バイオマニュファクチャリングという言葉をご存じだろうか?
研究者などでは当然の言葉として使われているようだが、普段のニュースなどでは目にしない用語のようだ。
バイオマニュファクチャリングとは、わかりやすくいうと、バイオベースの技術を使って、さまざまなプロダクトを製造することと定義できる。
宇宙、特に火星においてバイオマニュファクチャリングを計画する企業が米国に存在する。Cemvitaという企業だ。このCemvitaという企業がどのような企業なのか、彼らが計画する宇宙でのバイオマニュファクチャリングとはどのようなものなのか、今回は、そんな話題について紹介したいと思う。
Cemvitaとは?
Cemvitaとは、米国のテキサス州にあるベンチャー企業。50名以下のまだ小規模な企業のようだが、資金調達にも成功しており技術的にとても興味深い企業だ。
彼らのコアバリューは、SYNTHETIC BIOLOGY。日本語に訳すと合成生物学。合成生物学とは、彼らによると、バイオ技術を使って微生物に新しい能力、機能を持たせるようにする技術のことだ。
その合成生物学を活用して、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)というCO2やメタンなどの回収・貯留技術やバイオマイニングを得意としている。
まず、彼らのCCSについて紹介したい。彼らは、バナナに注目した。バナナが熟成するときに、エチレンを生成することがわかっている。そのバナナからエチレンを形成する酵素の遺伝子を取り出すことに成功し、CO2を食糧とできる微生物を作り出すことができ、これにより、CO2と水をバイオエチレンに変えることができる微生物を作り出すことができたというのだ。
また、もう1つ彼らが得意としているバイオマイニングについてだが、これは生物の力を活用して、鉱石から金属を溶かし出す技術のことだ。
実は地球上で行われている採掘作業は、炭素排出量の7~8%にもなっている。そこで、彼らは、微生物の力を使って、マイニングチェーン(マイニングのサプライチェーン、バリューチェーンのこと)全体に低炭素で、コストエフェクティブなソリューションを開発している。
宇宙でのバイオマニュファクチャリングとは?
では、Cemvitaが構想する宇宙でのバイオマニュファクチャリングとはなんだろうか?
正直なところ、バイオマニュファクチャリングという用語の説明、解説をしているサイトはあまり見当たらないが、科学技術振興機構(JST)の研究開発戦略センターのホームページ※1 によると、「未来のバイオマニュファクチャリングとは、治療用細胞や分子、医薬品、化学品、燃料の大規模生産や、コンピューティングや通信のためのバイオベースの技術を通じて、生物学を活用し、新製品をより効率的かつ持続可能に造ること」と記載されている。
彼らの宇宙での構想は、次のようだ。まず空気からCO2を取り出す。もちろん、火星の大気の主成分であるCO2も検討に含まれているだろう。
そして水を電気分解してH2とO2を作る。このCO2を微生物はグルコースに変換する。
実際に宇宙飛行士は、1日に1kgものCO2を排出しているという。このCO2を利用してグルコースに変換する。もちろんこのグルコースは、宇宙旅行者の食料にもなるが、アミノ酸などのさまざまなそして複雑な栄養素を生成する微生物の食料にもなるのだ。
彼らは、この技術を国際宇宙ステーション(ISS)で実証したいとホームページで語っている。
いかがだっただろうか。人類が敬遠する温室効果ガスといったを微生物の力を有効に活用することで、新しいプロダクトを生み出すという斬新な発想に驚く。今後も彼らの動向に注目したい。
参考文献