毎朝、じゃがいもの味噌汁
十勝で農家の嫁として暮らし始めて、まず驚いたこと。なんと、毎朝の味噌汁の具が「じゃがいも! 」お椀の中には、一口大に切ったおいもがごろごろとたっぷり。そこに刻んだ長ネギや三つ葉、小松菜など自家菜園で採れた旬の青菜、大豆から手作りの自家製味噌……。じゃがいものほんのりとした甘さがたまらないし、青菜の緑が目にもキレイ。そしてこの一杯で、おなかが満杯になってしまうほど。ただ、サラリーマン家庭で育った私としては、豆腐や油揚げなどの味噌汁の方がさらっと食べられる気がして、嫁いだ当初はかなり抵抗がありました。
なぜ、この季節(春)にじゃがいもの話題をするのかというと、実はこの時期のじゃがいもが一番おいしいから。うちの農場では、約9ヘクタールの畑でじゃがいもを生産しています。品種は生食用の「男爵」、ポテトチップス用の「トヨシロ」、ポテトサラダ用の「さやか」など。秋に収穫したいもは、地下の室(むろ)で貯蔵。一冬越えたじゃがいもは、暖かい部屋におけばすぐに芽が出てしまうけど、でんぷんが糖分に変わることで甘みが強くなっていて、この芽を出す直前の時期が一番おいしく食べられます。
作ってみると意外と難しい
この「じゃがいもの味噌汁」。義母の味をまねて、自分で作ってみようとしたけど、これが意外と難しい。何回も失敗を重ねて、今の形にたどりつきました。
まず、味噌汁に使うじゃがいもの品種は「男爵」。昔ながらの定番で、旨みがあり、味噌汁には一番合うようです。普通の家庭であれば、2人に付き中型のいも1個で十分。いもは良く洗って皮をむき、5mm厚さのイチョウ切りにする。水にさらさずに直接鍋に入れ、蒸発分を計算して、1人当たり300mlくらいの水を注ぐ。強火にかけ、ぐらぐらと泡がでるように5、6分煮立てる(強火で煮立てることが、美味しさを引き出すコツ!)。いもが柔らかくなったら、表面に浮いた泡を取り除く。そこにだし用の煮干を1人当たり2匹程度入れて今度は弱火でじっくり2、3分。煮干のうま味が出たら煮干を引き上げる。そして、味噌を溶きいれて刻んだ長ねぎや三つ葉を入れ、再度沸騰寸前まで煮立て、アツアツをお椀に注いでできあがり。
料理を学んだ方なら、「あれ?」と思うかもしれません。なにせ、味噌汁はまず「弱火でじっくりだしをとる」というふうに習うから。でも、料理の教科書どおりに先に鰹節や煮干でだしを取ってからいもを加えると、いもがいつまでも柔らかくならず、旨みも出ません。反対に、無理に強火で煮立てると、こんどはせっかくのだしの風味が消えてしまう。だから先にいもを煮立て、柔らかくなってからだしを加えることが大切。いも本来の旨みが出るので、煮干の量は控え目で。忙しい時は、市販のうまみ調味料(「ほんだし」など)を加えても構いません。
栄養バランス抜群
今は、畑仕事の前にじゃがいもの味噌汁をぱっと食べて、すぐ畑に向かう生活に慣れてしまった私。エネルギーを補給できるのはもちろんのこと、じゃがいもにはビタミンCと食物繊維が含まれており、味噌にはビタミンB、青菜にはビタミンAがたっぷり。これ一杯で栄養バランスもばっちり。
じゃがいもとツナのチーズ焼「はごろもさんの誘惑」
そんな今が旬のじゃがいも料理をひとつご紹介。もともと、スウェーデンの代表的な家庭料理に「ヤンソンさんの誘惑」という名前の料理があります。その昔、菜食を義務づけられていたヤンソンさんが、誘惑に負けてこの料理を口にしてしまったとか……。この「ヤンソンさん」はアンチョビを使って作るのですが、日本人はアンチョビに慣れていないので、代わりにツナを使って作ってみたら、じゃがいもの甘さとツナの絶妙なコンビネーション、表面のパリパリ感がたまらない。 この冬はどれだけこの料理を食べたかわかりません(おかげでちょっと体重オーバーに)。メインのおかずにも、パーティ料理にも、お酒のおつまみにもなるので便利です。
<材料>(4人分)じゃがいも(男爵)大4個(約600g)、たまねぎ 1個、牛乳 100cc、生クリーム 100cc、ツナ缶 小1缶、バター 適量、チーズ 適量、パン粉 少々、塩・こしょう 少々
<作り方>- じゃがいもは皮をむき、3mm程度の細切りにします。たまねぎも薄切りにしておきます
- 耐熱容器にバターを塗り、じゃがいもの半量を敷き、その上にツナとたまねぎをのせ、さらにじゃがいもをのせます。ツナ缶の漬け汁は捨てずに取っておきます
- 上からツナ缶の漬け汁と牛乳、生クリームをかけ、塩・こしょうで調味します
- チーズをのせ、パン粉をかけて、250℃のオーブンで20分~30分、焦げ目がつく程度に焼きます。
じゃがいもの皮をむいたら、せっかくのでん粉質を逃がさないために水にさらさないほうが良い。ただ、男爵は空気に長い間触れると褐色に変化するので、皮をむいたらすぐに料理しましょう。
もりたまめこ(農家フードコーディネーター)