誰しも一度は、「炎上」という言葉を見聞きしたことがあるだろう。 ここ数年、たった1一つの投稿または口コミやブログ、ソーシャルメディア上の書き込みが起因となり、企業や、飲食店舗の存続危機に追い込まれたケースが多発している。
「炎上」って何?そもそも「炎上」の定義とは?
まずは、「炎上」という言葉の意味を正確に理解しなければならない。ここで言う「炎上」とは、「問題」や「課題」など特定の事象に対して「SNS」などの「ソーシャルメディア」上で、多くの「批判」「誹謗中傷」などの口コミが発生し、被害が拡大していく状態のことである。
火のないところに煙が立つ?「炎上」の火付け役とは?
誰がどのような形で「炎上」を起こすのか。これまでは、炎上させることを目的とした第三者、いわゆる仕掛人のような人物が存在していた。問題となりうる情報や写真を見つけ出し、意図的に拡散させ炎上させていたのだ。マスメディアが取り上げ、さらに拡散していく流れが一般的であった。
近年、特に2016年度は、「SNS」などのいわゆる「ソーシャルメディア」が広く世間に普及したことに伴い、一般の人も口コミを気軽に発生しやすい状況になった。SNSが発信源でないものまで、ユーザー間で議論が起きることもある。CMなどの広告やイベントは、口コミが発生しやすい事案の1つといえる。ユーザー間で多くの議論が生まれるのは、顔の見えないネット社会の特徴でもあると言える。マスメディアも、今まで以上に「炎上」に関心を示し、情報拡散に加担するような傾向も見られた。
そして今や、「炎上」は単純な「批判」や「誹謗中傷」だけに留まらない。ユーザー間で議論が交わされると「ネガティブ」と「ポジティブ」の両面の意見も同時に出始め、それが、バイラル的に拡散していくこともあるのだ。
また、稀に発信源の投稿そのものがデマである事もある。真実を把握しないまま情報に惑わされ、メディアや企業が対応に追われる。つまり、発信源の情報が、真実か否かの事実確認も求められるようになってきた。
「炎上」の扱いは、BCP策定の一環?企業の動向はいかに?
炎上によって、株価が暴落、破綻の危機に追い込まれたケースも数多くある。多くの企業が、「炎上」に対して危機感を募らせ、対策に乗り出している。企業側でも「炎上」が、コンプライアンス リスクとなり得ると認識し、ソーシャルメディア上の口コミをチェックするようになってきた。
要はこれまで、企業側の問い合わせ窓口に入っていたクレームがソーシャルメディア上に場所を移しただけのことなのである。つまり、お客様窓口や社内で処理されていたものが、「ソーシャルメディア」上に「広がる場所」が変わったのだ。
その分、企業側のマイナス要素・改善すべき問題が表面化されやすくなったことになる。「ソーシャルメディアだから」と言って、これまで企業側が持つリスク対策と分ける必要はない。世の中に表面化されなかったことが、「悪い部分」「良い部分」のいずれかで広がりやすくなったと考えなければならないのだ。
「良い部分」であれば、もちろん、企業には大きなメリットにもなり得る。「ソーシャルメディア」を営業ツールの一環として利用している企業も多く存在するのもご存知だろう。しかし、「悪い部分」であれば、企業に大きなダメージを受けることになりかねない。企業経営に与えるダメージは計りしれないものとなっている。
それが、ソーシャルメディアが世の中に浸透した、「炎上時代」の怖いところでもある。
企業が見落としがちな「炎上」の盲点とは?
企業は今、「どんな情報であれ、世の中に広がる可能性がある」ということを理解し危機感を持たなければならない。ソーシャルメディアにおいて、情報は、社内・外部に関わらず全ての人が気軽に広げることができるのだ。
一部では、自社や取引先の内部情報・業務・信用に関わる情報の漏洩を防ぐため、業務時間外・内に関わらずソーシャルメディアの利用を禁止している企業もある。しかしながら、退職者や従業員の家族、友人までソーシャルメディアの利用を禁止することはできない。リスク回避策の一環としての試みではあるが、残念ながら効果はないに等しい。ソーシャルメディアが浸透していること、その特徴を理解する必要がある。
ソーシャルメディアの利用者が年々増加している今こそ、企業のリスク体制を見直す必要がある。企業が、従業員や顧客に対して、何らかの被害を与えていないか。自社のマイナス要素を見逃してはいないか。「炎上」となりうる事象が社内にあるのか否かをしっかりと見直し、把握しなければならない。
その上で、ソーシャルリスクがあるということを理解し、「ソーシャルメディア」のパトロールを徹底する必要がある。拡散される情報のほとんどは未然に防ぐことは難しいということも念頭に入れなければならない。
ソーシャルメディア時代の中で、「炎上」は、経営ダメージを与える要因の一つであることを再認識し、重要視しなければならないのだ。いざ、炎上が起きた際は、「炎上」という言葉に惑わされてはいけない。冷静にもともとの起因となった原因要素を探り出し、スピード解決することが最も重要になってくる。
企業は、「ソーシャルメディア」上で、経営ダメージを受けかねない事案が発生したことを前提としたリスクヘッジを行っておく必要がある。それが今後の大きな課題になってくるのだ。
次回以降は、まずは現状の理解を深めるために、2016年の「炎上傾向」を振り返り、そして、企業の対策案など課題の解決方法について触れていきたい。
連載協力:イー・ガーディアン株式会社
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