京阪電気鉄道が座席指定特別車両「プレミアムカー」と全車両座席指定の列車「ライナー」を導入してから1年以上が経過。今年9月に行われた京阪線のダイヤ変更では、「ライナー」の増発および京都方面の列車新設、夜間時間帯の列車新設が目玉となった。

  • 全車両座席指定の列車「ライナー」。ダイヤ変更後も8000系で運行される

運行開始から1年以上が経過したいま、「ライナー」はどの程度、利用客に受け入れられているのだろうか。今回、朝・夜の「ライナー」にそれぞれ乗車する機会を得たので、2回にわたりレポートしたい。

朝「ライナー」本領発揮は丹波橋駅から!?

全車座席指定の列車「ライナー」は昨年8月21日から運行開始した。当初は朝ラッシュ時間帯、枚方市発淀屋橋行と樟葉発淀屋橋行の2本のみの設定だった。先月のダイヤ改正により、朝ラッシュ時において出町柳発淀屋橋行が1本新設され、既存の樟葉発の運行時刻が前倒しされた。あわせて「ライナー」の停車駅が特急停車駅と同一となった。

京都方面の「ライナー」の新設により、乗車に必要な「ライナー券」の料金も変更。淀屋橋方面(下り)は出町柳~中書島間の停車駅から枚方市駅まで300円、京橋~淀屋橋間各駅まで380円、樟葉駅・枚方市駅から京橋~淀屋橋駅各駅まで300円となった。ダイヤ改正後も「ライナー」の使用車両は8000系で、「プレミアムカー」に乗車する際は従来通り「プレミアムカー券」が必要となる。「ライナー券」「プレミアムカー券」はともに専用サイトまたは「ライナー」および特急停車駅の発売所で購入できる。

  • 「ライナー」に連結された「プレミアムカー」は従来通り「プレミアムカー券」の購入で乗車できる(写真は2017年5月の報道公開にて撮影)

筆者は9月のダイヤ変更で新設された出町柳発淀屋橋行「ライナー」に乗車すべく、朝7時に出町柳駅を訪ねた。出町柳駅は京阪本線・鴨東線の終着駅であると同時に、叡山電車の始発駅でもある。叡山電車が出町柳駅に到着するたび、多くの利用者が京阪線ホームへ流れ込む。朝ラッシュ時なのでビジネスパーソンが中心だが、学生の姿も目立った。

出町柳駅では改札口横の「プレミアムカー券 / ライナー券うりば」から「ライナー券」を購入する。枚方市駅や樟葉駅で見られた臨時販売所は設けられていない。出町柳駅は京阪線の列車の始発駅・終着駅ということもあってか、駅構内において「ライナー」に関する告知はあまり見られなかった。ただし、1番線ホームに下りて足もとを見ると、「ライナー」の乗車位置を示すステッカーが貼られてあることに気づいた。

出町柳駅始発の「ライナー」は同駅7時40分発だが、10分前の7時30分になっても乗車位置に並ぶ客は見かけなかった。一方、同駅7時36分発の通勤快急中之島行が入線する2番線ホームでは、乗車位置に利用客の列ができている。始発駅で着席できる可能性も高いだけに、当然のことといえるかもしれない。

7時36分頃、1番線ホームに8000系「ライナー」が入線。6号車に「プレミアムカー」が連結されている。なお、先月のダイヤ改正以降、淀屋橋方面(下り)の朝「ライナー」は京橋~淀屋橋間各駅を除き、1・3・5・7号車でドアカットが行われるので注意が必要だ。

  • 「ライナー」に使用される8000系(一般車)の車内(写真は2017年5月の報道公開にて撮影)

7時40分、「ライナー」は出町柳駅を発車。筆者が乗車した1号車にいた利用客はわずか3名だった。「ライナー」は特急と同様、京都市内の中心地にある三条駅・祇園四条駅・七条駅とこまめに停車するが、どの駅も乗車する客は見当たらなかった。これら各駅では朝の時間帯、淀屋橋方面ホームで電車を待つ客自体、それほど多くない。

