鉄道というものは、沿線地域の栄枯盛衰と運命をともにするものですよね。地域が栄え、乗客も多ければ当然、列車も頻繁に行き交うでしょう。でも地域が寂れ、鉄道の利用者が減少すれば、列車の運行もまばらになり、採算も取れず、ついには廃線、代替バスに……、ということになります。寂しいけれど、使命を終えて消えていくのですね。

運行再開当日、信楽高原鐵道の列車は満員。沿線住民も旗を振って歓迎した

一方、そういう形での廃止ではなくて、まだまだ必要とされているのだけど、突然の災害で廃線の危機を迎えてしまうこともあります。たとえば有名な高千穂鉄道のように。必要なんだけど、多額の復旧費用を投入するくらいにものすごく必要か? という路線を災害が襲うと、「早すぎる廃線」につながってしまうのでしょう。

雨の中、沿線住民も旗や横断幕で再開を祝う

滋賀県を走る信楽高原鐵道も、一時は存続も危ぶまれるほどの状況でした。2013年9月、台風18号に襲われ、杣(そま)川の橋りょうが流失するなど大きな被害を受けてしまい、それ以来ずっと運休となってしまったのです。しかし、地元の熱意や各方面の協力もあり、今年11月29日、めでたく運行が再開されることになりました。

筆者も運行再開当日、信楽高原鐵道を訪ねました。この日は朝からあいにく荒れ模様の天気で、信楽駅に着いた途端、大雨に。その後、ときおり小降りになることもありましたが、滞在中はずっと雨でした。

信楽駅。駅前の大たぬきがサンタクロース姿に!

信楽駅に停車中の列車

SKR200形(205号車)の姿も

それでも信楽駅周辺は、運転再開後、最初の列車を見届けようと集まった人々であふれ返っていました。台風で運休に追い込まれ、再開の日まで大雨で本当に大丈夫なのか? と思いつつ、でもまあこれで「厄落とし」になってくれるんじゃないか? という思いもありつつ。まだ11月でしたが、駅前の大たぬきはサンタクロースに"変身"していました。

始発列車の発車は9時46分。列車が来る頃になると、沿線のあちこちから地元の人たちが集まってきました。線路沿いで旗を振るみたいです。地元に愛されてる鉄道、無事に再開されてなによりです。

やがて、のどかで美しい農村の景色の中を、3両編成の列車が姿を現しました。1年2カ月ぶりの列車です。お祝いの旗が振られる前を、満員の乗客を乗せて列車が通過していきました。なんとも良い雰囲気です。非電化区間なので架線がないのがまた、いい。

SKR310形を先頭に3両編成の列車が通過。横断幕で歓迎する人々の姿も見られた

その後も、なんとなく名残惜しかったので紫香楽宮跡へ移動し、折返しの列車を待ちました。ここでは旗だけでなく、再開を祝う横断幕を持った地元の人たちが集まっていました。なんだかじーんと来ます。筆者は完全によそ者なのですが……。

いやあ、鉄道って本当にいいものですね。