いま世界一高いビルは、ドバイの「ブルジュ・ハリファ」で、高さは800m以上だそうです。標高が100m上がるごとに気温が0.6度下がると言われていますから、「ブルジュ・ハリファ」の屋上付近は5度近く涼しいということになるんでしょうか。もし将来、2,000mのビルができれば、屋上には万年雪が積もるんやなかろうか……。

「あべのハルカス」をバックに、「堺トラム」が走る

……なんて、相変わらずアホなことばかり考えている今日この頃ですが。そんな中(どんな中やねん! 笑)、3月7日、大阪・阿倍野に国内最高となる地上300mのビルが開業しました。その名も「あべのハルカス」。近鉄南大阪線の大阪阿部野橋駅に直結しているので、「やたら背の高い駅ビル」ってことになりますね。

この「あべのハルカス」のグランドオープンに先立ち、当連載第2回でも紹介した「堺トラム」(阪堺電気軌道の超低床電車)が、3月1日から天王寺駅前まで乗り入れてくるようになりました。そんなこともあり、運行初日の様子を見に行ってきたのであります。

「あべのハルカス」高すぎてフレームに入りきらない…

JR大阪環状線の天王寺駅で降りると、見上げると首が痛くなるような角度で、「あべのハルカス」がすぐ目の前にそびえ立っていました。冒頭で触れた「ブルジュ・ハリファ」や、東京スカイツリーなんかと比べると半分以下ですが、でもやっぱり高いです。地上300mということは、戦艦大和(全長263m)をまっすぐ立てるよりも高いわけですし……って、かえってわかりにくい例えを出してしまいましたが(笑)。

「あべのハルカス」を背景に「堺トラム」を撮ってみようと思ったのですが、天王寺駅周辺だとビルが高すぎて、フレームに入りません。フルサイズ換算で24mmのレンズを持っていたのですが、広角でも全然足りないです。

しかたないので、隣の阿倍野駅付近までぶらぶら歩くことにします。「さあどこで撮ろうか」と思っていたところ、ちょうど報道の腕章を付けたお兄さんが小さな三脚を立て、動画を撮ろうとしているのが見えました。きっとあの三脚のあたりで撮ると、ナイスな画面となるに違いありません。

撮影場所を決め、「さて、堺トラムはいつ頃来るのかな?」と思った、まさにその瞬間、「堺トラム」が「あべのハルカス」のほうからやって来ました。最悪1時間くらい待つことになるかもなあ、と思っていたので、めっちゃラッキーです。

あべの筋を走る阪堺電車。将来は道路が拡幅され、線路も中央に移設されるという

ちなみに、このとき筆者が撮った「堺トラム」は、「紫おん」という愛称を持つ新しい編成。昨年デビューした愛称「茶ちゃ」とともに、今後は2両体制で、天王寺駅前~浜寺駅前間を毎日運行するとのことでした。

天王寺駅付近に残る古びた線路の正体は?

「あべのハルカス」をバックに「堺トラム」が走る姿を写真に収めた筆者はその後、天王寺界隈をぶらぶら散策しました。

天王寺駅や大阪阿部野橋駅は大阪の南側の玄関となる駅。一方、大阪の南側を走る私鉄のひとつに南海電鉄がありますが、いまは天王寺界隈を走っていません。難波駅を発車し、新今宮駅で大阪環状線と交差して関西空港・和歌山方面、あるいは高野山方面へ向かいます。ただし、鉄道ファンなら知っている人も多いと思いますが、南海電車は昔、天王寺駅まで乗り入れていたそうです。その名残というべきか、線路はいまだ撤去されずに残っています。

天王寺駅前の谷町筋から新今宮方面の線路を見ると、大阪環状線や関西本線(大和路線)の電車が走る線路の隣に1本、古びた線路があって、これがかつての南海天王寺支線の線路でした。廃止から20年以上経つらしいですが、とりあえずこの敷地になにか建てる予定もないし、撤去にもお金がかかるし……、といった感じで残っているのでしょうか?

「あべのハルカス」や「堺トラム」を見た後でこの線路を眺めていたら、なんていうか、栄枯盛衰みたいなものを感じてしまいました。現役で生きている線路(大阪環状線・関西本線)の隣に廃止された線路、という対比もまた、なんともいえない気持ちにさせられます。

天王寺駅付近に残る南海天王寺支線の線路跡

大阪環状線・関西本線の電車の向こうに、通天閣が見える

「あべのハルカス」を横目に天王寺界隈を歩きながら、「世界一高い建造物を建てた国や都市はその後、経済的に良くないことが起こる」という都市伝説があるらしいことを、ふと思い出しました。「世界一高い駅ビル」ともいわれる「あべのハルカス」が建ったこのエリアは今後、どうなっていくのでしょう。もちろん都市伝説なんかに負けることなく、もっともっと活性化すればいいのですが……。

そんなことを考えつつ、降り出した雨の中を帰ることにしました。