auの「LISMO」や、ドコモのWMA対応に対し、キャリアとしての音楽サービスを打ち出せていなかったソフトバンク。しかし、秋冬モデルを展開するにあたって、ついに新サービスを開発した。それが、WMA対応の「S!ミュージックコネクト」だ。今回は、音楽ポータルとリッピングソフトが一体化した、新サービスの全容を明らかにしていく。
自社開発のソフトやポータルを提供しユーザーのニーズに応える
統合音楽サービスのLISMOを展開するauや、ハイエンド機種をすべてWMAに対応させたドコモに比べ、ソフトバンクの音楽サービスはやや力不足な面があった。今までは、端末メーカーごとに異なる音楽転送ソフトを使用するなど、ユーザーにとっても分かりづらい面があったことは否めない。
その弱点を埋めるサービスとなるのが、秋冬モデルと同時に発表された「S!ミュージックコネクト」だ。S!ミュージックコネクトとは、音楽配信のポータルサイトと、リッピングソフトを統合したサービスのこと。ユーザーは、このソフトひとつで、CDから楽曲を取り込むこともできれば、音楽配信サイトでファイルを購入することもできる。
では、このサービスにはどのような狙いがあるのか。ソフトバンクモバイル モバイル・メディア・コンテンツ統括部 マルチメディア・サービス部の末松卓氏はこう話す。
「これまでは、PCからの転送はメーカー独自のソフトを使っていましたが、S!ミュージックコネクトという、ソフトバンクとしての"純正ソフト"を提供します。今までも、『着うたフル』や『タダ歌ばん』といったケータイで楽しめる音楽サービスを展開していました。もちろん、それはこれからも引き続きやっていきますが、S!ミュージックコネクトを投入したことで、音楽サービスのラインナップをさらに強化できたと思います」
ファイルの形式をWMAにしたのも「多くの配信サービスで使われていたからです」(末松氏)という。対応曲数も多く、サービス開始の時点で「400万曲以上を一気に取り込むことができます」(末松氏)。現時点ではレーベルゲートが運営する「mora win」との提携が発表されているが、今後は、提携サイトをさらに増やしていく可能性もあるという。
自社ソフトの提供に加え、大手音楽配信サイトと提携したことで、今まで手薄だったPC連携の音楽サービスを一気に拡充することができたのだ。
ソフトバンクモバイル プロダクト・サービス開発本部 モバイル・メディア・コンテンツ統括部 マルチメディア・サービス部 末松卓氏 |
同部・馬野泰治郎氏 |
同社マーケティング本部 サービス・コンテンツマーケティング課 課長 溝渕浩二氏 |
同課・田中久美子氏 |
シンプルさを追求したユーザーインタフェース
無論、後発だからこそ、ソフトの使いやすさには工夫を凝らしている。S!ミュージクコネクトの画面を見ると分かるように、そのユーザーインタフェースは非常にシンプル。一見、あまり機能が搭載されていないようにも感じられるが、同部の馬野泰治郎氏は、あえて機能を絞りこんだことが、このソフトの特徴だと説明する。
「様々な調査を行いましたが、既存の音楽プレイヤーソフトでは機能が多すぎる、ボタンが多すぎると感じているお客様が多いことが分かりました。そこで、あえて使う機能だけを残し、使いやすさを追求しています」
なるほど、確かに、画面上に表示されるボタンが少なく、どれがどの機能なのかが、一目で理解できるようになっている。CDを入れ、曲を選択した後に、ボタンを押すだけで音楽をリッピングできるなど、操作も非常にシンプル。
同様に、ケータイへの楽曲転送も、移したい曲をドラッグ&ドロップした後、ボタンを押すだけと簡単だ。Windows Media Playerのように自動的に同期する設定はできないが、かえって操作がシンプルになり、初心者でも感覚的に理解できるのではないだろうか。
「ケータイの場合、外部メモリに動画などを入れている方もいます。自動転送にしてしまうと、(容量不足で)聞きたい曲を移せないという可能性も出てきてしまうので、あえて手動で音楽を転送する仕様にしています」(末松氏)
リッピングのビットレートは、48/64/96/128/160/190/256Kbpsの7段階だが、デフォルトは128Kbpsにしている。それも「外部メモリが少ないと、曲数が少なくなってしまうため」(末松氏)という理由からだそうだ。
"ケータイで聞くこと"を考えると、PC初心者のユーザーも多い。そういったユーザーでも、自動的に音楽の取り込みができるのが、このソフトの特徴といえるだろう。
この"手軽さ"はプレイリスト機能に当たる「カスタムDISC」や、ポータルサイトのデザインなどにも受け継がれている。次回は、これらの機能に焦点をあて、S!ミュージックコネクトの世界を紹介していきたい。