近鉄京都線の接続駅である丹波橋駅に着いたところでようやく様子が一変し、新たに7人の利用客が1号車に乗り込んできた。丹波橋駅から淀屋橋駅までは「ライナー」で50分。大阪市内から1時間の圏内に入ったところで「ライナー」の乗客が増加するのか……と思ったが、次の中書島駅は宇治線が分岐する駅にもかかわらず、乗客の動きにそれほど変化が見られなかった。

しかし大阪府内に入り、樟葉駅に到着したところで客が乗り込んできた。ここまで来ると、京都方面より大阪方面ホームに立つ人が明らかに多くなる。

8時19分、交野線が分岐する枚方市駅に到着。ここでも客が10人ほど乗り込み、乗車率は7割程度になった。向かい側の4番線ホームでは、同駅8時23分発の特急淀屋橋行を待つ長い列ができていた。ちなみに乗車してくる客の様子を確認してみたところ、丹波橋駅からの乗客のうち、高齢の方は駅で購入した際に渡される「ライナー券」を持っていた。一方、樟葉駅・枚方市駅からの乗客はスマートフォン片手に座席を確認する人が多かった。

枚方市駅を発車した後は大阪市内の京橋駅までノンストップ。寝屋川市駅付近で徐行運転になったが、複々線区間に入ると一気に速度が増した。

京橋駅へ向かう途中、筆者が乗車した1号車の様子を眺めると、乗客は40代以上のビジナスパーソンがほとんど。静かな車内で睡眠を取る人、読書する人など、それぞれ思い思いに貴重な朝の時間を活用している様子だった。

樟葉駅・枚方市駅での認知度は上がっているようだが…

枚方市駅を出てから18分後の8時39分、京橋駅に到着した。JR大阪環状線・JR東西線や地下鉄長堀鶴見緑地線と接続するこの駅で多くの乗客が降りるのかと思いきや、実際にはその次の天満橋駅で降車する人が多かった。8時47分、「ライナー」は終点の淀屋橋駅に定刻に到着。降車したビジネスパーソンは足早に改札口へ向かって行った。

  • 今年9月のダイヤ変更で朝の「ライナー」は出町柳発淀屋橋行が新設され、計3本に。樟葉発淀屋橋行の列車は運行時刻が変更された

このように、運行開始間もない出町柳発淀屋橋行の朝「ライナー」は大阪市内から1時間圏内に入る丹波橋駅から利用客が増え、とくに樟葉駅・枚方市駅からの乗車が多くなっていることがうかがえる。この両駅は「ライナー」の運行開始時から始発駅となっており、1年以上を経て「ライナー」の認知度が上がっているように感じる。

⼀⽅の京都側、とくに京都市内中心部における「ライナー」の認知度は低い。京都市内中心部から⼤阪市内へ列⾞で通勤するなら、京阪線以外にも JR京都線(東海道本線) や阪急京都線といった選択肢がある。たとえば、「ライナー」で祇園四条駅から淀屋橋駅まで61分かかるが、同時間帯において祇園四条駅からほど近い阪急京都線の河原町駅から阪急梅田駅までは50分だ。また、京阪線内においては、始発駅の出町柳駅 はもちろん、途中の三条駅・祇園四条駅からでも着席できる可能性があり、そうなると運賃以外の料⾦を払ってまで「ライナー」に乗る必要はない と思われているのかもしれない。

もうひとつ、気になるのが出町柳発「ライナー」の淀屋橋駅8時47分着という時刻設定。9時出社が一般的であり、京橋~淀屋橋間各駅で他路線への乗換えにかかる時間、あるいはホームから改札口を出て職場に着くまでの時間などを考えると、大阪市内の駅に8時30~40分台に到着する現在の時刻設定は少し遅いのではないか。京都方面の「ライナー」は運行開始間もないだけに、まだまだ手探り状態という印象を持った。