前回に続き、姫路に残る廃線を取り上げたいと思います。今回は「鉄道」というか、「コンクリート道」とでも言いたくなる路線なのですが。1966(昭和41)年に開通して1974年に休止(廃止は1979年)。たった8年間だけ運行していた姫路モノレールを紹介します。姫路駅から手柄山の遊園地まで、全長1.6kmのごく短い路線でした。

休止から40年経った現在も、姫路市内の至る所に姫路モノレールの橋脚や軌道などが残っている

旧大将軍駅のビルは来年をめどに解体へ

JR姫路駅北口を出て、西へ。山陽姫路駅を横目に、普通によく見るような街並みと、そのスカイラインを眺めているうちに、所々に不思議な形の突起物が見えてきました。青空をバックに、銭湯の煙突のようでもありますが、突起物は複数並んでおり、こんなに密集して銭湯があるわけもなく……。これらはすべて、モノレールの橋脚なのです。

ちょっと前まで、この橋脚を結んで軌道も残っていたようですが、それはもう撤去されて、柱だけが残っているのです。

JR姫路駅から廃線探訪はスタート

街中に不思議な形の突起物発見!

突起物の正体は姫路モノレールの橋脚だった

モノレールの橋脚は、民家の屋根の上から突き出た形になっています。民家と民家の間ではなく、民家の屋根をぶち抜くように出ているものも。まさかこの構造物を民家の屋根が支えているわけはないと思うので、おそらく建物の真ん中にコンクリートの柱が立っている、という状況なのでしょうね。建物の中がどうなってるのか、一度見てみたいものです。

橋脚の列を追って進むと、大きなビルに行き当たりました。資料によると、ここは「大将軍駅」という中間駅になっていたらしいです。ビルの真ん中をモノレールが通っているという、なんとも不思議な景色です。

ただ、ビル自体は駅がなくなってからそんなに時間が経っていないようにも感じられます。モノレールの休止とともに廃墟になったとしたら、もう40年が経過しているわけですが、そこまで荒廃した建物には見えません。生活感があるのです。それもそのはず。この建物の5階より上は公団住宅になっていて、いまも入居されている方がいらっしゃるらしいのです。4階部分に駅跡を抱えたまま、このビルは現役だったのです。

しかしこのビル、現在の耐震基準を満たしていないとのことで、来年をめどに解体されてしまうようです。ひょっとしたら、このビルはいつかモノレールが再開する日を信じて、ずっと待っていたのかもしれませんが。

旧大将軍駅。ビルの4階部分に駅があった

旧大将軍駅から先は、一部区間でモノレールの軌道が残る

軌道の一部がツタで覆われている

ちょっと感傷的になりつつ、道路を渡って先に進みます。軌道は山陽新幹線をくぐっています。姫路モノレールの晩年は、山陽新幹線が岡山駅まで開通した時期と数年だけ被っていますので、新幹線がモノレールをまたぐように建設された、というのが正しいのでしょう。後にできたものが遠慮して、上を跨いでいくのですね。

すぐその先で在来線の高架線とも交差しますが、ここはほぼ同じ高さで、姫路モノレールの軌道は撤去されています。近年、姫路駅付近の山陽本線が高架化されましたが、使われなくなったモノレールの軌道はやはり邪魔だったのでしょう。

姫路モノレールの軌道は山陽新幹線の高架下をくぐり、山陽本線の高架線を前に途切れる

姫路~手柄山間を結んでいた姫路モノレール。橋脚と軌道は手柄山の少し手前で途切れていた

その後、モノレールの廃線跡は駐車場の上空を横切り、川沿いを進んで、その先で途切れています。あまり見たことのないヒーローがそれを見上げています。彼にどんな思いがあるのか? それは謎です。

旧手柄山駅には姫路モノレールの車両も

上空を見上げながらの移動はここで終わり、終点の手柄山の園地へ。広い駐車場を横切り、その先で見上げると、れんが造りの施設が見えました。水族館の入口にある、入場料を払わなくていいエリアに、当時のモノレールの車両が展示されてあります。

姫路モノレールは、「ロッキード式」と呼ばれる方式で、日本ロッキード・モノレール社の製造らしいです。有名なロッキード事件は1976(昭和51)年ですが、実際に賄賂が飛び交ったとされる時期は、このモノレールが運行されていた頃と重なりますね……って、あんまり関係のない話でしたね。ちなみにこの車両、もし1966(昭和41)年製だとすれば、筆者と同い年です。3月以前の製造でしたら、学年では1つ先輩ですけど。でも、「彼」はきっと学校行ってないでしょうね。その年からいきなり働き盛りでしたから(笑)。

姫路モノレールが休止された後、車両は長い間、旧手柄山駅の中に封印されたままだったのが、最近になって水族館のリニューアルに合わせて駅部分も改装され、ようやく公開されたとのことでした。姫路市街地に残るモノレールの橋脚や軌道はこの先どんどん撤去され、消えていくことでしょう。それだけに、旧手柄山駅と姫路モノレールの車両が末永く存続することを願ってやみません。

旧手柄山駅は手柄山中央公園内にあり、現在はモノレールの車両も展示されている

手柄山に無数の鷺が!

ところで、手柄山を下りて姫路駅へ戻る道すがら、振り向いて見ると、山の南側に鷺がいっぱいいるのが見えました。さすが姫路、白鷺城(姫路城)の街です。

そういえば、姫路城はずっと大規模な修復工事をしていたのですが、先日リニューアル公開されたとのこと。今度は姫路城もじっくり尋ねてみたい……なんて考えつつ、姫路モノレールの廃線探訪を終えたのでありました。