「赤い袖先」や「キング・ザ・ランド」などドラマ主演作が注目を浴びているジュノが出演した「ただ愛する仲」は、ショッピングモール崩壊事故に巻き込まれた男女2人のせつない恋愛ドラマです。賑わっているショッピングモールが営業中に突如壊れ、多くの人が犠牲になっていく様子は恐ろしくて、深く記憶に残る描写でした。
「ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です」でも、ある兄弟を引き裂く崩壊事故が起こりますが、セリフではっきりと「1995年6月29日に起こった三豊百貨店の崩壊事故に巻き込まれた」とあり、当時の実際のニュース映像も使われています。
華城連続殺人事件がモチーフとなった、ポン・ジュノ監督「殺人の追憶」
そう、百貨店の崩壊事故は韓国で実際にあった出来事なのです。その原因は経営者が予兆に気づきながらも見過ごしたことや手抜き工事にあったことは、報道チームが崩壊事故が起こった原因を究明するドラマ「アルゴン〜隠された真実〜」で描かれます。「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」ではイ・ソンギュが建築構造エンジニアを演じていますが、手抜き工事のビルオーナーに「おまえみたいなのがいるから三豊百貨店は崩壊したんだ!」というセリフも。
また、ドラマ「シグナル」では大橋が崩落してバスに乗っていた高校生が亡くなるシーンがありますが、これは994年10月21日に起こった聖水大橋の崩落事故をモチーフにしたもの。映画「はちどり」でも描かれている事故で、この事故もまた、予兆があったものの対処しなかったため起こった痛ましい事故でした。
このように実際に起こった事故を忘れることなく作品に刻み、そのことで引き裂かれてしまった人の悲しみはもちろん、事故の原因となった社会的要因もきっちりと描き出すというのは韓国ドラマや映画でよく見られるあるあるです。人々の生活と政治は繋がっているのだという意識が根底にあることが伝わってきます。
ソン・ガンホが、映画を観ているかもしれない犯人をにらみつける
ドラマ「シグナル」で起こる連続殺人事件や、映画の最後にソン・ガンホがカメラをにらみつける演出のインパクトが大きかった映画「殺人の追憶」は、1986年から1991年にかけて10人もの女性が殺害された華城連続殺人事件をモチーフとしたもの。この事件の特徴である、被害者がストッキングで両手を縛られた状態で見つかったという共通点を描いたドラマや映画は他にも多くあります。この事件は長年未解決だったため、「殺人の追憶」ではソン・ガンホがどこかで映画を観ているかもしれない犯人をにらみつけるという演出にしたとポン・ジュノ監督は語っています。そのインパクトのおかげで、事件の風化を防ぎ、韓国のみならず、この作品を観た人すべてが、この事件のことを知ることになるのです。
この事件は2019年に驚きの展開を迎えます。突然、犯人が判明するのです。犯人は別の殺人事件で無期懲役となり収監されていた男で、最新技術でDNA鑑定をした結果、真実が明らかになりました。事件当時は世界的にDNA鑑定が始まったばかりで、韓国ではその設備がなかったことは「殺人の追憶」でも描かれています。犯人は刑務所でこの映画を観ていたことが分かっています。ソン・ガンホの目線に何を感じたんでしょうね。
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