ダイエット中のみならず、食べ方で一番大切なことは「よく噛む」こと。

「ひみこのはがいーぜ」という言葉に聞き覚えはありませんか?噛むことに対するメリットを語呂合わせにしたものですが、厚生労働省の「平成21年国民健康・栄養調査」によると噛む回数は年々減ってきています。

現代人における一日の咀嚼回数はおよそ620回。戦前は1,420回だったのに対してなんと半分にまで減っているそうです。

人間が最も多く行っている運動が、呼吸・咀嚼・歩行。

筋トレやストレッチなどの運動をいくら頑張ったとしても、それらの運動をいい加減にしていたら本末転倒。まずはこの三つの運動の基準をしっかりと引き上げることが大切です。

呼吸・咀嚼・歩行という三つの運動を疎かにしないことは、いつでもダイエットに取り組める長期的に健康な体を作ります。

よく噛むことにより消化吸収が良くなることはもちろん、エネルギーを使うことにも繋がります。食べたから動かないといけない! と話す人をよく見かけますが、食べることも立派な運動です。

咀嚼のメリット

前述した「ひみこのはがいーぜ」は小学校などで習った記憶がある人もいるかと思いますが、よく噛むことのメリットや効果の頭文字を取ったもの。それぞれの意味は下記のようになります。

ひ…肥満の防止
み…味覚の発達
こ…言葉の発音
の…脳の活性化
は…歯の疾病予防
が…がんの予防
い…胃腸の改善
ぜ…全身の体力向上

ダイエットの要素はもちろん、人生においても重要な要素が咀嚼運動に集約されていることがよく分かると思います。

いくら腕の筋肉を鍛えて腕を太くかっこよくしても、お尻の筋肉を鍛えてスタイルを良くしてもこれ以上の健康効果は得られません。

咀嚼運動を疎かにしてしまうと太りやすくなることはもちろん、口の周りの筋肉が衰え、顔の形にも影響を与えます。※アメリカ国立医学図書館(National Library of Medicine)の「Facial asymmetry and chewing sides in twins」調査参照

いくら体が痩せても顔が美しくなければ心から満足する結果にはならないでしょう。 また、噛まずに飲み込むことは食道を傷つける原因にもなります。食道炎や食道がんなどの病気を予防するためにも、日頃から食事に時間をかけるようにしましょう。

消化は口の中から始まる

噛むことにより大量に分泌される私たちの唾液には、炭水化物(でんぷん)をブドウ糖に分解する消化酵素のアミラーゼが含まれています。

つまり、消化は口腔内から始まっており、糖質代謝が苦手な遺伝子タイプの人でも噛むことで解決につながります。もし、お米や麺類を食べると胃がもたれるという人は、よく噛むことを心掛けるだけで解決の糸口が見つかるかもしれません。

また、体調の悪い時の食事といえば、一般的にお粥やうどんを勧められるわけですが、実際にこれらの食事は本当に消化に良いのでしょうか?

炭水化物は唾液中のアミラーゼにより分解され、胃酸と混じり合うまでの間もその働きは続きます。反対に胃では糖質の消化酵素は分泌されません。

つまり、食べ易さという点では体調の悪い時に良いかもしれませんが、分解・消化の過程により時間がかかることで余計なエネルギーや体内酵素を使ったり、胃での滞留時間が長くなったりすることで、逆効果になってしまうことも考えられます。

栄養は噛んで取る

その他にも、野菜やフルーツを食べる時にも咀嚼が欠かせません。

皮は組織を支えるための食物繊維が多く、種は鳥や動物に食べられても糞と共に排泄されるように頑丈な種皮に包まれています。

これらはヒトにとっても消化が難しいため、しっかりと噛んで食べることが大切です。植物の栄養は、果肉や葉よりも通常は捨ててしまわれるような種や皮、根などにも多く含まれますので、丸ごとよく噛んで食べることが基本です。

他にも玉ねぎは、繊維や細胞が壊れることによりアリシンという栄養が生み出されます。アリシンは殺菌や抗酸化作用、血流改善などの効果がある栄養素です。

よく玉ねぎには血液サラサラ効果があると聞くかもしれませんが、これもよく噛んで食べるからこそ。

そういった植物自らが作り出す栄養素は総称して「ファイトケミカル」と呼ばれます。ファイトケミカルは植物が日光や害虫などから身を守るために作り出す栄養素であるが故に、非常に抗酸化力が強く、私たちの健康に大きなメリットを与えてくれます。

食べるのが早いと言われる人、急いで食事を取る日が多い人。ダイエットを始める前に、今一度ご自身の食べ方を振り返ってみる必要があるかもしれません。特別なことをしなくても、ちょっとした心がけがダイエットになるということに気付いていただけることと思います。