイにも火は通していない。それでもレパートリーにこれだけの幅を出せる、ということに感心した(そして、どの料理も間違いなく美味しかった)。
■どうやって”選果”するの?
前日、キウイ農園を営むGrowerはキウイの選果場(Packhouse)について教えてくれた。農園から運び出したキウイの品質を検査し、品種やサイズごとに箱詰めする施設だという。そこで、実際に作業している現場にお邪魔することに。
大型トラックが何台も出入りするような、大きなPackhouseの中を案内してくれたのはサイトマネージャのクリス・クレモントさん。グリーンキウイをパッキングしている最中とのことで、見ると、なるほどいくつものベルトコンベアが忙しく稼働している。
「多くの作業はオートメーション化されています。ベルトコンベアによって運ばれたキウイは、表面のブラッシングを終えてから、1個ずつ写真を撮っていきます」とクリスさん。え、写真って?写真を撮って、一体どうするのだろう?
「カラー写真と、2種類の赤外線写真を撮影します。傷などの問題がないか、規定の形をしているか、といったチェックを行っています。1個のキウイについて120~150枚は撮影します」。熟しすぎたもの、部分的に柔らかいものなども、ここで弾かれると説明する。ただもちろん、なかには機械で判断がつかない個体もある。「キウイの7~8割は機械によりgrading(等級)が決まりますが、機械では100%の判断が難しいSuspect GRADE(もしかしたらダメージがあるかもしれない個体)についてはスタッフが目視でチェックします」。
良い品質のキウイを厳選して輸出用に確保して、少し難ありのキウイは国内消費用にまわされるとのこと。どうりで、日本のスーパーには形が良いニュージーランド産キウイばかりが並んでいるわけだ...。そして最後の工程では、作業員が丁寧に手作業で箱詰めしていた。
ちなみに箱の側面には、Class(品質)、Orchard(どの果樹園で収穫されたか)、Packhouse(どの選果場で作業されたか)、といった情報がひと目で分かるラベルが貼付されていた。このPackhouseから東京に出荷されるキウイも、もしかしたらあるのかも知れない
ところでキウイの品質って、どうやって担保されているのだろう?そして気になるキウイの効能についても、関係者に聞いてきた(次稿に続く)。