北海道の春は遅い。33ヘクタールの農場はまだ雪の下だ

長崎で生まれ、横浜で育ち、札幌で公務員生活をしていた私。自分を生かすことも殺すこともせず、公務員の鏡として、なんとか毎日を大過なくやり過ごす日々。そんな生活に変化が訪れたのは、4年前の春。職場結婚した主人の実家に戻り、農家の嫁として暮らすこととなった。

場所は、北海道十勝の清水町。経営面積33ヘクタールといえば、東京ドーム約7個分に相当する程の広さだ。
しかし、農家へ嫁ぐことの不安より、
「こんな広いところでのんびり暮らすなんて幸せだぁ!」
という喜びの方が先だった。
広いところでのんびりゆったり、とれたての素材を使った料理を楽しみながら、家族と動物に囲まれて暮らすなんて……夢に描いた理想の田舎暮らし……。

しかし、現実はそんなに甘くない。家族4人だけで東京ドーム7個分の面積を耕し、種をまき、雑草を抜いて、収穫し、出荷して収入を得る。それは並大抵の苦労ではない。「自然」というものに日々のスケジュールを振り回され、拘束される日々。都会育ちの私には、想像を絶するものだった。

かくして、「のんびり」スローフードを楽しむはずが、「ドタバタ」と走り回って暮らす毎日となった。顔は日焼けで真っ黒、体は土ぼこりで下着の中まで泥だらけ。収穫期の一番忙しいときはご飯支度をする暇もなく、インスタントラーメンで済ませることも。こんなはずじゃなかった……
あー、札幌でヒールを履いていた頃の私が懐かしい!

でも、自分を「生かさず殺さず」暮らしていた公務員の頃を思えば、地に足をつけて土に触れて暮らす今は、格段に充実感がある。
同じ地域に暮らす農家たちはみな豪快な「社長」ばかりで、サラリーマンのつきあいとは違った抱腹絶倒な事件が、この小さなマチでは起こる。それに、スローフードを楽しむちょっと変わった仲間たちも周りに増えてきて、「食べ物談義」には事欠かない。

そんな私の、「ドタバタ」な田舎暮らしの日々を、旬の食材を使った簡単なレシピとからめながらお伝えしていきたいと思っています。

第1回目の今回は、私が愛してやまない定番のおかず「大豆と鶏肉の煮物」を紹介。うちは豆を生産している農家なので、豆料理は作るのも食べるのもとにかく大好き。

大豆は、肉と一緒に煮込むと、味が染みて美味しいのです。豆の煮物は多めに作った方がいいと思います。作った初日は肉の風味を楽しんで、2日目はじっくり肉の味がしみこんだ豆を食べます。肉は鶏手羽先や胸肉、豚のかたまり肉などにも替えられます。ちなみに、この前はエゾシカ肉で作ったのですが、それがとても美味! 圧力鍋を使えば、さらに簡単です。

大豆と鶏肉の煮物

<材料>(4人分)

大豆(乾燥豆)150g(カップ1)、鶏もも肉 300g、長ネギ 1/2本、しょうが 1かけ、油 大さじ1、 酒 大さじ3、 しょうゆ 大さじ3、砂糖 大さじ1

<つくり方>

  1. 大豆はよく洗って、カップ3の水に浸し、一晩置く。
  2. 漬け汁ごと鍋に入れ、柔らかくなるまで1時間~2時間煮る(豆によって煮る時間は加減する。水が足りなくなったら足すこと)。もし圧力鍋を持っていれば、5分加圧して自然放置する。
  3. 長ネギは小口切り、しょうがは千切りにする。鶏もも肉は一口大の大きさに切る。
  4. フライパンに油を入れて熱し、長ねぎとしょうがを焦がさないように炒め、さらに鶏もも肉を加えてこんがりと焼き目をつける。
  5. 4の鶏もも肉と長ねぎ、しょうがを(2)のなべに加え、酒と砂糖を加えて落しぶたをして20分ほど煮る。さらにしょうゆを加え、味を見ながら煮汁が少なくなるまで煮含める。

<ポイント>

人参、干ししいたけ、こんにゃく、ごぼうと、いろんな食材を加えていくと五目豆、六目豆となってバリエーションが広がります。この料理を一度マスターすると、ほんと豆料理が簡単に思えますよ。