地震大国と呼ばれる日本では、いつ何時、地震の被害に遭うかわかりません。いざ大地震が起きた時に慌てることがないよう、普段からしっかり備えておきたいものです。さて、地震による損害を補償してくれる保険としては、「地震保険」があります。この地震保険は、火災などによる損害を補償する「火災保険」に付帯することができます。地震保険の内容や火災保険との違いなどについて、確認してみましょう。
■地震保険とは
地震保険とは、地震による建物や家財の損害を補償する保険です。地震のほか、噴火や、地震が原因の津波による火災や損壊、流失、埋没などの被害も補償の対象となります。
また、地震保険は一般的な保険商品と異なる特殊な保険で、以下のような特徴を持っています。
1.火災保険とセットでの加入が必要
地震保険は、単独で加入することができません。火災保険に付帯し、セットで加入する必要があるのです。すでに火災保険に加入している場合は、契約期間中であれば、地震保険を追加で申し込むことができます。
2.日本政府と損害保険会社が共同運営
地震は、発生時期や規模の予測が難しく、大地震が起きると、人々の生活に甚大な被害を及ぼす恐れがあります。また、損害額も大きくなりやすいため、「民間の保険会社だけではその金額を補償できない」という事態が起こり得ます。そのため、地震保険は、保険会社が提供する保険を政府が補償する形で、共同運営されているのです。
3.どの保険会社でも保険料や補償内容は同じ
このように、地震保険は公共性の高い保険であるため、どの保険会社で申し込んでも保険料や補償内容は一律に定められています。そのため、地震保険の加入を検討する際においては、保険会社選びで迷う必要はないのです。
では、地震保険を付帯する火災保険は、地震保険とどのような点が違うのでしょうか。地震保険と同じく、火災保険も建物や家財の損害が補償される保険です。火災保険は、火災のみならず、落雷や爆発・破裂、水災、雪災、盗難などによる損害を補償してくれます。しかし、火災保険では、地震や噴火による火災、津波での建物の損壊や家財の破損などは補償の対象外となります。
火災保険に地震保険を付帯していないと、地震による火災が起きても、補償を受けることができないのです。「火災であれば、地震によるものでも火災保険でカバーされる」と勘違いしている人が見受けられますが、その点をしっかり把握しておきましょう。
■地震保険のメリットと注意点
メリットは?
地震で家や家財などが損害を受けた時、経済的な支えとなる地震保険。地震保険には、具体的に以下のようなメリットがあります。
・地震による家や家財の被害を補償してもらえる
・被災後、保険金を生活資金に使うことができる
・保険金を住宅ローンの返済に充てることができる
・政府による後ろ盾があり、比較的早く保険金を受け取れる
注意点は?
一方で、地震保険には注意点もあります。まず、先述の通り、地震保険は単独では加入できず、必ず火災保険とセットで契約する点です。また、地震保険の保険金額(補償金額)は、火災保険の保険金額の30~50%の範囲内(建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限)と決まっている点です。たとえば、火災保険で2,000万円が受け取れる契約なら、地震保険では600~1,000万円しか受け取れないことになります。
さらに、下記のようなものは、地震保険の補償対象外となります。
・工場や事務所専用としている建物など、住居として使用していない建物
・1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石・骨とう、通貨、有価証券(小切手、株券、商品券等)、預貯金証書、印紙、切手、自動車など
また、地震の発生翌日から10日を経過した後に損害が生じた場合や、地震時に補償対象が紛失または盗難されていた場合なども、地震保険の補償が適用されません。
■地震保険には入るべき?
このようなメリットや注意点のある地震保険ですが、加入は必要なのでしょうか。日本はこれまで、阪神淡路大震災や東日本大震災、新潟県中越地震、熊本地震など、多くの大地震を経験してきました。また、今後も、南海トラフ地震などの発生が懸念されています。日本に住んでいる限り、どこでも地震は発生しており、その被害に遭うリスクがあります。
そのため、特に、家を購入したばかりの人や、住宅ローンが長く残っている人などは、地震保険に加入しておくことをおすすめします。戸建てや分譲マンションの人は、建物と家財の両方、賃貸の人は、家財が対象の地震保険を検討してみましょう。
なお、地震保険には、建物の建築年または耐震性能ごとに、保険料が割り引かれる仕組みがあります。この割引には4種類あり、対象となる建物と割引率は以下の通りです(重複しての適用は不可)。
1.免震建築物割引
対象:免震建築物
割引率:50%
2.耐震等級割引
対象:耐震等級を有している建物
割引率:
耐震等級3 50%
耐震等級2 30%
耐震等級1 10%
3.耐震診断割引
対象:耐震診断または耐震改修の結果、改正建築基準法における耐震基準を満たす建物
割引率:10%
4.建築年割引
対象:1981年6月1日以後に新築された建物
割引率:10%
さらに、地震保険は長期契約(最大5年)であるほど、保険料が割安となります。地震保険の保険料を算出する際は、契約期間に応じ、以下の長期係数を掛けることができます。
2年契約:1.90
3年契約:2.85
4年契約:3.75
5年契約:4.65
たとえば、4年契約にした場合、3.75年分の保険料で済むため、お得になるのです。
また、地震保険は、確定申告や会社の年末調整において、「地震保険料控除」が適用されます。支払った保険料の金額に応じて一定の所得控除が受けられ、所得税は最大5万円、住民税は最大2万5,000円を、課税所得金額から差し引くことができます。
■地震保険の加入を検討しよう
将来、大地震による甚大な被害が心配される中、地震保険の加入率は、年々徐々に高くなっています。地震はいつやってくるか、正確に予想することができません。日ごろから避難の準備をしておくと同時に、地震保険の加入を検討して経済的な備えも忘れずに行いましょう。